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追放聖女ニーナの下町暮らし【旧題:私は陥れられていたようです】  作者: kae
2章 大神殿からの使者

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5話 調査

「オーウェン王子。こちらが調査結果です」

「遅い! この程度の調査に、一体どれほど待たせるんだ」

「……申し訳ございません」


 使えない部下が差し出す書類を受け取る。

 数日前に依頼した、ニーナ・アンワースという聖女の調査報告書だ。

 俺が管理している大神殿で、今度国と守護聖獣の祈りの儀式を行う聖者を新たに選定を行うのだという。

 祭祀長から次はニーナ・アンワースとかいうアンワース家の聖女を選ぶと聞かされて、慌てて止めさせた。

 夢のお告げがあったとかなんとか言っていたが、そのような不確かなものに国の命運はとても任せられない。

聖者が予知夢や夢のお告げを受けだなんて、疑わしいものだ。聖者なら誰もができるものでもないというし、きちんとした呪文もないのだそうだ。

危なかった。俺が神殿長でなければ、大変なことになっていたところだ。

今までの神殿長をやってきた王族は、特に何もせず名前だけの名誉職だったそうだが、俺はそうではない。

こうやって実際に働いて管理している。きっとそのうち誰もが、俺のすごさに気が付くはずだ。

 部下の持ってきた報告書も、こうやってしっかりと読んでいる。今までにこんな王族はいなかっただろう。


「なに……グウェンの友人だと?」

 部下の持ってきた調査報告書に、弟の名前を見つける。

 あまり交流もない、ろくに話したこともない、しかし心底気に食わない弟だ。

「はい。ニーナとグウェン王子は元筆頭魔術師のブレイズ様が営まれている魔導具店を通して出会われたようです。王宮の舞踏会にグウェン王子が招待したり、日頃より店を介して日常的に付き合いがあるようです」


 コルベ王国の四人いる王子のうち、第一王子は跡継ぎとして、最上級の教師と使用人を付けられて最高の教育を受けている。国王夫妻も期待を寄せ、協力して公務をしているらしい。第二王子は第一王子になにかあった時のため、同じく最高級の教育を受けている。第三王子の俺と、第四王子のグウェンは基本的に放置。

 ここまで王位が回ってくることはないと思っているのだろう。ではなぜ生んだのか疑問なのだが、もしかしたら、外交に仕える姫が欲しかったのかもしれない。

 そうだとしたら、俺は心底いらない余計な王子ということになる。

 俺は小さな頃から誰にも気に掛けられず、期待もされていないので、着る物すら普通の貴族にすら劣る、何年も前に上の兄たちが着た、流行遅れの物を着ていたほどだ。

 そのため他の貴族たちどころか、使用人にまで馬鹿にされる子供時代を過ごした。

 しかしそんな俺の唯一の心の支えは、俺よりも下の弟、グウェンがいることだった。


 そう、俺より下。

 俺が着た流行遅れの服を、更に2年後に着る弟。

 誰もが面倒くさがる俺の使用人という仕事も、第四王子のところへ飛ばされるよりはマシだと皆言っていた。

 俺よりも可哀そうで惨めな奴がいる。それが小さいころから俺の心の拠り所だった。


 それなのに、グウェンが10歳で魔力検査を受けてから、全てが変わってしまった。

 強い火の魔力があると判明したグウェンには、元火の筆頭魔術師であるブレイズが魔法の教育係に付けられた。

 それだけのはずだった。他の使用人も、与えられる物も、何もかも違わない。ただブレイズが師匠になったというだけ。

 グウェンもそれまで俺と同じように使用人たちに馬鹿にされていたくせに、そいつらを自分で解雇して、残った者たちと楽しそうに話すようになった。

 俺と同じように、社交界で貴族たちに除け者にされていたくせに、一人でも堂々と過ごすようになった。そうしたらいつのまにか、貴族の中で友人まで作っていた。

 見かけるたびに笑顔が増えていくグウェンのことが信じられなかった。


「第四王子は素晴らしい火の魔術の才能がおありだ」

「職務怠慢だった使用人たちを、ご自分で追い出されたそうですよ」

「それは素晴らしい。明るくて、決断力もあって、人望がある。将来が楽しみな王子ですね」

「追い出された使用人たちはどこへいったんですか?」

「ああ、あれだよ。ハズレの第三王子のところへ。本当に、兄弟だというのに、どうしてあそこまで差が……」



「うわ――――――――――――――――――――――!! ウルサイウルサイウルサイ! 黙れ黙れ黙れ――――――――!!!!」



 グウェンがやっているのを見て、使用人を追い出せることに気が付いた俺は、気に入らないことを言う使用人が、目の前からいなくなるまで、怒鳴り続けた。

 本当に、あっさりと気に食わない使用人たちは目の前から消えた。

 それからはしっかりと使用人たちを管理し、舐められないようにしかりつけ、命令に従わせている。

 なのに俺の周りには、相変わらず人が寄り付かない。

 あからさまに馬鹿にはされなくなったが、今度はビクビクしながら俺の顔色を伺うような奴しかいなくなった。


「くそっ! くそくそくそくっそ―――!!」

 報告書を握りつぶす。

 ニーナ・アンワースの調査報告書のはずが、こんなところで世界で一番憎らしい弟の生活を垣間見てしまった。

 信頼できる師匠と店を営み、貴族にも顧客があり、下町の者たちと交流しているだと?

 勇者の末裔ランスロートやアンワース家の聖女との友情関係……。

 どうしてあんな奴が。ただ魔力を持っているというだけで、何の努力もせずに。

 俺はこれだけ努力をし、国民のために働いているというのに。


「なるほどな」


 何十年も王室に仕える聖者様を差し置いて、急に夢のお告げだかなんだかで聖者を選ぶだなんて、おかしいと思った。

 現筆頭魔術師で王子でもあるグウェンと仲の良い、何の実績もない聖女を守護聖獣との契約者に選ぶだなんて裏で何かあるに決まっている。

 調査して正解だった。

 俺が神殿長で、残念だったなグウェン。そしてニーナ・アンワース。

 お前たちの企みを、俺が潰してやる。




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― 新着の感想 ―
神殿長貴族主義派筆頭の派内政治優先の人物だと思ったらコネでねじ込まれてやってきて仕事してる感出すために組織引っ掻き回してる感。王様脇甘すぎない?こんなのねじ込んだら教会との関係悪化するだろうに。他の候…
今の立場さえ努力で得たとも言い難いのに…… 報告書の確認を最後までしなかったのが後々響いてきそうだな。
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