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追放聖女ニーナの下町暮らし【旧題:私は陥れられていたようです】  作者: kae
4章 春祭り

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2話 剣技大会

 剣技大会の会場は、下町からは少し離れた王都の中心にあった。

 辻馬車で近くまでいくだけで、すさまじい熱気に圧倒されてしまう。

 会場に入ると立見席はギュウギュウ詰めで、怒号が飛び交っている。

 主催者がランスにくれていた、有料席のチケットがあったので助かった。


「さあさあ、お待ちかね。午前中に行われた予選を通過した8名の試合がついに始まります!」


 うおー!! 待ちくたびれたぞ!


 司会の人の言葉に、試合会場の熱気がさらに上がっていく。


「ここ、失礼します」

「はい、どうぞ」

 急いでチケットに記載されていた席に座る。


「本日の試合の注目選手は、なんといってもランスロート・ドレスディア伯爵令息! 正真正銘、本物の勇者の末裔だ!」


 うそつけー! なんでそんな人がこんな大会に出るんだよ!

 いや本当かも。なんでも後学のためにって下町に滞在中らしいぞ。

 はあ!? マジかよ。

 キャー! 格好いい! 勇者さまー!


 観客たちから、意外と詳しい噂話が聞こえてくる。


「同じく注目の選手は、昨年まで3年連続優勝者! 冒険者のオルド・ハーマンドだ! 4連続優勝なるか!?」

 司会の紹介に軽く手を振って答えたのは、亜麻色の髪の、服の上からでもすごいのが分かる筋肉の持ち主だ。

 元騎士やお忍び貴族まで参加するという大会で、3年連続優勝というのはすごいことなのではないだろうか。

 冒険者というだけあって、装飾などない一切ない鞘、一目で分かる使い込まれた武骨で実用的な剣を持っている。

 ランスが負けることはないと思うけど、手ごわそうな相手だ。

 トーナメント表の端と端に名前が書いてあるので、当たるとしたら決勝でだ。


 試合が始まる。

 どうやら午前中に別の場所で一気に予選が行われていたらしくて、この会場では1試合ずつやっていくらしい。

 最初の試合では昨年度優勝者のオルドさんが、昔お城で衛兵をやっていたという中年男性に勝利した。

 元衛兵という人も中々の剣の腕前で、長時間打ち合って粘っていた。

 見ごたえのある試合だったけれど、「あれはオルドがうまいこと手を抜いて、見せ場を作ってやってるな」などと、観客席から解説が聞こえてくる。

 な、なるほど。


 その次の試合は、冒険者や用心棒で稼いでいるという青年と、若くてサラサラの髪の、華美な装飾の剣の青年。

 華美な剣の青年は、基本通りお手本のような剣技だった。


 あいつ貴族のお忍びじゃないか?

 随分若そうだけど、腕試しにきたお坊ちゃんか。頑張れよー。


 ……どうやら貴族のお忍び、大歓迎のようだ。


 最初はお忍び貴族の青年のほうが明らかに優勢だったけど、決め手に欠けているうちに息が荒くなっていく。もしかしたら、実践はあまり経験がないのかもしれない。

 勝負は長引いてもつれたけれど、最後には剣を取り落としてしまい、結局は用心棒の青年が勝った。冒険者もやっているというだけあって、息一つ乱れていない。

「あっ、惜しい!」

 どちらかを応援していたわけじゃないけれど、いつの間にか熱中していたみたいで、お忍びの青年が剣を取り落とした時、ついつい声が漏れてしまった。

 

 第三試合が始まる。

「あら?」

 選手の一人が、一瞬グウェンさんのように見えた。

 その人は仮面を被っているけれど、背格好や雰囲気が、そっくりだったのだ。

 だけどその人は黒髪だし、姿を変える魔法を使っている気配もないので、違う人だろう。

 彼の名前は『ブラック』――偽名だそうだ。

 ちなみに偽名登録してもいいらしくて、結構いい加減な名前で出ている人もいるらしい。

 『ブラック』はとっても身軽で、意味もなく宙返りを披露するなどアクロバティックな動きで会場を沸かせた。

 軽業師か? なんて声も聞こえたけれど、剣技はものすごく強くて、散々相手を翻弄した挙句、最後はまともに打ち合ってあっさりと勝ってしまった。

 アクロバットで分かりにくいけど、剣技自体は、正式に習った騎士の剣のように美しいものだった。


 そして第四試合、ついにランスの登場だ。

「はじめ!」

 カッキーーーン!

「勝負あり! 勝者ランスロート」


 はじめの合図と同時に、相手の剣が飛んで勝負がついてしまった。

 なにがどうなったのか、イマイチよく分からない早業だ。

 他の人たちもよく見えなかったみたいで、試合会場に一瞬静寂が広がる。

 しかし次の瞬間にはものすごい歓声が沸き起こっていた。


 うおーーーーー! すげーーー見えなかった!

 あいつ本物だぞ!! 本物の勇者だ!!


 その声に、主催者の人が満足げに頷いているのが遠くに見えた。

 対戦相手の人は、ランスに握手をしてもらって、嬉しそうにしていた。


 次の試合は昨年優勝者のオルドと、用心棒の青年。

 この二人はお互いにサービス精神があるみたいで、最初のほうは派手な打ち合いをして観客を沸かせていた。

 だけど時間が経つにつれ、徐々に動きが止まって緊迫感が流れる場面が増えていく。

 勝負は一瞬の隙をついて、オルドが勝った。


 


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