10時間目:その昔には何が…。
光が差し込む森、そこに草花や動物達が生活している。
そんな森に、銀髪の幼い少年が動物達と戯れていた。
笑い、怒り、悲しみ、喜びと、少年はこの森で、この動物達とこれら全てを分かち合ってきたのだ。
そこに、一羽の蒼い鳥がやってきた。
「あ、またキミだね、今日はどうしたんだい?」
にっこりと笑いながら鳥に話しかける。
すると、何かが分かったのか少年の顔から笑いが失せ、目を見開き唖然とし驚愕した――――
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…」
少年は走っていた。
呼吸は激しく乱れ、額には冷や汗が、そして目には絶望が見えていた。
(お父さん、お母さん、お願い、無事でいて、何もないでいて…!)
走り続ける少年の目の前には、一本の煙がたっていた………。
森を抜けた。
森の入り口は丘になっており、そこから街を一望できた。
街を一望する。
少年は絶句した。
真っ赤に染まる街―――
煙で真っ黒な空――――
人々を次々と切り捨てる兵士達――――――――
カンカンと警報の鐘が鳴り響きながら、悲鳴や断末魔が共に聞こえる――
悪夢だった…悪夢でしかなかった…目の前で起こる残虐な行為、ここまで届く悲鳴、崩れ落ちる建物、全てが全て、少年を叩きのめした。
少年はガクッと膝から落ち泣き崩れた…。
しかし、少年は朝の事を思い出す。
「今日はお父さんとお母さん、ずっと倉庫にいるから、何か用があるなら来てちょうだいね―――――――
ハッと思い顔を上げる。涙と鼻水で濡れた顔は街の外れにある倉庫へと目がいった…。
そこは火が回っておらず、兵士もいなかった。
(もしかして…!)
お父さんとお母さんは無事、ゲガもしてない、また笑顔で向かえてくれる。
そんな願いを胸に、少年はまた走り出す。
転んでも、膝を擦りむいても、泣き崩れる事なく倉庫と確実に距離を縮めていく――――
「ハァ、ハァ、ハァ…お父さんお母さん…!」
バタン!と大きな音を立てながら、木の扉が開く。
すると、そこには、無事な父と母がいた。
父と母はビックリし、我が子の名前を呼んだ。
「「レオン!!」」
「お父さんお母さん、今なら大丈夫、早く裏の森から逃げよう!?」
「僕、助けに着たんだよ!」
幼いレオンは『早く』と急かした。
「あぁ」と二人はレオンと出口から出ようとする。
しかし―――
「まだこんな所にいたのか。 ま、観念しな、大人しく殺されなぁ!」
兵士は叫ぶと、剣を振りかぶった。
「レオン!!」
レオンの父、『バルト』がレオンを庇おうとしたとき。
レオンは魔法を発動させた。
「シャイン!!」
すると、兵士の頭上に光の球が現れ、ともに爆発した。
「ぐあぁぁっ」
「や、やった…!」
レオンは震えながら、魔法を使った。
「っ、このガキィー!」
震えの止まらないレオンは咄嗟に行動できず、立ち尽くすしかなかった。
「レオーン!!!」
バルトはレオンを庇うように、振り下ろされる剣の餌食になった。
「ぐあぁぁぁああっ」
バルトはその場に倒れ込んだ。
苦しそうに上げるうめき声、止めどなく出る大量の血。
レオンの手に、顔に、服に、体に、その血が飛ぶ。
「う、ぁっ、ぁぁっ、はぁっ、そんな…っ、そんな…っ!」
「お父さん、お父さん…!」
「はっ、息子を守るとは、熱いねぇ。」
「さぁ、まだ、後始末は残ってるんだ、再開しようか。」
にやりと笑う兵士。
こっちに、近づいてくる。
(いけない、そんな、動いて、動いてよ僕!)
切り捨てられた父を目の前に恐怖で動けないレオン。
そこに兵士がやってくる。
「さて、さっきは邪魔されたが、お前を可愛がってるよ。」
「どうした、さっきみたいに魔法使わねぇのかよ?」
「ぁっ、はっ、そんな、いやだ、そんなぁ…。」
「はっ、恐怖で動けないか。」
「まぁいい、すぐに楽にしてやるよ!」
兵士の腕が振り上げられ、下ろされる。
その刹那、母『ノーラ』がレオンを庇う。
ズシャッ…!
ドシャッ
肉が引き裂かれる音。
地面に何かが落ちる音。
レオンは理解した、何が起きたかを。目の前を転がるバルトとノーラ。
血が大量に流れ、足元を濡らしていく。
血飛沫がレオンにかかる。
暖かい、生々しい父と母の血が――――
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!――――――――――――――――
どうも、九条です。 久々の更新となってしまいました、すみません。 えぇ、今回のお話し、だいぶシリアスになってしまいました(汗 更新の方が度々遅れると思いますが、最後まで書ききるつもりです! どうか、最後までこの作品を呼んでいただけると幸いです。