おまけ
結婚式を挙げた日の夜、ランスと庭にあるテーブルお茶を飲みながら月を見上げていた。
疲れていたけれど、興奮していて中々眠れず、外の風にあたることにしたのだ。
「綺麗な月だな」
「うん。そういえば以前、ランスとこんな風に月を眺めながらお茶したことがあったね」
あの時は、薬草畑を食い荒らす犯人を捜すために、ランスが寝ずの番をしていたのだった。
ちょうど今日と同じような満月だった。
「あの時俺は、ニーナにプロポーズしようと思ったんだ」
「え、そうなの!?」
「ああ。もう絶対に後悔したくなかったからな」
「それって……」
なんのこと、と聞こうと思ったらランスの手が私の頬に添えられるたので、心臓がドキリと跳ねた。
顔が近づいてきたので、目を閉じる。
ランスの息遣いが感じられたと思ったら、次の瞬間には深く唇が合わさっていた。
ワンワン! ワン!
口づけを終えてランスと見つめあっていたら、どこからか犬の鳴き声が聞こえてきた。
「わっ。ビックリした」
見れば足元に、綺麗な白銀の毛並みの犬がいた。
頭の先から尻尾の先まで合わせても1メートルないくらいの、小柄な犬だ。
「可愛い」
思わず手を伸ばしそうになると、ランスが間に入って止めた。
「ちょっと待て。こいつおかしいぞ」
「そうかな」
言われて気配を探ってみたら、確かになにかがおかしい。
最初は犬の気配だと思ったけど、気を付けてみたらなんだか神聖な気を放っているような……。
「なんだ、完全に犬に化けたのだが。よく分かったな」
「犬が喋った!?」
変わった毛の色以外は完全に犬なのに、その犬が突然喋り出したので驚いてしまう。
「俺には魔法は効かないからな。こいつ本当は体長2メートルくらいあるぞ」
「2メートルって……」
「毛の色は白銀。本来の姿は狼……フェンリルか」
白銀で2メートルのフェンリルってそれは……。
「守護聖獣様!? どうなさったのですか」
思わぬ正体に動揺する。
「どうしたもこうしたもない。ニーナ、最近はなぜ薬草畑を作っていなかったのか」
「それは……契約の儀式のために大神殿にいましたので」
「まだ体が本調子ではないのだ。早く作るがいい」
「は、はい。分かりました」
「完全に身体が癒えるまで、私はここに滞在することにするからな。この姿なら問題なかろう。新たな主も、この近くに住んでいるようだし」
「え……と……」
「断る。新婚なので、遠慮してくれ」
迷っていたら、ランスがきっぱりと断ってしまう。
「薬草だけ食べにこい」
「ふん。なんとでも言うが良い。この国で私がいてはいけない場所などないのだ」
この二人? なんだかあまり相性がよくなさそうだ。
「でもちょっと、白い犬を飼うの、夢だったかも」
ランスと二人で暮らす素敵な家に、白い可愛い犬。ちょっといいかもしれない。
「……この私を犬扱いだと?」
「いや、あなたが犬に化けているんでしょ」
そんな二人の掛け合いを聞いていたら、これから楽しい新生活が始まりそうな予感がした。




