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〜ミツカゲ〜
「おい!何時になったらアイツらを殺せるんだ!」
「坊っちゃま、闇ギルドからは不可能だと言われています」
「あ?暗殺者がいくらでもいるだろうが」
「屋敷の警備が厳重すぎて侵入出来ないようです」
「クソが!」
「…」
「手練の暗殺者を用意しろ、シュタウフェンベルク家に行くぞ」
「なにを…」
「婚約者だからな、会いに行っても問題無いだろ」
ニタ〜と嫌らしい笑みを浮かべるミツカゲ
「まさか、直接セラ様を…」
「さっさとしろ!」
「…かしこまりました」
〜ハルト〜
「くそ坊主が来るですと?」
「わたくしに会いに来るようです」
「ぬけぬけとよくも」
「アルビンとハルトさんには護衛をお願いしたいのですが」
「セラ様は儂が御守りします」
「庭で会うのが良いでしょう」
「庭なら護衛もし易いですな」
「ゴーレムも庭に配置しましょう」
「ゴーレムをですか?」
「はい」
ニヤリと笑うハルトに首を傾げる2人だった
「これはミツカゲ様ようこそお越しくださいました」
「さっさとセラ嬢の元に案内しろ」
「かしこまりました」
ミツカゲを案内するメイドだったが応接室では無く屋敷の外に案内される
「何故外なんだ」
「せっかくなので外でお茶を楽しみながらお話をしたいとセラ様が」
「ふん、良いだろう」
庭に向かうとミツカゲと暗殺者は唖然とする
「ようこそミツカゲ様」
「あ、ああ…」
ハルトの召喚したゴーレムが完全武装でずらりと並んでおり、まるで謁見の間に居るような錯覚に陥る
セラが座る椅子の左右にはハルトとアルビンが控え、ミツカゲ達の動きを観察している
「こ、これは」
「失礼ミツカゲ殿、セラ様はここ最近何度か襲撃にあっておりまして、念の為厳戒態勢を敷かせて頂いております」
「そ、そうか」
自分が襲わせているため文句を言う訳にはいかない、更に余計な事をすれば斬り捨てられる雰囲気が伝わり背中にびっしりと汗が流れる
ミツカゲは悪事を繰り返していたが、所詮配下や闇ギルドに依頼していただけなのでこれ程濃密な殺気の中では萎縮してしまっている
暗殺者達もそれなりの手練ではあるが、ハルトとアルビンに睨まれてしまえば蛇睨まれたカエルである
「さあ、こちらにどうぞミツカゲ様」
「は、はい」
「それで今日はどうされたのですか?」
「セラ様が王都に来られたと聞きましたのでご挨拶にと」
「まあ、ありがとうございます。わたくしも御挨拶に参りたかったのですが…」
「い、いえ、お気になさらず」
たわいの無い話しをしながらもミツカゲは強烈なプレッシャーを感じていた
「そういえば普段の護衛はどうされたのだミツカゲ殿?」
「あ、いや」
「ふむ、随分と手練のようですが…」
「う、うむ、新しく雇った者なのだ」
「そうですか…足運びが特殊ですな、傭兵や冒険者では無いように見受けられるが」
「「?!」」
「そうなのですかアルビン?」
「はい、セラ様。普通の傭兵は足音を消しながら歩いたりはしませんので」
アルビンに指摘されたことでミツカゲは冷静さを失っていた
「う、うむ。セラ様が王都に来る途中に襲われたと聞きましたので手練を…」
「ミツカゲ様?!」
「ほう…何故セラ様が王都に来る途中で襲われたと知っておられるのですかな?」
「へ?」
「襲われた事は知られていないはずですが?直接屋敷に来ましたからな。他には伝えていないので知っているとすれば…」
「ぐっ、言い間違えただけだ」
「そうですか」
「お、おっと、この後用事がありますので失礼させていただきます」
「あら、残念ですわ」
「で、でわ、パーティでお会いしましょうセラ様」
足早に帰っていくミツカゲ
「ぷっ」
「「あーっはっは!」」
「いや、傑作でしたな!」
「こちらが気づいていることに焦っていましたね」
「所詮は小物ですからな。儂らに殺気を当てられて萎縮しておりましたよ」
ハルト達がミツカゲの話で盛り上がっているころ、屋敷に着いたミツカゲは焦っていた
「くそ!くそ!バレているじゃないか!」
「…」
「なんでバレているんだ!」
「坊ちゃん以外には襲撃する理由がないからですよ」
「なんだと?」
「王女殿下にご執心なのは、貴族の間では有名ですからな。セラ様を邪魔に思って襲撃したと思われているのでしょう」
「ちっ、暗殺も出来ないし…」
「た、大変です!」
「なんだ?」
「騎士が…」
「退け」
メイドが駆け込んで来たと思ったら騎士が複数人現れた
「ミツカゲ・ヘルパーだな。貴様を連行する」
「あ?なんだ貴様らは」
「問答は無用」
「おい!やめろ!」
「抵抗すれば切り捨てる許可も得ている。大人しくついてこい」
「ふざけるな!俺は…ぐはっ!や、やめ…」
騎士に殴られて吹き飛ばされた後に執拗に蹴りを食らわされる
「なにするんだ!」
「貴様が俺の妹を攫ったのはわかっている。今までは手を出せなかったが、犯罪者となった貴様に遠慮する必要などない」
「ぐふっ」
「さあ、もっと抵抗しろ、そうすれば合法的に貴様を痛めつけられる」
「ふざ…ふざけるな!」
「何をやっている!」
「…ヘルパー伯爵閣下ですな?貴方にも出頭命令が出されています。王宮までお越しください」
「出頭命令だと?何故だ」
「ミツカゲ・ヘルパーの数々の悪事が証拠付きで告発されたのですよ」
「告発…」
「貴方の関与も疑われています。王宮で取り調べがありますので出頭して下さい」
「ミツカゲ…貴様何をやった!」
「ち、父上、誤解なのです!」
「誤解で伯爵家の屋敷に騎士が踏み込む訳が無いだろ!普段から素行が悪いとは思っていたがまさか犯罪にまで手を染めていたとは…」
「ち、父上」
「さっさとミツカゲを連行してくれ。私は王宮に出頭する」
「わかりました。おい、連れて行くぞ」
「はっ」
「ち、父上!お助けを!」
「……」
この2ヶ月後、ミツカゲは処刑され。ヘルパー伯爵家は爵位の剥奪に財産没収、ミツカゲに協力した家臣は奴隷堕ちとなった
被害者は庶民はもちろん、準貴族の子女も多数誘拐されており、屋敷の地下には違法奴隷とされた女性が数人おり保護された
調べていくうちに貴族派との違法奴隷のやり取りが発覚し、貴族派の男爵や子爵7家が新たに爵位を剥奪されるという大きな事件となった
一度に多数の貴族が爵位を剥奪されたため、新たに功績のある準貴族を陞爵させて男爵を増やした事で王族派の勢力拡大に貢献したと、シュタウフェンベルク家、アルビン、ハルトは国王から呼び出しを受ける事になった
貴族の序列
国王
王家
公爵
上級貴族
辺境伯
侯爵=初代子爵
伯爵=初代男爵
下級貴族
子爵=初代騎士爵
男爵=初代士爵
準貴族
騎士爵
士爵
自身で功績を上げて陞爵した者は受け継いだ者より上とされている
ただし、貴族派は貴族絶対主義のため平民からの成り上がりは認めていない。自分達の先祖が平民だった事を忘れて…
男爵以上は国王の任命、承認の必要がある
準貴族は上級貴族なら自由に任命出来る、相応の金銭報酬、又は土地を与えねばならいが優秀な者を囲い込む為にかなりの人数がいる
呼び方は上級貴族は同列なら卿、下位の者なら閣下
下級貴族、準貴族は卿
平民は様で呼ぶのが一派的