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追放聖女ニーナの下町暮らし【旧題:私は陥れられていたようです】  作者: kae
5章 シャドウリンクス

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3話 信じられない光景

 グウェンさんたちだけが先に進み、私とルーシーさんで分かれ道のところで待っていることになった。

 濡れていない岩を選んで座り、ルーシーさんと待っていること20分くらい経った頃だろうか。

 入り口側の道から、何やら複数人の足音のようなものが聞こえてきた。

「これ何の音?」

 暗闇に二人きりという状況が不安だからか、ルーシーさんが立ち上がって私のほうへと身を寄せてきた。

「……カルジス侯爵と兵士さんたちでしょうか」

「そんなバカな。この瘴気の中を、ガレンの浄化能力だけでここまで連れてこられるはずがない!」

 私もそう思うけれど、実際にすぐそこまで足音が聞こえてきている。

 立ち上がって、その姿が見えるのを待った。


「ようお二人さん。俺たちを見捨てていったくせに、お前たちも置いていかれたのか?」

「ガレン……」

 それしかないと思ったものの、実際にガレンさんとカルジス侯爵、そして10人以上の兵士たちを目の当たりにして、ルーシーが絶句した。

「どうして」

「ふん、俺の実力ならこのくらいできるさ」

「さすがガレン様だ。お一人で我々を守ってくださる人格者でもあられる。次の祭祀長には是非推薦させていただきたい。……それに引き換え、能力だけあっても他者を見捨てるような聖者はいただけませんな」

 カルジス侯爵がなにかを言っているけれど、私はあることに驚いて、それを聞いていなかった。

 ――私の聖なる力を感じる。まさか私のポーションを使っている?


 ガレンさんたちが歩いてきた道から、自分の魔力と同じ波動を感じる。

 そしてまさに目の前で、ガレンさんが見覚えのある瓶を傾け、ポーションを1滴落として見せた。

 そのポーションは1滴で、直径2メートルくらいの範囲を浄化した。


 ――私が最後のポーションをカエルの王子に納品したのが1か月ほど前。このポーションは、少なくとも作ってから1か月は経ったものだわ。

 王都で作っている最近のポーションは、実験の意味もあって火の魔石や水の魔石を使用した特別製だ。

 濃縮した能力は効果も高いし、普通のポーションよりも使用期限も長いだろう。

 でもそれも、どれくらい効果が持つかは未知数だ。

 もしもこれまで浄化してきた道が、効果がきれて瘴気に覆われたら、ここまできたこの10人以上の兵士たちはどうなるのだろうか。

 私とルーシーさんとガレンさんで、入口まで連れていけるか? 


 ――無理だ。多分。


 謙遜するつもりはない。自分の能力が、他の聖者に比べて高いのは、王都に来てから十分に分かった。

 その上で冷静に分析する。

 この人数を入口までは連れていけない。


「ガレンさん、引き返してください。今すぐ皆さんを入口まで連れていきましょう」

 ポーションの効果が続いているうちに。一刻でも早く。

「なにを言っている? 俺が責任を持つと言っているだろう」

「無理です! そのポーションは、そんなに効果が続かない!!」

「なんだと?」

 それまで私のことなんて見ていなかったガレンさんが、私の言葉にハッとしたように振り向いた。

「お前なぜそんなことを知っている? ……なるほど、そうか。お前も使っているのか! どおりでな!!」

「なんのことか分かりませんが、今すぐ……」


「おいルーシー。グウェン王子たちはどこへいった?」

 もう私の言葉は、完全にガレンさんに届いていなかった。

「ケンリックとランスロート様を連れて、まずは左側の道へ様子を見に行きました」

「ああ、こっちの道は、この先何キロも続いている。帰ってくるのは時間がかかりそうですな」

 カルジス侯爵は、さすがにこの洞窟について詳しいようだった。

「カルジス侯爵。右側の道は?」

「こちらはほんの数百メートルしかありません」

「なるほど。ではこちらのほうの道は、我々で様子を見に行きましょうか」

「ダメです! 止めてくださいガレンさん‼」


 ほとんど叫ぶようにして、必死になって引き留めようとするけれど、ガレンさんとカルジス侯爵はもう歩き始めていた。

 どうしてこんなことになってしまうのか、理解できなかった。

「どうしよう……」

 兵士たちも、ガレンさんとカルジス侯爵の後を追って続々と歩いていく。

 浄化した範囲だけで進むためにか、2人ずつ並んで歩いていくみたいだ。

 この人たちに付いていく?

 でも私が付いていったところで、ガレンさんたちが自分の足で引き返さない限り、なにもできない。

 自分たちだけでもここで待っていて、安全を確保するべきかもしれない。

「……!?」

 だけど、通り過ぎていく兵士たちの顔が恐怖に引きつっているのが、見えてしまった。

 ――彼らは危険だと、分かっているんだ。だったらついていかなければいいのに。


 ついに全員が、右側の道へと進んでいってしまう。

「どうする? ニーナ」

 隣で同じように呆然と見送っていたルーシーさんが、恐る恐る聞いてきた。

「……行くわ」

 どうしても、見捨てることができなかった。



 ガレンさんたちを追いかけてしばらくして、ルーシーさんも小走りで追いかけてきた。

「ルーシーさんはあそこで待っていてください。危険ですから」

 そう言ったけど、ルーシーさんは私の腕をガシッと掴んだ。

「一人で待っているほうが怖いわ」

 腕に触れた手は、震えていた。

 ルーシーさんと腕を組むようにしてくっつきながら、ガレンさんたちの後ろをついていく。

 なにも起きないことをただ願いながら。


 だけどこんな状況で、無事に済むことがないことは分かっていた。


 ギャーーー!!

 

 洞窟内に、カルジス侯爵の悲鳴が鳴り響いた。



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― 新着の感想 ―
聖者ではなく特級愚者が居たよ、ポーション切れたら命の危機なのにな。。 なんとか帰れても「魔物に襲われたのはポーションの制作者のせい」とか言いそうだな。 誰も相手にしないだろうけど。
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