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#66

本日2話目

事後処理及びその他作業その1ってところかな

SIDEリース


「……っ」


 ふと、リースは目を覚ました。


 頭がはっきりしない中、起き上ってあたりを見て見れば病室の中であった。


 個室ではなく、4人部屋ほどの病室のようだが……隣のベッドとの先は仕切られているようであった。





「……あれは夢だったのか?」


 自身の実の父親に、道具のように扱われ、まさに性的な意味で彼が連れてきた者たちに純潔を散らされそうになった時に、カグヤが助けに来たのをリースは思い出した。


 自分の格好を見て見れば、病院着で何もなかったかのように思える状態である。



 だが、夢ではないと宣言している存在がそこにあった。


『ちっ、やっと起きましたね』

「今舌打ちしただろ!!」


 ベッドの横にいたのは、カグヤの魂魄獣にして、リースにとっては同族嫌悪、馬が合わない相手のアンナがそこにいた。



 本の姿の状態だが、人の姿であれば確実に不満そうな顔をしていただろう。というか、本の姿でどうやって舌打ちをしたのだろうか。


 そしてその言動から、気絶前の出来事が夢ではないことをリースは嫌でも理解した。




 いやいやながらも話すアンナの説明によると、リースが気絶してから丸1日が経っているようである。




『まったく、私としては不本意でしたがリースさんの体に影響を及ぼしていた薬がどうもめんどくさい奴だったようで、その解毒剤を作製したりもしたのですよ』

「……解毒剤?」


 父親に何か薬を色々やられていたリースであったが、この目の前にいる本女(アンナ)の実力は認めているつもりでもあり、そんな彼女がめんどくさい奴だったという薬に疑問を持った。



『国家間禁止取引制限特殊薬品……通称はまあいろいろありしまして省きますけど、効果としては媚薬ですね。それもどぎつい奴で、サキュバス、もしくはその血があるハーフやクォーターなどにも効果が抜群とされています。解毒剤を作るにはその知識がないといけませんので、作るも一苦労でしたよ』


……あの部屋でいつの間にか漂っていたピンク色の靄のような薬品散布。


 それが何と国際的にも禁止されているやばい薬物だったのである。


「そんなものをくそ親父が使っていただと!?」


 その事実に、リースは驚く。


 露見すれば、まず間違いなくエルソード男爵家は息の根が止められる。


 下手すれば、その子供でもあるリースに罪を追わせられるほどの物凄くやばい薬物だったのだ。




『一応大丈夫ですよ。流石にそこまでとんでもないものになりますと、シグマ家の方でも動いたようでして、カグヤ様の友人であるリースさんには一切罪は及びません。それどころか、実の娘を目の前で純潔を散らすところを楽しもうとして、その上血狂いによってもう決闘とかうるさくなってきた馬鹿野郎がすべての罪を背負う羽目になります。この病院での薬物散布の時点で撃沈決定の様でしたけどね』


 元から法に裁かれることが決定していたところに加えて、さらにあのリースの父親、ゲトロアは罪を重くしたのである。




 動機は貴族であるというプライドが肥大しすぎたが故の暴走だったようだ。


『禁止薬品所持及び使用、実の娘に手をかけようとしたこと、襲わせるための男たちにもいろいろ賄賂を渡していたこと、病院での毒ガスとも言えるような物噴出、脅迫、拉致、監禁……その他もろもろさばききれないほどありますね』


 さらにここで追い打ちをかけたのが、リースの事実である。


 息子だと偽らせていたので、リース自身が襲われたことも婦女暴行などにあたり……


『そして驚愕の事実でしたがリースさん。貴女のあの父親であるエルソード男爵……あ、爵位剥奪でゲトロアでいいんでしたっけ。ゲボロア……汚物さんですが、あの人あなたの本当の父親でもなんでもなく、血のつながりが一切ないようです』

「……え?」


 そのアンナの言葉に、リースは驚愕する。


 あの父親が自身をサキュバスによって産まされたとは言っていたが……父親ではない?



『ちょっとこのページを見てください』


 っと、アンナが本の姿になって、普段はカグヤにしか見せないようなページをリースに見せた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「サキュバス」

別名「夢魔」と呼ばれる。モンスターとも、亜人とも呼ばれる曖昧な存在。女しかおらず、色欲まみれの人から精力を吸い取り、己の力とする恐るべき種族。娼館などに潜り込んでいたりもして、カモとした男性を虜にしてしまう。

互に愛し合う仲であるならばサキュバス自身が子供を産むのだが、愛のない色欲だけの関係の場合、最悪その相手とされた男が身籠るという。

生まれた子はハーフサキュバスとなり亜人に分類されるようなもので、愛されて生まれたのなら美しい光沢を放つ金髪に、愛のない男が生んだ者は、その家系では決して出ることがない髪色に独特の光沢を放つ髪を持つという。

また、サキュバスは同族嫌悪しやすく、ハーフだろうとたいていの場合仲たがいをしやすい。

正反対に「インキュバス」というのもいるが、こちらは草食系で隠居したご老人のような精神を持ち、ほとんど出現しない。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



……ここまでは、以前カグヤに見せたのと同等の記述である。


 だがこの時、さらに細かな説明があったことにアンナ自身も気が付いていなかったのだ。



『普段は一ページ表記でしたけど、次にも表記されていました』


 カグヤのガイド役でもあるアンナにとっては、この自分の身体で情報を伝えきっていなかったのは悔しい事であろう。


 だが、その事を受け止めて、リースにさらなる情報をアンナは見せた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――

また、『愛のない色欲だけの関係の場合、最悪その相手とされた男が身籠るという』という供述だが、その時に身ごもる子は相手とされた男の血を引いているとは限らない。サキュバス自身が嫌がらせで別の血を持つ子供を産ませることがあるのだが、それをされるという事はその男は将来的にも最低最悪の事をするのだと予言されたも同然である。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「この情報って……」

『わかったようですね。魔法で結縁を調べる特殊なものがありまして、念のために確認してみたところ、ゲボゲボ男爵……いやもう嘔吐物で良いですかね。その人とあなたとの血のつながりがないことを確認できましたよ。……それはそれで、別の問題(・・・・)が浮上しましたが』



 ぽつりとつぶやくアンナ。


 だが、リースとしてはあのくそ親父……あれとは血のつながりのない他人であったと判明したので、ものすごくうれしくなった。



「良かった……あの外道腐れくそ野郎のつるピカ禿げ肥満大魔神豚まんじゅうのような奴と、血がつながってなくて本当に良かった……」

『……なんかいろいろ詰め込んでますよね。気持ちはわかりますけど』


 リースのいいように、アンナは微妙にだが同意はできた。



 女としても、ゲトロアが許せないのは同じだからである。



「そういえば、カグヤは?」



 ふと、自分を助けてくれたあの友人の事を思い出し、リースはアンナに尋ねた。


 アンナは大抵カグヤのそばにいるのだが、こうしてリースのところにいるのは珍しい話である。



『カグヤ様ですか?そっちのベッドに寝てますよ』


 人の姿にアンナが戻り、シャッっと仕切りを開けて、隣のベッドを指さした。


「……何があったんだ?僕を助けに来てくれた時には何も怪我していなかったようだけど」

『秘密です。少々首を痛めましたし、あの部屋……一応薬物も漂っていましたので、わずかながら影響を及ぼしそうでしたので、解毒作業も兼ねて同室での入院ですよ』

「おい本女、お前が絶対何かやらかしているだろこれ」


 思いっきり目をそらしたアンナに対して、リースはジト目を向けたのであった。


 何しろそこには、首に厳重なコルセットがまかれたカグヤが寝ていたのだ。




……首をぐきぃっとやらかしたかのような、そんな感じにリースは見えた。


『一応ですね、これでもあなたを気遣ったんですよ?あの突撃した当初、どういう格好だったか覚えていますか?』

「どういう格好だったってそりゃ……あ」


 そこでリースは思い出した。


 気絶する前と言えば、衣服を脱がされて布一枚の状態であった己の姿を。


 そして、その姿をカグヤが見てもおかしくない状況であったと。



『安心してください、カグヤ様にほかの女の裸を見せないように首を曲げたんですよ』

「それであの状態になったのかよ!!……まぁ、それはそれで助かったけどさ」


 どうやら見られていないようでほっとリースは息を吐いた。



 病室で着替えをしていた時に見られたのはまだ事故だからいいとして、他者に襲われて脱がされた状態で見られるというのは、女心としては物凄い恥ずかしいのである。




(……って、恥ずかしい?)


 ふと、リースはその気持ちに気が付いた。


 助けられたときの安心感、自身の素肌を見られたことに覚える羞恥心……男の姿で生きてきた己が、これまでに抱いたことがなかった感情を覚えたのである。


 胸がトクンとなるような、高鳴るような、熱い気持ちのようなものが。


 羞恥心とは異なる、また別の感情が。



(……何だろうかこの感情)


 その感情をリースは不思議に思う。


 そしてその横では、そのリースが今抱いている気持ちの正体に感づいたアンナが、警戒心を強めたのであった。



『って、そう言えばサラさんはどこに……』


 忘れかけていたが、今回の功労者……リースの場所に連れて行ってくれたサラの姿がいつの間にか消えていることにアンナは気が付いた。


 そしてふと見れば、カグヤの布団がやけにくっきりと何かが入っているような状態になっているのである。



 めくってみれば……そこにサラがいつの間にか潜り込んでいた。


「……あ、バレタ」


 きょとんと、バレたことをつぶやくサラ。


 でもその恰好は……


『カグヤ様に何をしようとしているんですかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

「ちょっと!!病室で何を暴れようとしているんだ本女!!って、そっちはそっちで何をやらかそうとしているんだぁぁぁぁ!!」


 素っ裸で潜り込んでいたサラに対してアンナが声を荒げ、アンナにツッコミを入れつつサラの裸姿にリースは驚きの声を上げるのであった。



 なお、この数分後に病院長がやってきて三人そろって説教を受けたのは言うまでもない。


 病人がいるところで大声をあげたらだれであろうと説教を食らわせる。


 それがここ、首都にある病院の鉄の掟であった。

隙あらば、愛人の座を、確定へ……byサラ「別に正妻とかでなくていいんですヨ。なんか新たに加わりそうですし、その前にきっちりト……」

「でもヤらせはしませんよ!!そう言うのはカグヤ様の意思を尊重してです!!」byアンナ

「というか病人がいるんだからな!!」byリース


……アンナの話で、ぽつりと『それはそれで、別の問題(・・・・)が浮上しましたが』のセリフについては、次回に言及します。

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