第5話 保健室にて
主人公が保健室に行ったのには理由があるんですが、
それはいずれ書きます。
いつもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
あー面倒くせえ。何もかも。
保健室のベッドに寝転がりながらそう思って、右を見ると、例の少女がいた。
少女は言った。
「なあんだ」
「なあんだって何だ」
俺はムスッとした。
「起きてるのに、何でジュギョー出ないの?」
俺は少女が見えないように、寝返りを打った。
「……ダリいから」
実際、体にはダルさを感じていた。そう、またいつものあれだ。眠れば少しは、体が軽くなるのだが。今はなぜか眠れもしない。
そんな俺の事情は、いざ知らず少女は言った。
「ひどい過ごし方! 人生最期の日かもしれないのにっ」
俺は言い放った。
「……ほっとけ」
しかし、次の少女の一言で、俺は俺の敏感なところに、一撃を食らった。
「あたしだったらー、サオリちゃんとデート行くわねー。そんでキ・スしたり?」
わざと『キ』と『ス』を大きな声で言っている、と思ったら、俺の心臓が一瞬だけ『ドキーン!』と鳴って、体から飛び出しそうになった。
「な……、何でそうなる!?」
ここだけの秘密だが、俺はまだ一番最初のキスの経験もない。
俺は耐え切れなくなって、思わず起き上がって少女を見た。
「わーあ。動揺してる—―☆ かーわいい♡」
少女はそう言うとニコッと笑って、何故か嬉しそうだった。
「本当は、好きなんでしょ? あたし知ってるし」
この少女が俺の何を知っているというのだろう?
「……何だよ、お前?」
少女は俺の問いには答えなかった。代わりに、同じような言葉を繰り返した。
「本当は、大好きなんだよ、サオリちゃんのこと」
俺は、小学校から見てきたサオリの屈託のない笑顔を思い出し、顔がほてっていくのを感じた。
「……何でお前が知ってんだ?」
俺は思わず訊いた。少女は、にっこりと優しい笑顔になった。
「ずっと、見てたからよ」
ずっと、『見てた』?
「あたしが、兄にのこと」
「兄に?」
俺が、この少女の? 兄に、つまり、兄……?
少女は、こくりと頷いた。
その時だった。