表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/173

#78

事後処理と言ったところかな。

……途中、クトゥルクラクパスに襲われるという事件があったものの、会談は無事に終了した。


 だが、その会談で得た物は大きい。



 まず、バーステッド王国とデストロイ帝国との戦争は確実に回避できそうという事でまとまった。


 戦争にかかる費用や被害、賠償金額などを考えずに、その分を国に回せるのは大きい。


 また、戦争を回避できるために両国での貿易を強化し、新技術などを共同開発することで新たな資源を求めることも決まったのだが、観光面でどうやら帝国は資金を稼げる可能性が高くなったらしい。


 というのも、今回の会談場所であった古城周辺の湖なんかは元々観光地としてあったのだが……



『カグヤ様のやり過ぎな魔法も、こういう時は役に立ってますね』

「その言い方だと普段役に立っていないとか言っているように思えるんだけどな」


 目の前に広がる黄金の花畑を見て、アンナのつぶやきにカグヤは不満そうに答える。




 クトゥルクラクパス……今は無力化しているのだが、その前にまかれていた毒などは全て浄化され、さらにその浄化のためにカグヤが発動させた「花畑作成(フラワークリエイト)」によって生み出された花畑が、新たな観光資源として取り上げられるそうだ。



 何しろ、今までに見たことがないような黄金の花が咲き乱れ、景色の景観を損なう事もなく夕日に物凄く()える様な光景になったのだ。


 この地は帝国の領内の観光地であり、これから先観光客が押し寄せてくるものだと考えられる。



 そして、生み出されたその黄金の花々だが、カグヤが使用した際に毒を浄化する能力が判明している。


 もともと浄化可能な種の花々だったのだが、それがさらに何倍、何十倍にもパワーアップした新種のようなものになるそうだ。


 

「少なくとも、カグヤ草とかつかないように努力したい。自分の名前が付くのって研究者たちにとっては良いんだろうけど、自分からしてみたら物凄い羞恥心が……」

『あー……なんかわかりますよ。私も過去の大魔法使いだった時の世界でちょっと似たようなことをやらかしてしまったことがありましたからねぇ。あれはひどかった……』

「何をやらかしたの?」

『……秘密です』


 口を滑らしたようなアンナの発言に、カグヤは問いかけたがアンナは思いっきり顔を背けて秘密にした。


 過去に何をやらかしたのかは気になる処だが、まぁ別の世界の事でもあるし関係ない。


 というか、恥ずかしいのであれば聞かないでおこうとカグヤは思うのであった。






 会談が終わったのち、皇帝は城へ、カグヤたちは国へと戻る。


 馬車に揺られながらアンナを収納しつつ、カグヤはミルルの方に向いた。


「ついでなので、もう一つ今回決めたことを渡すのですわ」

「ああ、その手紙か」


 ミルルが手に持っているその皇帝直筆の手紙を見て、カグヤはそう答えた。


 どうやら今回のことから両国の親睦をより深めようという事で、その第一歩として両国のトップ、ダースヘッド国王とカイザリア皇帝で文通を行うそうだ。


 魔道具(マジックアイテム)もあるのだが、専用の物を作るための調整がいるようで、いましばらくは普通に手紙でのやり取りになるらしい。



 そして、今回のクトゥルクラクパスなのだが……


「あの花畑に残るんだっけか」

「帝国の方で名前募集するんだってさ。人の欲望とかそう言うのには触れないようにさせつつ、とりあえずマスコットキャラ兼観光大使とかに任命するらしいよ」

「案としてはとり合えず、ニュルルちゃんというのを提案したのですわ」

(それはどうかと)

(少なくとも、タコ太郎のほうが良いような気がする。いや、メスならタコ美かな?)



 すっかり浄化されて、真っ白の小さな空に浮くタコとなったクトゥルクラクパス。


 どうやら花畑が気に入ったようで、しばらく住み着いて観光用のマスコットとしての生活が保障されたようだ。


 あの花畑にいる限り、毒を生成するようなことがあろうとも浄化が可能だし、居場所がわかるなら万が一の際にも駆け付けやすい。


 時たま観光として遊びに行くことを約束したら、物凄く喜んでいたようで皆に頬を擦り付けていたよ。




===============


(……アンナ、神のところにいたやつなら送り返す手段とかないのか?)

―――― 一応報告はしましたけど、そうすると転移の類にあたるようでして神が世界に負担をかけるわけにいかないという返事はありますね。まぁ、その埋め合わせとして少々ある事をしてくれるようですが。


(何をするんだ?)

―――― 今回のあの化け物(クトゥルクラクパス)を差し向けた黒幕共への、文字通りの天罰です。神がこうやって干渉するのは本来は色々と不味い事でもあるそうですが、クトゥルクラクパスがこの世界に来たのはそもそもあの神が酔っ払ったことによる不始末で、特例にするようですね。ついでに、酒も3カ月間禁酒を誓うそうですが……


================


 馬車に揺られながら、カグヤは収納したアンナと心の中で秘密の会話を行う。


 忘れがちだが、こういう心の中での会話方法もあるのである。



 で、天罰の内容としては神らしいところを見せつけるようで、領内の不満爆発、汚職などの摘発、様々な不正などが一気に世間に知らされるように細工するそうだ。


 具体的には、その手の書類をついうっかり忘れて置きっぱなしにするように思考を促すとか、見つけられるようにバタフライエフェクト……どこかで蝶が羽ばたくだけで、どこかの天候が変わるような細工を自然とこの世界に干渉し、関わるようである。


 そう考えると、本当に神という存在はこの世界の事をいじれるから脅威だろうけど……この神とのつながりは墓場までの秘密として持っていこうかとカグヤは思うのであった。



というか、酒に酔ってそんなことをしているのであれば、過去にほかに何かやらかしている可能性があるのが不安である。


 魂魄獣をもらえる儀式に今回のモンスター……まさか他にもやばい奴混じっていないよな?




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

SIDE愚者であり、天罰が下りし者達



 王国と帝国との会談から数日後、今回のクトゥルクラクパスの事件を引き起こし、皇帝の命を狙おうとした国家反逆罪及び、将来的に戦争で多数の死者を出していたかもしれない大量殺人未遂の容疑で開戦派の者たちが一斉に帝国内で検挙された。


 国外へ逃亡しようと試みた者たちも、その証拠をもみ消そうとした者たちもいたそうだが、不思議なことになぜかすべて(・・・・・・)偶然にも(・・・・)察知されたりばれたりと不運続き(・・・・)で、全員御用となったのである。


 自分は悪くない、この帝国の事を思ってやったんだと泣き叫ぶような奴らもいたそうだが、そもそも帝国のトップである皇帝の殺害を企んだことは変わらぬ事実であり、その後に起こったであろう帝位継承争いにも加わって、甘い汁をすすろうとしていた計画もすべてが明るみになり、すべての関係者たちに処分が下された。


 蟄居して子供に当主を譲ったり、領地を没収、爵位を下げるもしくは剥奪などの処分などが下される者たちがいたのだが、まだ甘い方。


 最も厳しかったのは重要幹部ともされていた人たちであり、重罪を犯したとし鉱山送りの強制労働か死刑が確定した。


 戦争の際には略奪の支持を企み、己の欲望のために王国の国民を利用していたという事実や、また以前ある貴族家で発覚した取引禁止薬物の売買に関わっていた者たちの事も明るみについでに一緒に出て、帝国ではしばらく掃除が行われたそうである。

おまけ

カイザリア「ほう、そっちも苦労しているんだなダースヘッド国王よ」

ダースヘッド「ああ、中々継ぐ奴がいなくてだな……カイザリア皇帝、そっちはまだ争って手に入れようとしているからいい方なのでは?」

カイザリア「いやいや、そちらのように謙虚な気持ちでいる子供が欲しいんだがなぁ」

「「……互いに苦労しているのは本当に同情できるし、今度機会があれば酒を飲みかわそうか」」


……皇帝、国王。両者とも悩みを打ち明けて話し合い、親睦が深まったという。苦労性同士の友情が生まれたのであった。


「それはそうとだな、あのシグマ家の少年……カグヤとか言ったか。あれとの繋がりが欲しい」

「というと、そっちで引き取ってくれるのか?シグマ家の扱いは悩みの種だからなぁ」

「……いやそれはそっちでどうぞ。友好関係を築き上げたいだけで、厄介事までは」

「いやいやいや、遠慮せずにどうぞどうぞ」


……そして、互いに厄介事を押しつけ合うような会話もしたそうな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ