第3話 ぽろりと光るもの
生きたかったのに、生きれなかった人。
生きたくないのに、生きなきゃいけない人。
どっちにも思いをはせて、書きました。
「ってまたお前かよ!! 何すんだ、このチビ!!」
俺は少女にヒールで踏まれた足の痛さに、思わずへなへなとうずくまった。
少女は、猫の襲い掛かる前のように、威嚇する雰囲気を出している。
「……」
何だよ、と言おうとした俺の口が止まった。
「人生、つまんないって何なの……」
見ると、ぽろりと光るものが少女の頬を滑っていく。
げっ、泣いてる……。
「あたしは……。あたしはっ」
涙は次から次へと、止まらない。
「もっともっと、生きたかったっっ。そう思ってる人だって、いっぱいいるのに!!」
少女の顔は、もうぐしゃぐしゃだった。
女の子に泣かれるのは、男としては、辛い。俺は、思わず言った。
「そうか……。悪かったな」
少女が、俺以外には見えていない、ということを、この時は忘れて、ただただ、そう言った。
と、センコーが驚いた様子で言った。
「鈴木、今お前、謝ったな!?」
アンタにじゃないが。まあ、いいか。
「今日は許す、席に着きなさい」
アンタに許されても、嬉しくないが。
「はい……」
そう言って立ち上がると、また少女はいなかった。