閑話 少し昔のとある王家での会話
時期的には過去のほうが良いかなと
本日2話目です
……時期的には10年前の事である。
「……はぁ、胃痛が本当にひどいな」
「大丈夫ですかねお父様?」
バーステッド王国の王城にて、この日は珍しく王族たちが集まって夕食を取っていたのだが、国王ダースヘッドは胃のあたりを抑えてうめき、第5王女であるミルルはその様子を見て心配していた。
……この場にいるのは、現国王及びその子供たちである。
国王ダースヘッドとその妻である王妃イース、第2王子ラスター、第3王子マード、第3王女エルザ、そして第5王女のミルルだけであったが。
第1王子、第1,2,4王女はこの場にはいなかった。
なぜならば……
「すでに他国へ嫁いでいるからなぁ……たまには皆の顔が見たいものだ」
「他の王国とか帝国では、子供たちは王位継承争いなどで一生懸命なのに、ここでは起きないのだからいいことですよ」
ダースヘッドのつぶやきに、イースはうふふと笑いながらそう答える。
「いやその原因ははっきりとしているだろ」
「シグマ家の面倒は流石に僕らも手に余りますからね」
「お父様だけが本当に見れるのですよ」
「そうですわよね。そのことを考えると心労がやばいですわ」
王子及び王女たちは口々にそうつぶやいた。
……このバーステッド王国、兄弟姉妹が多いとその王位継承権争いが起きそうなものだがこの国では歴史上数回ほどしかなかったようで、その他では王位継承争いならぬ『王位押しつけ争い』が起きているのであった。
何しろ、この国にはシグマ家がいる。
国に使えているとはいえ、その行動は自由奔放で王家の意思に従わないことが多く、無理やり従わせようとするならば、手痛いという言葉では生ぬるいほどの報復が飛んでくるのが目に見えているのだ。
巨大な戦力とはいえ、戦争にもほとんど手を貸さず、裏切られた場合確実にひどい損害を組むるだろう。
その事を危惧する貴族とかもいたりはするが、表立って行動できず、密かに策略に嵌めようとすれば、逆にこちらが策略にはめられる。
他国からの勧誘もあったりするがなぜかこの国に仕えているからという理由でどこにもいかず、引き込もうとする人達がいたとしても、能力次第では逆にシグマ家に取り入れられる。
そんな問題児の塊のような家がこの国にある時点で、国王の心労は積み重なり、大変なものとなる。
その国王の辛さを見ているので、王位継承権争いが起きず、むしろ面倒ごとを押しつけようとすることが行われているのだ。
なお、過去には強制的に従わせようとした国王もいたそうだが、記録上、突然の事故死という事になったりしているのは……無理やりでは動かないというのを示しているのだろう。
そう言う前例もあったりするので、バーステッド王国からは王位継承争いによる醜い兄弟間での追い落としや犯罪者に仕立て上げると言ったことは怒らなくなっているのだが、逆に隙あらば国王の座につかせようと、王位継承争いよりもたちが悪い王位押しつけ争いが起きているのであった。
現国王ダースヘッドとしては、さっさと隠居して心労から改善されたいところだが、まだまだ継がせることができない状況である。
なお、王位継承権に関してだが性別を問わないようになっているらしく、王女でもなることは可能である。
「あー!!もう第1王子であったルーメン兄上がいたら王位を長男だからという理由で押しつけられたのにぃぃぃぃ!!」
その不満があるのか、つい王子や王女たちからそのような会話が出てきてしまった。
「兄上はある日突然書置きを残して去ったからなぁ……王位継承権を放棄しますとも書いていて、最近やっと得た情報だと、海を越えた他国の農村で兄上らしき人を見たというのがあるけど……乗り込んで連れ戻しに行くことができない場所だからなぁ」
「第1,2,4王女だった姉様たちもずるいですわ。他国へ自ら進んで嫁いでバーステッド王国とのつながりを強化して、それでいて政略結婚のようなものなのにラブラブの生活を送っているそうですもの」
はぁぁぁぁっつ……っと、その場にいた皆がため息をつく。
今どき、王家でここまで王位につくのを嫌う国があっただろうか。
そう考えると、ダースヘッド国王はまだ隠居が出来なさそうな現実に落胆するのであった……
そして現在。
第2王子「……最近さ、妹の第5王女のミルルがカグヤというシグマ家の三男を見張っているとか言うじゃん」
第3王子「でもバレて、今ではすっかりと仲良くなっているよね」
第3王女「だったらうまいこと行けばそのうち恋愛感情を互いに持つんじゃない?」
第2王子「そしたらうまい事行けば……」
第3王子・王女「「その人に国王の座を渡せるかも。もしくはミルルが女王として即位させられるかも」」
「「「よし!!ここは全力でサポートしよう!!」」」
……密かに、水面下でそのようなやり取りが行われていたという。




