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「なるほどのぅ。幼子を助けるために自分が犠牲になり、目が覚めると此処にいたと……」
目の前の幼女はやっぱりアマテラス様らしい。何も無い空間から炬燵を取り出し、座るように促してきた。真夏なのに、何故炬燵……。
立ったまま話すのもアレなので、炬燵に入る。
アレ? 思ったよりも快適だコレ。
そして、なぜ俺が此処に居るのか、起きた出来事を一通り説明した。
「それで自分自身が死ぬとは……。お主、よっぽどのお人好しか馬鹿かのどちらかじゃの」
呆れたように言い放つアマテラス様。
「うぐっ」
「幼子を助けようとする姿は素晴らしい。だが、それで自分自身が犠牲になってどうする? 幼子が助かったすらも分からぬのだぞ? もしかしたら、その幼子も死んでおるかもしれぬ」
「ぐっ……」
「仮に助かっておったとしても、幼子の代わりに死んだ者がおる。その事実が、幼子の心に傷を作るかもしれぬのだぞ?」
「はい……、おっしゃる通りです」
仕方ないだろ! 体が勝手に動いたんだよ! 俺だって死ぬ気はなかった。
「でも、私は好ましく感じますよ。アマテラス様」
「ガブリエル様……」
アマテラス様に言い負かされ、気分が落ち込んでいると、もう一人いた女性がそんなことを言ってくれた。
なんと、この女性は神様ではなく『天使』。それも、『熾天使』と天使の中では最高位に位置する方だ。
「それは儂も同じじゃ」
「アマテラス様……」
「じゃがしかし、困ったのう……」
「困ったですか?」
説教は終わったのか、アマテラス様は、炬燵の上に置いてあるミカンを剥き、一房口に入れながら喋り出す。
「地球はちと特別での。本来、地球で死んだ魂は、そのまま輪廻の輪に戻り生まれ変わる。天国や地獄なんてものは存在せん。勿論、異世界転生なんてのは、地球で生まれた者にはない」
「でも、俺はここにいますよ?」
「うむ、それが問題じゃ。何故か、神でもないお主が、この『神域』におる。『神域』とは文字通り『神の領域』じゃ。神の許可無く此処には来れぬし、神性を持たない者はその魂を消耗する。お主、このままでは魂ごと消滅するぞ?」
いきなりの爆弾発言に言葉を失う。
「地球に帰すことは出来ないんですか? 」
「無理じゃ。そもそも、地球と神域は繋がっておらぬ。来ることは勿論、行くことすら叶わぬ。うむ、やっぱり炬燵にはミカンじゃの」
幸せそうな顔でミカンを食べ続けるアマテラス様。
俺は、ガブリエル様からミカンを勧められるが、手が伸びずにいた。この先、俺は消えるのを待つしかないのか?
「絶望した顔しおって……」
「仕方ないかと。私でも、消えるしかないと伝えられたら同じ顔すると思います」
「仕方いのう……。この先、お主が取れる手段は2つじゃ」
そう言って、アマテラス様は指を2本立てる。
「一つ、消滅まで神域でこのまま過ごす。消滅まで何日掛かるか分からぬ。もしかしたら、何年、何十年、何百年掛かるかもしれぬ。その場合は、地球に居たときと同じとは行かぬが、不便なく過ごせるよう手配しよう」
指を1本折り畳むアマテラス様。
「そして、もう一つ。地球ではない別の世界へ行き、そこで天寿を全うする。この2つじゃな」




