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あの人形は気になったがまずは武器を買わないと領主邸の警備の仕事ができない
「すいません」
「ん?」
「武器と防具が欲しいんですが」
「ふん。そっちの武器から選びな」
「そっち?」
「お前さんは素人だろ。なら数打ちで十分だ」
「はあ…」
確かに高級な物は必要ないが、態度が悪いな
「わかりました」
「ふん」
剣を見るがどれも変わらないな
「これは大剣てやつか?」
身長までは行かないが170cmはありそうな長さだ
「素人じゃ扱えんぞ。筋力も足りないだろ」
確かに普通には使えないが…
「振ってみたいんですけど」
「あ?」
「いいですか?」
「裏なら構わんが持てんだろ」
「大丈夫ですよ」
そう言って大剣を持ち上げる
「ほう…」
重量操作で軽くすれば余裕なのだ
裏庭に行くと試し斬り用の木で出来た人形が地面に刺してある
「そいつを斬ってみろ」
「はい」
大剣の重さを0にして素振りしてみる
「はあ?!」
腕を降るのと変わらないので軽々振り回しているハルトをみて驚いている
スキルを使った事で理解したが、自身が触れている物なら自身が軽く感じるだけで、物の重さは変えずに使えるようだ
すなわち
「はっ!」
ハルトは軽く振ったつもりでも、大剣の重さなら木の人形なら簡単に両断される
「おいおい!なんて腕力してやがる!いや、スキルか?」
「スキルですね」
「はあ…こりゃたまげた。ちょっと来い」
「?」
武器屋の親父に連れられて店に戻ると真っ黒な大剣を見せられる
「こいつは遊びで作ったやつだ…クズ石てやつなんだが、とんでもなく硬いんだがやたらと重くてな」
「はあ…」
「大人3人がかりでようやく持ち上がるんだ。こいつを使ってみろ」
よくわからないが、とりあえず持ち上げてみる
「持てるのか…」
「大丈夫ですね」
「そいつは大剣の形はしてるが、硬すぎて研ぐ事が出来なくてな。切るより叩きつける感じになるな」
「試しても?」
「ああ」
裏庭に戻り人形を斬りつける
「はっ!」
木の人形は両断されたが、やはり切り口は荒い
「やはりか」
「でも、鎧を着た相手でも通用しそうですよね」
「鎧の意味が無いだろうな」
「凶悪ですね」
「使える奴なんて想定してなかったからな…まあいい、持っていけ」
「いいんですか?」
「ああ、言っとくが俺しか作れん特別性だぞ」
「スキルですか?」
「形を変えれるスキルだ。まあ、完全にはならんのだがな」
「だから刃がついて無いんですね」
「そうだ」
「ちなみに鎧は作れますか?」
「ほう」
親父がニヤリと笑う
「お前は傭兵か?」
「はい」
「面白い。作ってやろう」
「お願いします」
「だが、言ったようにクズ石は重くて使い道がないからな。需要が無いから集めるにも手間が掛かる。なにせ馬車にもたいして乗らんからな」
「あ〜。自分で集めた方が早そうですね」
「お前さんなら大量に運べるか?」
「どうでしょう。多分運べると思います」
「なら持ってきたら作ってやる。ただ、魔力をかなり消費するから少しづつしか作れんぞ」
「わかりました」
クズ石の大剣を手に入れたので防具も見繕ってもらう
「どうする?フルプレートにするか?重さは無くなるんだろ?」
「値段によりますね」
「なら金貨5枚でいいぞ」
「え?金貨22枚って書いてますが」
「その分活躍して宣伝してくれたらいい」
「わかりました。頑張ります」
「よし、俺はガンザだ」
「ハルトです」
金貨5枚を払って店を出る
「さて、人形を買うか」
安く済んだので金貨3枚なら払える
それに俺の予想なら自動化スキルで動かせると読んでいる
「いらっしゃい」
「人形が欲しいだが」
「お目が高い!こちらは…」
「さっき説明は聞いた」
「え?ああ!さっきの人か」
兜を外して顔を見せる
「金貨3枚だ」
「確かに。宿に運びますか?」
「ちょっとスキルを試すから離れてくれ」
「はあ、わかりました」
「動け」
自動化のスキルを使うと人形が動き出し片膝を着いて傅く
「おお!スキルですか?!」
「ああ、使えると思ったが…歩け…止まれ」
「滑らかに動きますね!これは凄い!」
「これは当たりだな」
魔力はそれなりに消費しているようだが、魔力回復(極)の効果でまったく負担が無い
「お客さん」
「ん?」
「王都なら数体は流れて来ますよ」
「そんなにあるのか?」
「たまに見つかるんですが、売れ残るので」
「なるほど」
「集めますか?」
「今は金が無いからな…」
「必要なら言って下さい」
「その時は頼む」
「安く買って来ますよ」
店を出て道を歩くがやはり人形は目立つようだ
「なんだあれ?」
「人形?」
「なんで歩いてるんだ?」
「スキルかな?」
スキルがある世界なので騒ぎにはならないのが幸いだ