第1話 パンクな少女
少年は、少女と出会った。
そして、言われた。
今も覚えている。
その少女は、灰色だった俺の日常に、突然現れて、言ったんだ。
* * *
……俺? 俺は、鈴木 瞬。
あれは、高校一年生の夏真っ盛りの頃だった。
かーっ!! 今日も暑い(あっち)いなー……。
照り付ける太陽を見上げて、噴き出る汗を拭こうと、腕を上げた時だ。
頭の後ろ右から左の方へと、強い衝撃が、突然襲った。
「!?」
思わず、衝撃の原因を確かめようと、俺は勢いでイヤホンを外し、左を見た。
サッカーボールが転がっていることを認識した時。
誰かの手が伸びたのと、向こうからくるだろう少年の、「すんませーん」という声が、同時だった。
そこに、少女はいた。
俺は髪の毛がオレンジ色で、金色のピアスをつけている。
しかし、その少女も、見たことがあまりないような灰色のボブっぽい髪を、ピンクのリボンで両方、頭の上で結んでいた。
Tシャツは肩が破けて、黒のタンクトップが見えていた。スカートは短くフリルつきでこれも黒。しかも夏なのにカウボーイが履くような茶色いブーツを履いている。耳にはルビー色のピアス。
いささか、少女にしてはおしゃれなんだか、何なんだか、というパンクな格好だった。
そして、一番変だったのが、少女にしっぽがついている、ということだった。
そんな少女は、サッカーボールを指でくるくると回しながら、流し目で俺を見て、言った。
「キミ、明日、死ぬよ?」
はい!? と思ったのと、
「うわあああ」
と声が聴こえたのも、同時だった。
「誰もいないのに、ボールが浮いたああ!!」
サッカーボールを取りに来た少年が、気が付くと、傍らで腰を抜かして座り込んでいた。
「うわああああー!!」
少年はそう叫んで、ボールを奪うように取ると、走り去っていった。
……何だったんだ、今のは?
気が付くと少女はもう、消えていた。