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#77

戦闘しようと思ったのに……もう魔法を発動させたじゃん。

……周囲一帯が毒を浄化する花畑となり、汚染されていた大気が見る見るうちに綺麗な正常の状態へと変化していく。



《ギャッツ、ギョゴオゴウゴユゴウゴユギョ!?》


 その浄化能力が高まっているせいか、クトゥルクラクパス自身を覆う毒そのものがみるみるうちに浄化されていき、生産が浄化に追いつかなくなってきているようだ。



「というか、言いにくいなその名前」

『そりゃそうでしょうけど……カグヤ様のこの魔法って創造の斜め上を行きましたよ』


 カグヤのつぶやきに、アンナは呆れるような声を出しつつ、その横に立つ。




 カグヤが来てからすぐに状況とモンスター名などを交換し合い、こうしてクトゥルクラクパスの前に立っているのだ。


 クトゥルクラクパスは触手やその毒が怖ろしいものとされてはいたのだが、カグヤの魔法『花畑作成(フラワークリエイト)』によって生み出された花の浄化能力によって毒が浄化されて効力を失い、ついでとばかりに成長してきたつるなどによってあっという間にクトゥルクラクパスは縛り上げあげてしまって動けなくなったのであった。




……うん、縛り上げるのは予想外である。


 ただ浄化させるだけの花畑だったはずが、なぜか巻きついていったんだよな。今から本気で攻撃を仕掛けようとしていたら、勝手に花畑の植物が急成長して……


 あのクトゥルクラクパスの体内機関その物の毒を感知して、その中まで浄化してやろうかという勢いで内部に潜り込み、物凄くもがき苦しんでいるようだ。


 頑強で、貫くのすら難しいとされてはいるのだが、よくよく考えてみると何も全身がそうではない。



 眼の隙間や、口からも入り込める場所や柔らかい箇所があり、そこを突き抜けて内部に植物が入り込んでいって浄化しているのだ。



《ギョブボァオォアォ!?》


 内部洗浄をされて、あっという間にクトゥルクラクパスの毒々しい色が薄れていく。


「でも傍目から見ればこれはこれで恐怖の光景だな……」




 アンナたちに攻撃しようとしたところは許せない。


 けれども、なんかもうすでにオーバーキルのような状態のせいで、逆に哀れみをカグヤは感じたのである。


 何だろう、自分でやる前に創り出したものたち(花畑)が先に手を下しちゃったよ。



 毒が体積を占めていたのか、徐々にクトゥルクラクパスが縮んでいく。



 見る見るうちに小さくなって、古城周辺に伸ばしていた触腕も小さくなって縮んでいき、どんどん後退していく。














 そして10分ほど経過したころ、巨大だったあの身体は……


「「「『小さっ!?』」」」


 手のひらサイズのタコになって、皆驚きました。


 もうそのサイズになると植物から解放されてはいたのだが、毒々しい色は消え去り、代わりに真っ白な生き物へと変化していたのである。



「アンナ、これ何かわかる?」



 ミー、ミーッっと、もはや鳴き声すらも変わり、ミニマムサイズの可愛い白タコを見ながらアンナにカグヤは問いかけた。


『ええっとですね……あ、ありました』


 本の姿に戻ったアンナは、その答えを表示した。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『真・クトゥルクラクパス』

本来の姿へ戻ったクトゥルクラクパス。毒の精製能力が無くなり、人畜無害の生き物へと変化した。

愛らしさで場を和ませて、ふよふよと周囲を漂って生活する。

綿毛のように軽く、その墨は国宝並に上質なものである。


神が地上へ下ろした生物であり、その希少性ゆえに狙う物が多く、狙う人々の欲望などを長年かけて蓄えて、毒へ変化させてあのようなおぞましい姿へとなり果てていた。


『数千年ほど前に適当に投げたままで、忘れていたのじゃよ。酒に酔った勢いというのは恐ろしいのぅ』by神より

―――――――――――――――――――――――――――――


 発生原因は人の醜い欲望であり、それを長年かけて吸収し続けたがゆえに、クトゥルクラクパスはいつの頃からかあのような毒々しい生き物へと変化していたようであった。


 というか、酒が原因かよ見た目未成年の幼女神よ。魂魄獣を受け取るい儀式のやり方も確かそれが原因でああなっているというし、他に何かやらかしていないだろうか?



《ミーッ、ミーッ》


「……可愛いな」

『可愛いんですけど、猫じゃないので』


 アンナの可愛いの基準は猫かよ。



 カグヤは心の中でツッコミを入れたが、今はとりあえず後始末というか、この状況の整理に取り掛かることにした。








「こ、これが……あのおぞましい化け物だったものか」

「はい、そうでした」


 ミルルや皇帝陛下がいるところへ行き、見せると全員驚きのあまり目を見開いていた。


「まじか、あの超毒々しい奴が……」

「愛くるしくてなんか庇護欲が湧くな」

「可愛いけど、すごい似ても似つかない」



 攻撃を受けたのか伏していた護衛たちも、そのあまりの変貌ぶりに目を丸くして驚愕する。



 そういえば、毒を喰らっていた人もいたようだが、あの魔法によってどうやら周囲一帯を浄化したついでに皆綺麗に毒が抜けたようである。


そしてこのクトゥルクラクパスも毒が完璧に抜けちゃったようで、マスコットキャラのようになった。


《ミーッ!!ミーッ!!ミーッ!!》


 皆に見られて照れているのかほんのり赤くなって、空中をくるくる回って飛んでいる。



 何にせよ、会談でまとまりかけていたところでのこの怪物だったモノの襲撃……誰かが絶対に仕掛けたモノであろう。


 まぁ、シグマ家の機関が動いて探っているだろうけどね。万能じゃないから防ぎきれなかったんだろうけど、このことを考えて報復も物凄いことになるだろう。


 このモンスターの襲撃の黒幕を憐れむ気もないが、せいぜい残り少ない人生の快楽を楽しんでおいたほうが良いのではないだろうかと、問いかけたくなったのであった。


次回、裁きの鉄槌が黒幕共に襲い掛かる予定。

シグマ家と言えども万能でもなく、未然に防げないことだってある。

なので、防げなかった分解決した後に……

次回へ続く!!


このマスコットみたいになった手乗りクトゥルクラクパスの扱いどうしようか?元があんな化け物で、人に触れているとまたあのようなモノに変化する可能性があるからなぁ。


『触り心地がモチモチのすべすべ……ふわふわが欲しいところですね』

「魔法で毛を生やせないのか?」

「いや魔改造しないほうが良いんじゃないか!?」

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