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#68

さてと、新展開スタート!!

 リースについての処遇だが、「男のエルソード男爵家嫡男」としての彼は去ることになった。


 家がつぶれたなどの説明もあり、その後始末によって家に帰ったという事になったのである。




 その後に、新たに「女」としてのリースが改めて編入するという事になり、彼女は自身の姿を隠さずに済むようになった。



……名前に「フォン・エルソード」が付いていないだけで、「リース」という名前だけは同じなのだがなぜか同一人物とは思われていないようである。


 というか、見た目だけなら美少女なので男子たちからの人気が急上昇したらしく、この学校内でトップを争う一人にされちゃったらしい。


 なお、学内美少女(・・)ランキングでということであり、一応年齢的には……


『私と争えないというのが残念ですね』

「少女と大人だからな。そこで争えないのが残念だ」


 うんうんと、互いにアンナとリースはうなずき合う。


 見た目での美しさならアンナも負けてはいないのだが、生憎カテゴリー的には「少女」に入れなかったそうだ。


 普段から仲が悪いはずなのだが、こういう争えない部分があると残念に思えるらしい。


……本当は仲がいいんじゃないか?






 エルソード男爵家にいた者として連座的な罪を危惧していたのだが、赤の他人という事を徹底的に貫いて、免れたのである。


 精々貴族から平民堕ちとなった程度であるが、最初の頃の貴族至上のような思想はないのでなじめているらしい。


 今は一応寮暮らしであり、男爵家の身分ではなくなり、保護者としては今回の騒動に関わったシグマ家が一時的に預かるようである。


 そのあたりのアフターケアを忘れないようにしているというのは流石というか、なんというか。


 

 ただ、ここで問題になってくるのはデストロイ帝国の皇族の血縁者という事実である。




 リースの母でもあるサキュバスによって別家に生まれさせられたとはいえ、魔法によって完全に皇族家の血縁者であると証明されたことは、帝国の方でもいつの間にか情報を得られていたらしく、その事での抗議文などが届いたらしい。


 帝国は帝国で独自の諜報網を持っているのだろうが……いつの間に漏れたんだろう。



 とにもかくにも、皇族の血縁者であり、現皇帝の処刑された弟の子供という立場はややこしい事にもなるそうなので、一度帝国へ向かう必要があるそうだ。



 戦争の火種の元として利用される可能性もあったようだが……とにもかくにも、向かって見ないことにはわからない。


 

 まぁ、現皇帝の姪のようなものだし、リース自身酷い扱いを受けることはないだろう。


 ついでなので、この夏にでもと早速訪問の予定が組み込まれた。


 表向きは、帝国との戦争回避のための平和会談。


 そしてその裏では、リースとその叔父たちにあたる現皇帝との面談になるようだ。



 なお、その会談だが……


「わたくしも向かうことになったのですわよね。第3王女姉様が行く予定でしたが、なぜか進められまして……」

「そして俺も護衛という名で一緒に向かう羽目になったんだよな……」




 昼休み、食堂でミルルとカグヤは互に話した。


 リースの真実については、王族であるミルルは聞かされている。


 あと、友人でもあったベスタとかは……ミルルに最初突撃告白しようとしたらしいが、なぜか瞬時に男と女のリースが同一人物であると直感でわかったらしい。


 

「それしても、リースがまさか女の子だったとは……畜生!!スラベぇと街にナンパに行っていた間にそんなことが起きていたとは一生の不覚だ!!」


 女の子であったと見抜けなかったのが、どうもベスタのプライドを傷つけたらしい。


 バンバンと悔しがるように机をたたくが、うるさかったのでカグヤは手刀で気絶させて黙らせた。


……気絶させただけであり、決して命は奪っていない。

 

 ついでに言うならば、そのナンパでベスタは全く相手にされなかったそうだが、魂魄獣であるスラベぇがモテたらしい。


 とはいっても、同型のスライムの魂魄獣にモテていたらしいが……それでも主よりも注目を浴びたようだ。



 なぜ主よりも魂魄獣の方が人気が出たのか……うん、ちょっとそこは同意できそうな気がするな。



 ベスタのその心境を、似たような境遇のカグヤは同意しかけていたのであった。




「というか、何で護衛で俺も一緒に行く羽目になるのやら」


 なぜか、その帝国への訪問に護衛としてカグヤが任じられたのである。


 まだ学生という身分であり、そもそも行く必要性が……あるのかな?


「ありますわ。シグマ家の者だというだけでも脅威になりますし、リースさんの一件での当事者だと聞きますから、その事での事情を話すような役割もさせられるのでしょう」


 ミルルがその理由を述べたが、カグヤとしてはとんだ巻き添えであった。



 当事者と言えば当事者だが、一体どこまで巻き添えにされるのだろうか……


「というか、リースも十分強いよね?」



 魔拳闘士の才能があるし、そもそもアンナとも制限があったとはいえ良い決闘をしていたのだから、特に護衛は必要なさそうなものだが……。


「貴族としての矜持とか、色々あるんだよ。まぁ、僕が要求したんだけどね」

「そりゃまた何でさ」

「そりゃ一度拳を交えているからその強さも分かっているし、この訪問の合間に……いや、今は言うまい」


 一瞬頬をリースは赤らめたが、言うのを止めたようである。




 だが、その変化に何があったのか目ざとく気が付いたのは、女性陣。


(……カグヤ様に近づこうとするならば、今度こそ徹底的に叩きのめしましょうかね?)

(なんででしょうか?なんかこう、言いようの無い不快感というか、もやもや感がありますわね……)

(愛人の立場としては何も言うまイ。強き雄に雌が引かれるのは自然の摂理だろウ)


 アンナはほおを引きつらせながら国際問題にならない程度の抹消方法を考え、ミルルはミルルでふと疑問に思い、サラは自分は従者と愛人の立場だからと考えているので今さら誰が来ようが余裕の態度であった……

カグヤに対するヒロインたちの感情(ネタバレもどき?)

アンナ:仕えるべき主であり、生まれる前から大切な人と感じている。時折なぜか無性に求めたくなるので抑えていたりする。

リース:最近恋心とやらを自覚。カグヤにあの一件で惚れたような感じだが、そうなれば必然的にアンナとの激闘確定。「訪問の合間に、出来れば距離を互いに距離を接近させたい」というつもりだったが、羞恥心が発動した。

サラ:愛人でス。今さら誰がかこようともウェルカム。最初の頃は責任感故にという思いがあったが、最近では徐々に本気で惹かれてきた模様。

ミルル:もやもや。最初は監視対象としていたはずが、友人として接しているうちに意識し始めた。背後には兄たちの裏工作もあったりするが、それはまた別の機会にでも……

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