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#64

ちょっとシリアスへ

SIDEリース


「……ん?」


 病室にて、明日には退院という事でリースが荷造りをしていた時に、ふと病室の扉がノックされた音をリースは聞いた。


 カグヤが来るとかいう話はないし、誰が来るとかいう話もないが……



 

 決闘場での爆破もあって、リース構えた。



 扉が開かれるとそこにいたのは……父親。



「くそ親父!?」

「誰がくそ親父だ!!ずいぶん口が悪くなったリースよ!!」


 リースの言葉にツッコミを入れつつ、いさめるかのようにリースの父親であるゲトロア・フォン・エルソード男爵がそこにいたのであった。







「どうしてここにいるんだよ!!」

「それは決まっておる!お前を家にもう一度軟禁して閉じ込めるためだ!!」


 リースの問いかけに、ゲトロアはあっさりとその目的を言ってのけた。


「‥・・・はぁ?」


 その言葉に、リースはあっけにとられる。


「お前が襲撃されたのは聞いておる。その襲撃者共はどうやら我が家を狙っているようでな、このままだと確実に殺される可能性もあり、そうなれば後継ぎが完全にいなくなってしまう。そのことを私は恐れているのだ!!」


 ……子供を失うのが怖い、跡継ぎがいなくなって家がつぶれるのが怖いという事だけであるならば、まだその言葉に乗せられている感情はましなものであっただろう。


 子を思う親の気持ちや、跡継ぎがいなくなる恐怖と言ったものであればよかったのだろうが……なんとなく、そう言う類の気持ちがないとリースは感じ取る。


 

「……ただ軟禁とかするだけならまだしも、何か企んでいないか?」

「実の父親に疑問を投げかけるとは愚かな息子……いや、娘か。思えば学校に通わせて、あのシグマ家の子供と決闘してから反発が一層強くなっているようだしな」


 言葉をごまかして話題を変えようとしているが、リースの勘は告げている。


 この目の前にいる実の父親は、もしかしたらとんでもなく馬鹿なことをしようとしているのではなかろうかと。



「ごまかすなくそ親父!!何を言いたいのかハッキリ言え!!」


 念のためにいつでもぶん殴って逃げられるように、リースは「魔拳闘士の才能」で拳に魔法を纏わせようとした時であった。


「……はぁ、愚かな娘よ。その利用価値をこの父が最大限生かしてやろうというのに、逆らうのか」


 そうゲトロアがつぶやき、胸元を何か探って……



カチッ



 何かのスイッチが押される音がした。



ブシュゥゥゥゥウ!!


「っつ!?」



 同時に、何かガスのようなものが父親から噴出され、病室内一杯に一気に広がった。


「なっ……こ、れ……は」


 体が一気に痺れ、リースは動けなくなった。


 どうやらこのガスは……痺れ薬のようなものらしい。


 眠気も襲ってきているところから考えると、眠り薬も同等なのだろうか。



「くっくっくっく……安心しろ娘よ。別に命は別状がない私には聞かない特別製の薬だ。次に目覚めたときにお前は……」



 そう不気味に笑う父親の声を最後に、リースは意識を失うのであった……





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

SIDEカグヤ



「っち!!遅かったか!!」


 リースの意識が失った同時刻、カグヤは病院方面から煙が出ているのを目撃した。


『なんか思った以上に馬鹿をやらかしているようですね。あれじゃほぼ立場が危うくなりそうなものですが……』


 アンナがその隣で本の状態で浮いて、その光景を見ながらそうつぶやく。



 当たり前だが、病人が他にも入院している病院で馬鹿をやらかせばその処罰は来るはずだ。


 そして、シグマ家からの書類で得た情報によって嫌な予感をカグヤは感じたのだが、時すでに遅し。


 病院から漏れ出ている煙を見て、カグヤは手遅れになる前に動き始めるのであった……


貴族というのは、たまにゆがんだ価値観や偏見を持つ者が居たりする。

全てがそうでもないのだが、それでもやはりどこかに狂ったものは存在するのだ。

血筋、才能、性別などに固執していたりする人たちがいるのだから……

次回に続く!!


そう言えば、「エルソード男爵家」なのに「ソード男爵家」と略してしまいました。

分かりやすさで省略するような言い方ですが……後日修正をかける予定です。言いやすかったのでついやってしまったことを、お詫び申し上げます。

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