プロローグ
拝啓
お父様、お母様、元気でいますか? 地球を離れて早一日、私は元気です。元気過ぎなのか、空を飛ぶトカゲから追いかけられ、絶賛鬼ごっこ中です。捕まったら死という、デスゲーム中です。もう地球に帰りたい今日この頃です。
『ガアアア!』
「だあああ!! ふっざけんな! 初っ端からドラゴンとか無理ゲーだろコレ!!」
「正確にはワイバーンよ! コイツがドラゴンなら、ブレス吐かれて、私達は既に死んでるわよ!」
隣で一緒に逃げてる青髪の女性は、神様がお供にと付けてくれた天使です。とてもとても強い、『熾天使』様なのですが、何故か、私と一緒に逃げています。って、この口調めんどくさいな!!
「リエ、お前熾天使の一人なんだろ!? 何とかしてくれよ!!」
「できるならとっくにしてるわよ!! 熾天使の力は強大で制限されてるから、今は貴方より少し上の能力しかないわよ!」
成る程、だから背中にあった6枚の翼がなくなっていたのか……。しかも、今の俺より少ししか強くないと……。
「おまっ! それじゃ役立たずじゃねーか! 何の為にお供に付けられてんだよ!!」
「そんなの私が聞きたいわよ! あんのロリババア……、こんな危険地帯に飛ばすなら、せめて『天使』までの制限にしときなさいよ!!」
どうやら、人間と天使では最初から強さが違うらしい。リエ曰く、天使の力があれば、倒せずとも追い払うぐらいまでの力があると……。チートですね、はい。
「武器も防具もなく、俺の能力すら不明。しかも、転移先は森深くにあったボロボロな神殿。約一日かけて森を出たと思った矢先にコレとか……。天寿を全うさせる気ないだろ!!」
「とにかく、森に戻るわよ! あそこなら身を隠せるわ!!」
『グギャアアアア!!!』
「ヒィ! 掠った! 今、髪に何か掠った!!」
ワイバーンが叫んだ直後、髪の毛を何かが掠っていくのを感じた。恐らく、尻尾だと思う。後ろを見てる暇なんて無かったから確証は持てないが、ワイバーンの尻尾には毒があるのは、ゲームや小説では定番だ。きっと、毒で弱らせた後食う気なんだ! 俺を食っても美味しく無いですよ!! 隣の方が美味しいですよ!
「貴方、今変なこと考えたでしょ? 置いてくわよ」
「ゴメンナサイ! 置いてかないでくださいいい」
口に出して無いはずなのに、何故バレた……。
この世界に来たばかりで、初期値の能力しかない俺が生きてるのはリエのお陰だ。今でも隙をみては、ワイバーンの顔に向け水の玉を飛ばし、牽制してくれている。
水の初級魔法『アクアボール』というらしい。本来なら呪文を唱える必要があるらしいが、リエは無詠唱で撃てるらしい。流石熾天使様、チートは健在でした。
但し、威力は弱いようで、嫌がらせ程度しかないみたいだ。ワイバーンの叫び声が、だんだん凶暴になっていってるのが分かる。
「やばいやばいやばい! 死ぬ死んじゃう! 今度こそ死んで消えちゃうよ俺!!」
「もう少しだから頑張りなさい!! 今貴方に死なれたら、私のせいになるのよ! 死ぬなら私の見てないところで死になさい!!」
「お前!! 思ってても声に出すなよ!!」
声に出すだけで、見捨てないでくれているリエ。正直、リエだけだったら、さっさと森に戻ってワイバーンを撒いていただろう。俺のペースに合わせながら、魔法で牽制までしてくれている、リエの負担はかなりのモノだと思う。
「見えた!!」
一日かけてでた森を、半日で戻ってくるとは思わなかったよ……。あの森にさえ入ってしまえば、ワイバーンの巨体を撒けるはず。そう信じて必死に走る俺とリエ。
「森に入ったら距離を稼いでから、木々に隠れるわよ」
「了解!」
やっとの思いで森へと辿り着く俺とリエ。
『グギャアアアア!!』
体が大きなワイバーンは、木が邪魔で森に入って来られないみたいだ。先程までは、ほぼ真後ろで聞こえていた声が上空から聞こえてくる。
「油断はしちゃダメよ……。その気になれば木を薙ぎ倒してくるかもしれないから」
そうして来ないのは、ワイバーンもタダでは済まないからだろう。いくら木と言え、当たれば痛い。それが何十本となればダメージ量も馬鹿にならない。
「このまま静かに、隠れてやり過ごすわよ」
ワイバーンは上空を旋回している。どうやら木々のお陰で姿を見失ってくれたようだ。
「ハァ、こんな事になるなんて、先が思いやられる……」
木を背を掛け、隠れるようにする俺達。昨日までは、普通の高校生だったのに何故こんなことになったのか……。俺は、昨日の出来事を思い出していた。




