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今後主人公はハルトで統一します
「こっちだ」
案内された部屋には十代後半と思われる女の子がベッドの上に横たわっていた
「はぁはぁ」
魔力欠乏症のためか、呼吸が異常に早い
「サラ…ハルト君頼む」
「どうすれば?」
「心臓の位置に手を置いて魔力を流し込んでくれ。わかっているとは思うが、変なことはしないように」
部屋には母親と思われる女性とメイド2人がいるが、俺が変なことをしないように鋭い視線で見張っているようだ
「では、失礼します」
この世界に来てから、体内に魔力があるのは感じていた。女性の胸に手をあて、手のひらから魔力を流し込む
「はぁはぁ」
「ぐっ、かなりの魔力が吸われますね」
「頼むぞ、ハルトくん」
皆が見守る中、女性へと魔力を流し込んでいく
八割ほど魔力が吸われたところで女性の顔色が良くなり、穏やかな寝息へと変わった
「魔力が吸われなくなったので、もう大丈夫だと思います」
「顔色が良くなっているな」
「ハルトさんありがとうございます」
母親と思われる女性から改めて頭を下げられる
「いえ、お役に立てたのなら幸いです。少し疲れたので、先程の部屋で休ませてもらってもよろしいですか?」
「ああ、案内して差し上げろ」
「かしこまりました」
「では、失礼します」
メイドに案内されて応接室に移動する
「お嬢様を助けていただき、ありがとうございます」
「いえ」
「魔力を消費してお辛いようでしたら、お部屋に案内いたしますが?」
「問題ありません」
「分かりました。何かあればなんなりとお申し付けください」
「ありがとうございます」
高級品と思われるお茶を堪能しながら待っていると、領主と夫人がやってきた
「ハルト君ありがとう」
「サラを助けて頂きありがとうございます」
「身体は辛くないかね?」
「問題ありません。魔力の回復は早いので」
「自己紹介がまだだったね。この街の領主をしているクラウス・シュタウフェンベルクだ。クラウスと呼んでくれ」
「妻のテレサです」
「ハルトです」
「ハルト君。報酬だが金貨10枚を用意した」
「そんなによろしいんですか?」
「もちろんだ」
「遠慮せずに受けとってください」
「ありがとうございます」
「それから、入街税は必要ないからね」
「よろしいんですか?」
「もちろんさ。それでこの街で仕事を探しているんだったね」
「はい、身分証も必要なので、どこかのギルドに登録しようと思っています」
「そうか…この街は商業ギルドが一番力を持っているけど、商売には興味があるかね?」
「いえ、スキルも中途半端ですから」
「聞いても?」
「はい、魔力回復、重量操作、自動化ですね」
「そ、それはまた…」
この世界ではスキルで職業が決まると言っていい
「重量操作とはどんなスキルですか?」
「えっと、重量を0〜100%に自由に変更出来ます。魔力は消費しますが」
「自動化は?」
「魔力で物を動かせるらしいのですが、使ったことがないので正確にはわかりません」
「それだと冒険者ギルドは厳しいか」
「あなた、傭兵ギルドはどうですか?警備のお仕事をハルトさんにお願いしては?」
「それはいいな」
「傭兵ギルド?冒険者ギルドと違うんですか?」
「うむ。冒険者はモンスターを主に狩る仕事だけど、傭兵は護衛や街の警備なんかもやってるね」
「はあ…」
「元々は戦乱の時代に戦争に参加する冒険者達が増えたから傭兵ギルドが出来たんだけど、今はモンスター討伐やダンジョン探索は冒険者が、護衛や警備は傭兵が担当しているね」
「そうなんですね」
「まあ、上位の者になるとどちらも出来るから曖昧になるんだけどね」
「説明ありがとうございます」
「じゃあ、傭兵ギルドに紹介状を書くから持っていくといいよ」
「よろしいんですか?」
「構わないよ。今から行くと遅くなるから明日に行くといい」
「ありがとうございます」
クラウス様に紹介状を書いて貰い宿屋を探すため街に向かう
「ふ〜。お偉いさんと話すのは疲れるな」
独り言をいいながら、クラウスから紹介された銀の鷲と書かれた宿屋に着いた
「すいません」
「はーい、お泊まりですか?」
「はい、とりあえず10日お願いしたいんですけど」
「えっと、お食事は付けますか?朝と夜がありますけど」
「お願いします」
「でしたら。10日で銀貨8枚でいいですよ。お湯が必要なら桶で銅貨2枚なので必要なら言って下さい」
「わかりました。お湯もお願いします」
「はい、では212号室ですね。鍵は出かける時は預かりますので」
「わかりました」
「夕食はもうすぐ出来ますから食堂まで来てください」
「じゃあ、部屋で少し休みますね」