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#79

少々閑話気味かな?

会談終了から数日後です

SIDEアンナ


『‥‥‥久々に、夢を見ましたね』


 思わずぽつりと、アンナはつぶやいた。


 今日は珍しく彼女は夢を見たのだが、その夢の内容は過去にあったことである。


 夢とは記憶によってつくられるものであると聞いたことはあるのだが、そのまま再生されるとは思ってもいなかった。





 今はどうやら朝早いようであり、あの会談から数日経っていて、現在寮の部屋であった。


 気が付けば本の姿から魔女の姿へと変わっていたことにアンナは気が付く。


 寝る前は確かに本の姿だったのだが、夢の影響で姿を変えていたのだろうか?



 ふと思って今の場所を見てみると、ベッドの上であり‥‥‥


『あ‥‥‥』


 横を見ると、スヤスヤと寝ているカグヤの寝顔があった。


 いつもなら本の姿で本棚にのって寝ていたはずなのだが、寝ぼけてどうやらベッドに上がり込んだようである。



『‥‥‥』


 寝ているカグヤの寝顔を見つめ、アンナはふと何かを思い出しそうになった。


 こう、何か忘れていた大切なことが思い出せそうな、それでいてなかなか思い出せないような‥‥‥もどかしさがあるのだ。


 けれども、また別の思いもあった。



 本来であれば、アンナはカグヤの生活をガイドする魂魄獣としての役割がある。


 けれども、ここ最近全くガイドできていないような気もするのだ。



『まだまだ私も未熟者ですかね‥‥‥』


 思わずこぼれ出た言葉は、魂魄獣としてのプライドか、それとも己の心の弱さに対する嗜虐か。



 でも、せっかくなので今の主であるカグヤの寝顔を見ながらもう少しだけ一緒に‥‥‥


「邪魔ダ」

『!?』


 ひょいっと体を持ち上げられ、そのまま驚いている間にどかされたアンナ。


 そのどかしてきた相手は‥‥‥久しぶりのサラである。



 夏休みの現在、彼女は里帰り中だったはずなのだが、どうも既に戻ってきたようであり、そして今日もまたカグヤの愛人として確定しようとしてか、今度は薄い下着が見える様な寝巻を着てベッドに潜り込もうとしていた。


『させませんよ!』


 すばやく魔法を発動させて、今回は金盥(かなだらい)を落下させてサラの頭に直撃させたアンア。


ガァァァン!!


「ぐぇッツ!?」


 直撃によりでっかいたんこぶができた後、サラはバタッと倒れた。


‥‥‥元が火炎龍(ファイヤードラゴン)だろうが、今は人間の身体であるサラ。


 中身が変わらないとはいえ、魔法でガッチガチに殺傷能力バリバリの鈍器と化した金盥は効いたようだ。



 そのままアンナは気絶したサラを引きずり、今日は窓からポイっと投げ捨てる。


‥‥‥そう簡単にくたばらないだろうけど、念のために拘束やら麻痺やら様々な状態異常になる魔法を付与させて。




『ふぅ、油断すると絶対来ますねあの人は‥‥‥』


 溜息をはき、対策のためにトラップの魔法陣でも仕掛けてやろうかとアンナは考える。


 とはいえ、生半可なものではなく確実に撃沈させられるようなものが良いのだが‥‥‥



「ううん‥‥‥」

『あ、まだ寝ていて大丈夫ですよカグヤ様‥‥‥』


 そっと額を撫でて、起きかけたカグヤに対して優しく語り掛けるアンナ。



 主に対しての忠誠心はあるのだが、なぜか湧き出る様な甘酸っぱいような苦しいような感覚。


 自身のその心境にまだ整理がついてはいないものの、これからもしっかりカグヤを支えていこうと改めてアンナは誓うのであった‥‥‥






―――――――――――――――――――――――――――――――――――

SIDEミルル


「‥‥‥うーん」

『おや?どうしたでありますかな王女様?』


 王城のミルルの自室にて、魂魄獣であり、先日の騒動でけがをしたものの修復し終わったナイトマンは、ふとミルルが何か悩んでいるような声を上げたのを聞き、尋ねた。



「なにかこう、モヤっとする気持ちが最近あるんですわよね‥‥‥」


 ミルルは考えこみながらも、その気持ちがわからないでいた。



 ここ最近思う時はあるのだが、その感情が一体何なのかは未だに不明なのである。


 少しずつ、少しずつ大きくなっているような気がして、気が付いたら自覚できるほどの感情にまで成長はしているのだが‥‥‥まだわからないのだ。


『ふむ、我輩で良ければその内容を聞かせてほしいであります』


 主の悩みを解決する手伝いをしたいと思い、ナイトマンはそう尋ねた。

 


「別に大したことじゃないのですわ。なんかこう、最近カグヤの事を考えて何かやらかしたりしそうな心配感もあったりはしているのですが‥‥‥思うとその時にこう、もっとしっかりしてほしいというか、周りを見てほしいというか」


 ナイトマンの問いかけにミルルは答える。


 ここ最近ようやく自覚してきているのだが、どうもカグヤの事を考えてなる症状である。


 それも、アンナやサラ、最近では女性の姿になっているリースなどの面子がカグヤに近づくと、こういらいらとするというか、独占できないようなそんな感情なのだ。



「カグヤの立場はシグマ家の三男‥‥‥将来的に国に使える臣下とも言えるのでしょうし、その能力を独占したいとわたくしは何処かで考えているのでしょうか?」

『‥‥‥それ、何か違うような気がするでありますよ』


 ミルルのその言葉に、ナイトマンはしばし考えて‥‥‥やや呆れる様な声で返答した。


「何が違うのでしょうか?」

『そもそも王女様はカグヤ殿の力に危機感を覚えて、監視しようとしていたはずでありましたよね?国に害をなす可能性も考えての監視であり、その能力を独占しようとは考えていなかったはずなのでは?』

「あー‥‥‥確かにそうですわね。初心を忘れていましたわね。いつの間にか、仲良く話すような仲となり、一緒に行動することが多くなりましたし、どこかで忘れていましたわね‥‥‥でも、そうならば一体なんの感情ですの?」


 己の初心を忘れていたことを思い出すのと同時に、結局何が原因でどのような気持ちになっているという事がわからないミルル。


 だが、ナイトマンはふと悟った。


 この人‥‥‥カグヤとまた別の意味で鈍感ではなかろうかと。


『王女様‥‥‥あなた様の気持ちの整理ができていないのではないでありましょうか』

「そう言う事になるんですの?」

『ええ、気持ちがわからない、ややこしいと考えているからこそ答えは見つからないのであります。ならばいっその事、その気持ちの元凶であるカグヤ殿とどこかへ一緒に出掛けてはどうでありましょうか?』

「なるほど‥‥‥元凶と過ごして、答えを見つけろという事ですわね。いい案ですわナイトマン」


 そうと決まれば行動に移したほうが良いといい、ミルルは素早くその計画を練り始めた。


 その傍らで、ナイトマンはミルルにその気持ちがわかるように願っていた。


 そう言う人が気になる気持ち、男女の友情感情とかではなく、そう言う事を‥‥‥‥


(人は、その感情によって狂う事もあれば、精神を安定させることもある‥‥‥今、大事な時期なのでありますよ王女様)


 魂魄獣として長年ミルルのそばに使えているナイトマン。


 その気持ちの正体を察すれはすれども、主自身に気が付いてほしいとナイトマンは考える。



 とりあえず、優しく見守ることをナイトマンは決めたのであった……

さてと、何やら面白そうなことになってきたでありますな‥‥‥


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