君との約束。
ひぐらしが鳴いている。
今日が終わってしまう。
夏が終わってしまう。
俺には何が残っただろう。
この夏に俺は成長できたのだろうか。
たくさん遊んだ。勉強もした。
…それでもこの心にぽっかりと空いた穴はふさがらなかった。
「なぁ。俺はどうすればいいんだ?」
墓石はなにも答えない。
ふと、頬を熱い何かがつたう。
それが涙であることを理解するのに数秒かかった。
ポツポツと雨がふりはじめる。
夕立だ。
『風邪ひいちゃうよ?帰ろ!』
きっと優しい君ならこういってくれるだろう。
でも
そんな事を言ってもらう資格はもうない
俺は
君との約束を破ってしまった。
今すぐにでも俺は君に会いたい。
でも成長しない俺は君に会いにいく勇気がない。
なんどもなんども試みた。
あらゆる方法、場所で幾度となく君に会おうとした。
…でも俺には勇気がなかった。
俺が俺でなくなってしまうのがたまらなく怖いのだ。
「俺は…」
『…ありがとう。』
言葉が聞こえた。
疲れ果ていた。幻聴かもしれない。
それはとても聞き覚えのある声だった。
丸っこくてくすぐったい、
紛れもない。君の声。
「…もう少し頑張ってみるよ。」
雨はいつの間にかやんでいた。
空には大きい虹がかかっていた。
ーーーーーー
あれから何年たっただろう。
今日はあまり長居はしない。
ただ一言君に伝えたくなったんだ。
「…俺は今日も笑えてるよ。」