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#69

本日2話目!!

ちょっと帝国側からの話です

SIDEデストロイ帝国



「ふむ、この夏にバーステッド王国との会談に加えて……初めて顔合わせをする弟の娘もいるのか」


 デストロイ帝国の王城にて、皇帝カイザリア・フォン・デストロイは、バーステッド王国から送られてきた書簡を読んでそうつぶやいた。



 現在、バーステッド王国との関係がやや緊張状態にあり、軍部では開戦すべきという意見が出てきている。


 できれば開戦を避けて平和交渉をしていきたいのだが、中々ことがうまい事進まないのが帝国の現状であった。





 デストロイ帝国が立地するのはバーステッド王国よりも離れた地であり、山脈という自然の防壁に囲まれた場所でもある。


 鉱山や森林資源などの利益があったのだが、近年は鉱山からの産出量の減少や、伐採調整をミスったためにしばらく林業なども思わしくない状況になっているのである。


 改善しようとカイザリア皇帝は新たな鉱山の発見や、林業に対しての肥料の改良・計画的伐採方法の見直しなどの打開策を出してはいるのだが、出来るだけ短い期間で利益を上げたいというモノが多く、長くかかる者はできるだけ避けたいというものあっちが、開戦をするように意見を出してきているのだ。


 貴族たちの中にも汚職などにまみれる人が増えてきており、その一掃も考えるとダースヘッド国王ほどではないとはいえ、胃痛するほどの心労は抱えていた。




 そこに今回、とある情報が帝国に入って来たのだ。



「まさかあの弟の忘れ形見がいたとはな……」


 カイザリアは、昔に処刑された自身の弟であるゼクトリアの事を思い出し、そうつぶやいた。



……ゼクトリア・フォン・デストロイ。


 カイザリアの弟であり、兄弟仲は良くて将来的に互いに国を支え合おうと約束していた相手であった。


 能力も高く、その手腕は今のカイザリア以上で国を栄えさせる重要人物だと思われていたのである。



 だが、その重要人物はある時を境に、人が変わったかのように狂いだし、そして最終的には断頭送りにして処刑をすることしかできないような事件を引き起こした。


 なぜ、そのような事に陥ったのかは今ではすでに判明している。


 当時、国の主要人物ばかりが堕落する事件が起きており、その裏にいた人物……あるサキュバスが原因だったのだ。



 

 復讐して、もう二度とこの国に近寄らせないようにとも一時期カイザリアは考えていたのだが、そんなある日突如としてその復讐の夢は途絶えた。


 ある貴族…今まさに会談予定であるバーステッド王国にいるとされる、世界最強な世界最恐の者たちの集団であるとされるシグマ家の、その当主の妻が肉片残さずに消滅させたというのだ。




 復讐をする相手が消滅させられたことにより、その復讐心は無くなり、そして今の皇帝の座に彼は君臨することになった。





 そして今回、その今は亡き弟がそのサキュバスとの間に作っていた子供が、会談の合間に訪問s塗るのだという連絡をもらったのである。



 帝国は念のためにその血縁者を調べることが可能な魔法を使用し、そしてそのことが事実だと理解した。





 ただ、その血縁者……姪にあたるものだが、どうやら王国の方で冷遇され、そのうえその父親としていた貴族が他の者たちに犯させようとすることまでわかってしまったのである。



 幸いにして、またしてもシグマ家の者が防いだという情報は、カイザリアをほっとさせた。


 弟の娘でもあり、自分にとっては姪にあたる子供の無事に素直に喜べたのだ。





 ただ、その事件を貴族たちは開戦に利用すべきではないだろうかと言いだしていたが、カイザリアは抑え込んで、今年の夏にバーステッド王国から送られてくる使節団と和平及び友好のための交渉をすることに決めて、そのうえで改めて審議をするようにさせた。


 表向きはその事だが、裏ではその忘れ形見にあってみたいという気持ちがあったのである。





「……ただまぁ、気になるんだよなぁ」


 その報告を読み直し、その個所を読んでカイザリアはつぶやく。


 その交渉に来る者たちに加えて姪がいるのだが、その護衛に……シグマ家の三男がいるという情報があったのである。


 姪の恩人らしいが、シグマ家の三男……カグヤ・フォン・シグマについても帝国はある程度の情報を仕入れていた。



いわく、幼きときより父と母の無茶苦茶な才能を受け継いでいる。


魂魄獣は神獣型であり、本の姿を持つそうだが人の姿の時は絶世の美女のような魔女だという事。


火炎龍(ファイヤードラゴン)達を従えることができ、その為に愛人として人となったものを仕えさせているという事。



 その他もろもろの情報が入って来たのだが、その人物が護衛として一緒にやってくるという事に関して、カイザリアは不安を覚えたのだ。




 今こうやって自分はあらかじめ情報を入手しており、失礼のないような態度を取ることは可能である。



 だがしかし、情報に疎いようなやつら……とくに、ここ最近増えているらしいその者たちのドラ息子共が何かをやらかしそうで、シグマ家を相手に喧嘩でも売ってしまうのではなかろうかとも危惧したのである。



 そして何よりも気になったのは……その姪がその三男に恋をし始めているらしいという報告であった。



 その事に関して、カイザリアは頭を悩ませるのであった……


 ある意味、ダースヘッド国王と似たもの同士である。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

SIDEカグヤ



 今年の夏に、王国と帝国の会談が執り行われることになり、裏向きではリースと皇族たちの顔合わせとなっているのだが……


「なんで俺はこの場所にいるんだろうか」

『まぁ、気持ちとしてはわからなくもないでありますよ。王女様含む世の中の女性の買い物は長いものと決まっているでありますからな』


 カグヤのつぶやきに、同意するかのようにミルルの魂魄獣であるナイトマンがその隣でそううなずきながら言った。


 現在、カグヤたちがいるのは首都にある服屋。



 服屋になぜ今さらと思ったのだが、この会談のついでにある事をしようと女性陣が盛り上がって、ここに訪れたのである。


 そのある事とは……


『カグヤ様、この水着はどう思いますか?』


 シャーっと、試着室のカーテンを開けて、水着姿のアンナが出てきた。


 が、その姿を見てカグヤは目を見開き、速攻で素早くカーテンを閉めた。


『ちょっ!?カグヤ様!?』

「あほか!!それほぼ紐じゃん!!」


 そう言うところは羞恥心を持ってほしい……そうカグヤは心の中でつぶやく。



 どうやら今回の帝国との会談場所だが、帝国にあるという大きな湖のほとりで開催されるようだ。


 そのついでなので、泳いでいこうとか言う考えに要ったらしく、皆で水着を買いに来たのである。


 会談が表向きの、リースの皇族との顔合わせが裏向きの、それぞれのメインのはずだが、いつの間にか湖で泳ぐことに話がそれたようである。




 その為、今こうして水着を買いに来たのだが……ちょっとは考えてほしい。


 頭の中に先ほどのアンナの姿を思い出し、煩悩を振り払うかのようにカグヤは頭を振った。




 そう言えば、この首都内でなぜ水着が売られているのかという事だが、この夏に海へ行く貴族が多いので、そこで買うのではなく、あらかじめここで買ってしまえという事で販売されているようなのだ。


 そのせいか、水着とはいえ値段が実はそこそこ高くなっていたりする。



「うーん、今までこういうのを付けた機会はなかったが……どうかな?」


 と、何やら困った声でリースが試着室からその姿を現した。


 もう女の姿のままでいるようであるが、流石ハーフサキュバスでもあるせいか、その体は何処か艶めかしい。


 でも、来ているのがワンピースで清楚さを出しているのでまだセーフか?


「良いとは思うけど……というか、リースの場合『完全偽装の才能』とかで服を変えられそうだが?」



 水着をわざわざ買わなくても平気なような気がするんだが。



「それは無理だね。あの才能は質感とかも変えるけど衣服ばかりはそのままのようなものだからね」


 見た目は騙せても、中身までは完全ではない。


 その為、普通の衣服を水着に変えて水の中に入ったところで、結局濡れるのは変わりないそうだ。


「いやでもそうじゃなくて、水着自体を変えるのはどうかな?」

「ふむ、その手があるのはわかるけど……やっぱり、偽物のような水着じゃなくて本物を着たいんだよ」


 そう何処か寂し気な感じで、リースが言った。


 今までの間ずっと男だと偽ってきたリース。


 そんな彼女としては、もう偽るような真似は避けたいのだろう。


「……そっか。なんかごめんなリース」


 そうポンッと、カグヤは彼女の肩を叩く。


「ふ、ふん!!わかってくれるならいいんだよ!」


 と、どこか顔を赤くして、リースは腕を組んでそう答えた。


 淑女教育を最近受け始めたようだが、まだまだ男のリースだった時の癖は抜けきってはいないようだけど……顔を何で赤くするんかね?



「って、あれベスタは?」


 ふと、この場に一緒に来ていたはずの友の姿が見えないことにカグヤは気が付いた。


「ん?あいつならさっき他の女子達に連行されていたぞ?」


 と、リースが指さした先には何やら人だかりが。




「た、助けてぇぇぇぇぇ!!」

「何を言っているのよ!!」

「転んで来たとかいうけど、乙女の柔肌を見ているじゃない!!」

「この馬鹿者―!!」



「……何をやらかしたんだろうか?」

「さぁ?」

「ああ、それはあの人がどうやら転んであそこにあった熟年用試着室に入り込んだそうですわね」


 いつのまにか水着を試着していたミルルが、カグヤとリースの間に割り込んでその疑問に答えた。


「さっき水着を選んでましたら、偶然その現場を見たのですわ。一応、偶然の事故とはいえ……」

「ああやって捕えられたと」


 哀れベスタ。



「それはそうとカグヤ?わたくしのはどうですか?」

「セパレートタイプのか…似合っているよ」


 くるりと回って見せるかのように言うミルルに、カグヤは素直な感想を出した。


「ありがとうですわ!」


 そうにこやかにミルルは微笑んだ。



『なんで私のはさっきのでダメでしたかねー?今度はいっそこのスリリングショットとか言うのを……』

「アンナはちょっと学習してよ!?」


 なぜ露出が多めの水着を選ぶのだろうか。


 思わずカグヤは頭を抱えて叫ぶのであった。


……水着回は数話後に再登場の予定です。ニャン太郎は猫なので、水が苦手というのもあるのでないでしょう。

なお、アンナがやけに露出が高い水着を選ぶのはカグヤに見てもらいたいというのもありますが、ハーフサキュバス的なものは一切なく、単純なセンスです。ちょっとリースやサラの存在に対抗しようと考えていたりもする。


ついでに、サラが登場していないのはそれなりの訳がありますがそれはまた後程……

水着回のためにちょっと今回案を考えてました。最終的な水着はどうなるのやら。

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