第8話 どうして俺は……
主に主人公の過去です。
この作品のテーマでもあります。
今回はちょっと重い展開になりました。
原作ノートとはまた全然違います。
いつもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
『瞬くん!!』
誰かが俺の名を呼んでいる。真っ暗な意識の中で、それを思った。
「…鈴木いんちょっ」
まただ。
「鈴木委員長!!」
やめろ。その名を呼ぶのは。
場面が変わった。講堂のようだ。たくさんの生徒が、中学生ぐらいなのか、集まっている。その光景を、どこかで見たことがある、と思った。
気が付くと、俺はみんなの前で声を張り上げていた。
「みんなが楽しめる文化祭になるように、この鈴木、頑張ります!!」
わあっと歓声が上がって、拍手が聞こえた。
物心ついた時から、誰かの役に立ちたがる子だった。皆が笑顔になるのが、俺の幸せだった。だけどその幸せを、自らのせいであの時から奪われてしまった。
それまでは俺を好いてくれる人もたくさんいて、そんな誰かの役に立ちたくて、その一つで文化祭の実行委員長に選ばれた。だけど……。
文化祭まであと2週間となって、毎晩遅くまで多忙を極めた時だった。
「委員長!!」
「鈴木君!!」
意識の遠くで、後輩と顧問の先生が呼ぶ声と、救急車の音が重なった。病院に救急搬送されたのだ。
「しばらく、安静が必要ですね。それに精密検査も必要です。入院してください」
お医者は、暗い意識の底から目を覚ました俺と、後から駆け付けた両親にそう言った。
「安静って、何週間ですか!? 精密検査って何ですか!?」
俺は思わず起き上がって、叫んだ。布団を引っぺがした、点滴の繋がれている手を、看護師に慌てて抑えられた。
「ちょっと、脳だとか、ま、詳しくはご両親にお話ししますんで」
お医者は素っ気なかった。
いろんな検査も含めて長く感じた3か月の入院生活を終えて、学校に戻った。文化祭はもちろんとっくに終わっていた。その頃からだ。皆が何か、俺に対して腫れ物に触るような接し方になったのは……。
唯一、そんな中でも普通に接してくれたのは、クラスの違うサオリだけだった。
「もう、瞬くん、どっこも悪くないのにねー」
学校というものに、居場所をなくしたまま、中学校に通うのは、地獄のようにきつかった。それでも通った。学校に行けばサオリがいたから。学校ではなく、サオリがいつの間にか俺の居場所になっていた。
ある日、掃除の時間に、誰かがごみ箱を片付け忘れていた。俺は、それを持ち上げてごみを出そうとすると、それを横から友人の一人だったはずの男子生徒に横取りされた。
「あ、いいよ。俺やるから。鈴木君、体、もともと弱いんだってな」
鈴木君、体、もともと弱いんだってな。
俺はその一言がぐさりときて、その場に取り残された。元友人に見つからないように、ぎゅっと拳を握りしめた。
…なんだ、本当は。
ダレモ、オレノコトナンカ必要トシテナインダ。
だったら、どうして体の弱い俺は、生まれてきたんだ……?