第6話 人間じゃない女
書いてるときは、え、こんな展開!?って思ったんですけど
書くのは楽しかったです。
原作ノートともちょっと違う感じになってます。
つまり、完成版は作者もここでしか読めないということです。今のところ。
いつもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
少女が頷いたのを見ていると、その口が知っている手で塞がれた。
「全くもう」
この学校の保険医、江波先生だ。
「誰としゃべってんのよ、坊や?」
そう言いながら、左手で少女の口を押さえ、右手で俺の顎をぐいと上げた。
……おかしい。こんなことをする先生じゃないのに。そう思って、俺は江波先生の手を自分の右手で外しながら言った。
「江波先生。その子の口から手を離してください」
「嫌よ」
即答だ。俺は江波先生の顔を真っ直ぐ見た。
「!?」
江波先生の眼は狐のように細まり、少し開いた唇の間から、八重歯が覗いていた。江波先生は言った。
「この娘は私の獲物だもの、逃がさないわよ」
こいつ、絶対人間じゃない!! どういうことだ!?
「先生……。騙したな、皆を……!! いつから!?」
俺は震えながら、こぶしを握り締めた。
「いつからだっていいじゃない。今までも、多くの人間が私の手に堕ちていったわ」
そう言いながら、江波先生を名乗る、人間じゃない女は、俺の手を握った。
「坊やもそうなるだけのことよ。さあ、もっと私に触れなさいな」
人間じゃない女は、俺に顔を寄せるように、そっと、囁いた。俺がびくっとして元江波先生の顔を見ると、その美しかった顔が鬼のように醜く変わっていくように見えた。
「さあ、もっと」
言いながら、胸のあたりまで俺の手を持っていこうとする。俺は抵抗した。
「い、嫌だ」
「私の美しさに堕ちないなんて、なんて憎たらしい子。今日中にこの小娘もろとも殺してあげる」
体中が、もっと言えば全身全霊が警告音を発しているように感じる。なのに俺は目の前の、見たことがない白い谷間から、何故か目が離せない。くそっ、こんな時、男ってやつは……。
少女が、まだ苦しそうにもがいている。その手がばんっと俺に当たって、俺は我に返った。とりあえず、この少女を助けるのが先だ!!
俺は、無い力を目いっぱい使って、人間じゃない女の手を振りほどこうとした。しかし、女の力はものすごくて、びくりともしない。
「無駄よ。いいじゃないの、もう諦めても。明日のあなたは、もうこの世にはいないの」
人間じゃない女がそう言った瞬間、少女の眼とあたりが一瞬、カッと光った。