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追放聖女ニーナの下町暮らし【旧題:私は陥れられていたようです】  作者: kae
2章 大神殿からの使者

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3話 お迎え

 選定を受けることを了承すると、ギャレット様が選定方法や予定を大雑把に説明してくれた。

選定というと、魔力判定日にやるように魔石に魔力を込めるのかと思ったけれど、それだけではなく、何日もかけて聖者としての仕事ぶりを評価するのだそうだ。

 神殿の聖者には、全国各地から治癒や回復、浄化や付与に関する色んな依頼がくる。

 地方の神殿では解決できなかったような大きな問題も、大神殿にやってくるらしい。

 その働きぶりを見て、何日かかけて選んでいくのだという。


「選定は私、祭祀長のギャレットと、風・火・水・土それぞれの筆頭魔術師様。そして神殿長様の六名の合議で行います」

「そうなんですね。思っていたよりも大規模な選定なようで驚きました」

 日数がかかるだけでなく、泊りがけで旅をして地方で仕事もするらしい。これは思っていた以上に大変そうだ。

 でも選定者が筆頭魔術師ということは、グウェンさんも選定人の一人ということだ。

 知っている人がいるのは心強い。


 ――あ、そういえば先日会いに来てくれたアイリーンも筆頭魔術師様なんだった。


「本音を申しますと、私は夢に出てきた聖獣様のご希望通り、儀式はニーナ殿にお願いしたいと思っております。しかし神殿長様が、その夢が本当に聖獣様のご意思とは限らないとおっしゃいまして。実力を測るような真似をして申し訳ございません」

「それはかまいません。実力が分からない者に任せるわけにはいかないでしょうから」


 神殿に仕える聖者と違って、私がどれくらいの実力か分からないのは当然のことだ。

 実を言うと私のほうも、神殿に勤める聖者たちがどのような実力があるのかをよく知らない。もしかしたら祈りの方法も、違うのかもしれない。

「こんなところでよろしいですかな。ケンリック、ガレン、ルーシー。ニーナを門までお送りしなさい」



 来るときはケンリックさんと二人だった回廊を、今度は三人に案内されて大神殿の門まで歩く。

 質問したいことが沢山あったけれど、スタスタと歩いていってしまうので、おいていかれないようについていくだけで精いっぱいだった。

「それでは三日後、よろしくお願いいたします」

 門に着いたら、ケンリックがそう言って、すぐに建物の中に戻ろうとする。

「あ! すみません。うかがいたいことがあるんですが。今度神殿に来るときに、なにか必要な持ち物ってありますか」

「っち。野良聖者が……」

「えっ」

 戻ってしまう前にと、必死に呼び止めたら、灰青色の髪の聖者、ガレンが吐き捨てるように呟いた。

 しかも私を一睨みした後、そのまま質問には答えずに帰っていってしまう。

 ガレンに続いて、ルーシーという聖女もだ。


 ノラ聖者? ノラって野良のことかしら。野良ネコとかの、あの……。


「聖衣などはこちらでご用意します」

「ああ、はい」

 唯一残ったケンリックだけが質問に答えてくれた。

「神殿での生活に必要な最低限の物は支給されますので、なにも持たずに入殿する者もおります。しかし大抵は本や筆記用具、裁縫道具といった身の回りの物は自分で持ち込みます。貴族出身の者は、寝具や化粧品、小さな家具などを持ち込むこともあります」

「家具……ですか」

「まあニーナ様は長くて数か月の滞在でしょうから、家具は必要ありませんね」

「はい」

「他にご質問は?」

 淡々と説明してくれるものの、ケンリックも友好的とは言い難い雰囲気だ。

 これからライバル関係になるのだから、仕方ないのかもしれないけれど。

「……ありません」

「はい。それではさようなら」


 できれば詳しく相談したかったけれど、とても聞ける雰囲気ではなかった。

「身の回りの品……寝具……。家具……はいらないのか」


 ――この準備を、三日後までにですって?


 ちょっと急すぎるのではないかしら。



◇◇◇



 治癒や祈願に来る人、観光客らしき人など、大勢の人が通行している大神殿の門をくぐる。

そして宿のほうへ歩き出そうとすると、すぐそこに意外な人物が立っていた。

「ランス! どうしてここに?」

「ニーナを待っていたに決まっているだろう。ベルさんに、ニーナが大神殿へ連れていかれたと聞いて驚いた」

 今日はランスは、王都にあるドレスディア伯爵のお屋敷で、訓練をしに行っていたはずだ。

 そのためか動きやすそうな茶色のベストに、丈夫な皮のパンツにマントを羽織るというシンプルな服装をしている。

 背が高いせいかとても目立っていて、何人かが足を止めてランスのほうをチラチラと見ていた。そのほとんどが若い女性だ。

「ごめんなさい、心配をかけてしまったわね。使者の方が急にいらしたから」

「ニーナのことだから、相手が聖者かどうか分かるんだろうが。今度から、できるだけ相談してから行ってほしい」

 そう言うと、ランスは「ん」と言いながら、私に手を差し出した。

 小さい頃から、ランスが手を繋ごうとする時の仕草だ。

 ランスがちょっと拗ねているのも相まって、可愛く見えて、胸の奥がキュッと何かに掴まれたようになってしまった。

「ランス。迎えにきてくれて、ありがとう」

「ああ」

 手を握り返して、一緒に宿まで歩き出す。

 今日神殿であったことを話しながら。


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― 新着の感想 ―
神殿長の横やりの入れ方が他の候補の選民思想ぷり見る限り一神官の予知夢に傾倒する懸念より所詮獣感による発言ぽく感じる
「聖者の選定自体私から望んだものではありませんので辞退します。」くらい言っても良さそうな対応だなあ。 気に入らなかったら無理する必要は無いんやで?
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