表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/18

第15話 まだ君に何一つ

まだ終わりじゃないですよー。第15話の元のタイトルは、「終わりと始まり」でした。

でも変えました。


いつもありがとうございます。よろしくお願いいたします。

「あ、サオ……」

「こっ……」


 2人で同時に声を発していると思ったら、俺はサオリに抱きしめられていた。柔らかいものが右腕に当たって、それは俺のあまり知らない感触で、どぎまぎした。そんな俺をお構いなしに、サオリは掴むように抱きしめてくる。


「怖かったよおおー!!」


サオリはそう言うと、ものすごい勢いで泣き出した。そんなサオリを見るのは、この10年間で初めてだ。


「……俺も。っていうか先生たち、何見てんすか? あっち向いてて!」


俺は、先生たちがおずおずと俺たちとは違う方を向くのを確かめると、サオリを抱きしめ返した。



そのうち、運転手さんが入ってきて、バスのドアを開けた。その途端、警察官が入ってきた。


「犯人確保のため、突入します!!」


 俺が、まだ涙を流しているサオリとともに席に座ると、警察官がその横を通って行って、ニット帽男に手錠をかけた。


「銃刀法違反、バスジャック現行犯容疑で逮捕する!! おい、拳銃はどこだ!?」


 男はうなだれた。


「……さっき、空中で曲がったよ。 そこにあるだろ」


「空中で曲がった!?」


驚くのは無理もないが。その曲げた本人は、ミーコはどうしているかというと、近くの席の所にいて、何か言おうと口を開けた。


「……ところで、ネロ!」


「ウ、ウォーン……」


弱弱しい声の主は、小さな子供のような狼だった。


「悪いことに力を使いすぎるからよ。神様に頼んで、元の姿に戻してあげる。来なさい」


その優しい声の一言が、そのときミーコの声を認識した最後になっていた。


 * * *



 約2年半後。


 俺は、警察からの感謝状を受け取った写真をずっと持っていた。バスジャックの犯人確保につながった件で、高1にして俺はすっかり有名人になった。ネットの記事にもなり、そのことで俺の日常は一時、少し騒がしくなった。写真に写っている俺の髪の色が、事件当時オレンジだったことは、もうサオリと先生しか知らないんじゃないだろうか。今は、ミーコと同じような色の、アッシュにしているから。髪色については、先生も何も言わなくなった。


 気が付いたらミーコは、また俺のそばにはいなかった。かわりにサオリがいつも隣にいてくれた。そう、俺たちは付き合っているのだ。


 江波先生も、保健室爆発で車いすになったけど、ネロに操られていただけで、実はいい人だとサオリに聞いた。何とか体調も持ち直し、今も俺たちの学校の保険医だ。



「あー、卒業試験めんどくせえ!!」


春めいた風を感じながら、俺は伸びをして叫んだ。


「瞬くんはもう受かってるようなもんじゃないのー」


「んなことねえよ。ここ2週間ぐらいクッソ勉強したからな。脳みそ腐って漏れそうだよ……」


 俺はと言えば、今年の春から警察学校に行くことが決まった。あれからなんだかわからずに急に倒れることもなくなって、医者がその回復に驚いていた。ミーコが何かしたのかもしれない。俺も、筋トレをしたり、暇を見つけて走ったりしているが。


「どこにいるんだ、ミーコ……」


 まだ君に、お礼も言えてない。何一つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ