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妄想小説【第一話】

作者: 藤原郡司

4月12日、日曜日、天気、晴れ。


第1章「結局」

 セットしたアラームの時刻の30分前に目が覚めた。私は折角早く起きたのなら起きてしまおうと思うタイプ。起きるや否やリビングに向かうと朝食が準備されている。これが実家暮らしの特権だ。テレビには、引っ張りだこの芸人気取りの男性タレントが饒舌だ。雄弁とは程遠い。今日は友だちのマリちゃんと渋谷でお買い物。都会に行くから化粧に気合が入るがノリが悪い。「最悪。」と無意識に言葉が零れた。気が付いたら家を出る予定の時刻の10分前で、早く起きても結局慌てるのが常だ。



第2章「マリちゃん」

 マリちゃんと渋谷で待ち合わせする時はいつもヒカリエだ。マリちゃんが「ハチ公前で待ち合わせするやつはダサい。私たちは上野英三郎じゃないんだから。」と高校時代、論っていたのを覚えている。大学3年になった今もこの理論は変わらないらしい。JR線を使って渋谷に行くからハチ公前の方が良いように思えるが、人混みに辟易する私の性格上そこに面倒くささはないのだ。マリちゃんとは高校の吹奏楽部で出会った。担当する楽器が同じという単純かつ明快な理由で仲良くなったマリちゃんは、約束の時刻に1時間遅刻した。



第3章「親切心」

 「ごめん遅れちゃって!」とマリちゃんは慌ててやって来た。私は「私もさっき着いたばかりだから。」と1時間遅刻した人に使うに相応しくない言葉を選んでしまった。この言葉を使う時は5分、10分遅刻した人に対して使うものだから、良い人のふりをするのも難しいと実感した。すかさず「それは嘘だよ!」と言うマリちゃんに対し、私の親切心を返せ!と思った。続けてマリちゃんは「セットしたアラームの時刻の前に1回起きたんだけど2度寝しちゃった」と言ってきて、私とは違うタイプだなと思うのであった。



第4章「私たちのメッシ」

 私たちは小洒落たカフェで昼食を摂ることにした。渋谷をはじめとする都会のカフェは、備品の色、質感を統一することによって小洒落たカフェを演出しているのだ。料理の味とかは関係なく、写真を撮ればそれで満足。SNSに載せて大満足。これで経済は回るようだ。「そういえば、渋谷行く途中の電車でメッシに会ったよ!」とマリちゃんが嬉しそうに言ってきた。私たちの言う“メッシ”はサッカー選手ではなく、私たちの所属していた吹奏楽部の部長で、何故“メッシ”かと言うと身長が169cmでサッカー選手のメッシと身長が同じだからである。さらに部長は左利きだ。



第5章「コスメカウンター」

 渋谷に来た真の理由は化粧品の買い物。マリちゃんはベースメイクに15種類のコスメを駆使し地層を作る。陰で地質学者といじられているのはここだけの話。メイクアップは余力なのだろう。マリちゃんはアイラインを引くのが上手なので以前、「なんでそんな綺麗に引けるの?」と質問したら「昔書道やってたから」と訳の分からない回答だったから、それ以降メイクについての質問はしてない。きっとマリちゃんは感覚でメイクするタイプ。私はYouTubeで勉強中だ。スポンジひとつとっても種類がありすぎて目が回りそうだった。



第6章「文明の利器」

 帰り道、マリちゃんと少し口論になった。SNSの略が(social networking service)なのか(social network service)のどちらが正解なのかで、無益な争いをした。私は(social networking service)。マリちゃんは(social network service)。私たちに答えを教えてくれるのがスマートフォンだ。すぐに文明の利器に頼るのが若者なのだ。そこに何の疑念も抱かない。結果、私の勝ち。その後でなんで ing なのかという話になり、これまた予想が二つに割れた。これ以上口論になると友情にヒビが入ると悟り、やんわり話題を変えるのであった。

 寝る直前、文明の利器で ing の訳を調べ、眠りについた。

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