#75
会談というけど、交渉話の方があっているのかな。
SIDE湖畔の古城
……バーステッド王国とデストロイ帝国の会談が始まって、今日の時点ですでにだいぶまとまっていた。
互いの輸出入の調整や、資源での援助、新たな資源採掘のための王国との技術共同開発。
互いに納得ができ、なおかつ国民にも納得してもらえるよう内容に仕上がり、予定より早く今日は会談がまとまって、明日には帰国できそうな状況であった。
「ふぅ、とりあえずこの内容で互いに戦争を回避できるようなものになりましたわね」
「ああ、これでこちらも開戦を唱えるような奴らを黙らせるようなものになったし、不都合はないだろう」
会談で内容をまとめ、互いに一息つくミルル第5王女と、皇帝カイザリア。
お互いにこの数日間の会談は疲労したが、満足できる結果になったと胸を張っていいはれそうであった。
「さてと、後は互に調印を結べばいいのでしたわね」
「王国と帝国、互いに手を取り合っていければいいとわたしも思うがゆえに、このような会談ができたことを、皇帝として感謝しよう」
にこやかに笑みを交わし合い、歴史にももしかしたら残るかもしれない平和的な会談が終わりかけていた……その時であった。
……ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ!!
「!?」
「なんだ!?」
突如として、大地が揺れるような振動をその場にいた王女と皇帝を含め、護衛の者たちも感じ取った。
「た、た、大変です皇帝陛下ぁぁ!!」
その場に、外を見張っていた護衛の一人が駆け込んできた。
「どうしたんだ一体!!」
「それが!何やら巨大な化け物が迫ってきているんです!」
《ギョアァオァオァオァオァオァオァオァオァオアァオ!!》
その護衛の叫びと同時に、何やら不気味な雄たけびが響き渡ったのであった……
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SIDEリース&アンナ
「何じゃありゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
『でかっ!?』
ちょうど同時刻、今日はカグヤが宿屋で寝込み、アンナが代理で護衛に来ていたところで、偶然その場に居合わせたリースと喧嘩になりそうになっていたその時、突如として見えた化け物の姿二人とも驚いて叫んだ。
いる場所は古城の外であり、みると湖の方から何かが飛び出してきたのだ。
その体の周囲は毒々しいような色合いの煙がまとわり、その見た目はタコのようなイカのような、それでいて頭の部分に大量の目がある不気味な化け物であった。
触手がウジュルウジュルとうごめき、ぬめっているのかてらてらした表面がまた気持ち悪さに拍車をかける。
『あれはまさか……!?』
ふと、アンナは本の姿になってその化け物を検索し、その正体を突き止めた。
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『クトゥルクラクパス』
クラーケンのようにも見えるが、全く別の凶悪性を盛ったモンスター。
毒を常に吐きだし、人の命を奪うような猛毒でありながら即死はさせず、12時間ほど体中が激痛に襲われながら蝕まれるという非常に凶悪な毒を持つ。
また、その触手は大木すら引き抜き、鋼鉄の鎧ですら砕き、生半可な剣を通さない強靭さを持ち合わせ、最悪のモンスターとしても考えられる。
水中には住みつかず、陸上にて活発に動き回り、漏れ出る毒で周囲を汚染することから別名「動く毒の海」とも呼ばれている。
休眠状態になる時があり、その時は小さな塊の石のようにしか見えず、しっかりと調べなければわからないという。
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『って、かなりまずいやつですよぉぉぉぉぉぉ!?』
ほぼ災害を引き起こすレベルのモンスターであり、しかも毒とかもまき散らす最悪な奴である。
しかも、脅威なのはその猛毒だけではない。
ひゅるるるるるるるるるるるるるる!ずぅぅぅぅぅん!!
何かが勢いよく飛んできて、一気に古城周辺を取り囲んだ。
湖にまだいるクトゥルクラクパス本体よりも、その驚異的な長さの触手……イカで言うなら触腕と呼ばれるであろう部分が伸びてきて、周辺の退路を閉ざしたのだ。
空を飛べるものならばまだ逃げようがあるかもしれないが、その触手からブシュ―っという音ともに、毒々しい霧が噴き出てきたのであった……
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SIDEあわれな故人
『高額報酬を約束しよう』
その言葉に乗ったのが間違いだったのかもしれない。
貧しく、争いが絶えなかったスラム街にて、そこで一番足が速かったあたしに来たその依頼を、受けなければよかった。
指定された場所へ行き、そしてその場所にある湖の中へ荷物を投げ捨てるだけの簡単な仕事。
高額な報酬がもらえると聞いて、そのせいで欲を出して、何が起きるのかを考えなかったのが悪かったんだろうねぇ。
依頼を出してきたのは、どこかの家のお貴族様。
スラム街にほとんど訪れることがなく、来たとしても八つ当たりや憂さ晴らし、もしくは汚れ仕事を押しつける連中だったのに、渡された金額を見て金に目がくらんでしまった。
お金なんかよりも、自分の命の方が大事だったというのに……
ああ、荷物を湖に投げてすぐに、何か巨大な化け物が現れたよ。
腰が抜け、動けないうちにそいつは何かを辺りにまき散らし、あたしの体にそれが降り注いだ。
全身に物凄い激痛が走り、吐き気や頭痛、呼吸も苦しくなって猛毒だというのはよくわかった。
全身がものすごく痛いけど、だんだんその痛みが和らぎ、今あたしの命が燃え尽きようとしているのはわかる。
この湖の周辺は、聞くところによると観光地。
つまり、観光客もいるだろうし、この化け物に皆殺されてしまうのだろう。
……人生の最後に、とんでもない馬鹿をやらかしちまったよ。
こんなんじゃ、死んだとしても地獄逝きかな。
せめて、誰かあの化け物を退治してくれ。
あんなものを解き放ったままでは、命が尽きようにも死ねないのだから……
解き放たれたのは、猛毒をまき散らす巨大な化け物。
獲物が逃げられぬように退路を断ち、動けぬように毒をまき散らしていく。
果たして、この状況にどう対応していくのか……
次回に続く!!
猛毒、触手、巨体、頑丈……うわぁ、がっつりやばそうなやつが出たわー。知能があとどれだけあるのだろうかという事もポイントになるかな。




