モルモット
モニターに映し出されているのは吐き気を催す物だった。
ついさっき食堂で昼食を共にした同僚達が、全身の穴という穴から体液を吹き出しのたうち回り絶叫を上げ息絶える。
此処は軍の秘密地下細菌研究所。
今閉じ込められている研究室で実験の結果を確認しようとした矢先、突然警報ブザーが鳴り響き研究室の気密ドアが自動的にロックされる。
一緒に閉じ込められた部下がモニターのスイッチを入れた。
モニターに映し出されたのがこの地獄絵図、ロックが間に合わなかった研究室内の研究員や通路にいた警備兵達が次々と惨たらしい死体に変わっていく。
南極の氷の下から採集した未知の病原菌を幾つものチームがそれぞれ違う研究を行っていた。
その未知の病原菌を何処かのチームが漏らしたのだろう。
モニターを見続けていた私に部下が声をかけて来る。
「主任! 見てください」
振り向き部下が指差す物を見た。
指差されたのは10個のガラス張りの飼育箱。
飼育箱1つ1つにモルモットが1匹ずつ入れられていてその全てが元気に動き回っている。
私達が行っていた実験は病原菌のワクチンを作り出す事。
モルモットが元気に動いているっていうことはワクチンの製造に成功した という事だ。
地上でこの惨事に対応しているであろう所長に連絡し迎えを寄越すよう頼む。
もっとも迎えが来ても防護服が無いこの研究室から出るためには、私達自身がワクチンの人体実験のモルモットにならなければならないのだが。