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#60

意外に毎日更新できているけど、なぜそうするのかは自分でもわからない。

一日おきでもいいのに、何でやってしまうのだろうか……

これが噂に聞く仕事中毒(ワーカホリック)ってやつかな?

……決闘時の謎の爆発事件から2時間後。


 リースは都市の病院の方に搬送された。


 アンナが眠らせたやつらは、物凄く苦しんだ状態のまま縛り上げられて、しかるべきところへと連行されていった。


 起床したらすぐさま情報を吐かせるためのきつい拷問があるだろうが……


「この間の真実を話すようになる魔法をかけないのか?」

『あの魔法って色々と厄介なので禁術にちょっと近いんですよね。何もかもべらべら普通にしゃべってしまうんですが、それではあまり意味がないような感じもしますし、決闘の邪魔をしたしかるべき報いはきちんと受けさせたほうが良いと思っているんですよ』


 にこりと微笑むアンナだが、あの眠らされた奴ら……「悪夢の宴(ナイトメアパレード)」を喰らったやつらには十分すぎるような気がしなくもないとカグヤは思った。



 悪夢の後の、現実の拷問コース……どう考えてもオーバーキルである。



 とはいえ、友人(リース)が第三者の手によって負傷させられたことに対する怒りはあるので同情の余地はなかった。


 というか、アンナが魔法を使用してお仕置きしなければ、カグヤ自身が殴りかかっていた可能性が高い。


 シグマ家内で鍛えられた拳に、さらに「魔拳闘士の才能」によっての魔法を付与した一撃を叩き込まれることに比べれば……物理的にはまだましな末路であろう。


 精神的な部分?そこは知らん。


 なぜあのようなことをしたかについての詳しい取り調べは……まぁ、ゆっくりと行われるだろうな。






 とにもかくにも、翌日には治療が終わったようなので見舞いにカグヤは病室に訪れることにした。


 肉体的な部分は良いとして、蓄積したであろうダメージの事もあって3日ほどの強制入院とはなるそうだが……。



「リース、大丈夫かー」


 個室で入院しているらしいリースのところに、カグヤは返事が返ってくる前に病室の扉を開けた。


 アンナは本の姿の状態で、そのすぐ後ろをついてきている。


 男同士の友人だし、大丈夫だろうと思いながら、お見舞いなら定番であろう果物が入った籠を持って入室したのだが……



「え?」


 入室してすぐに、カグヤは目を疑って固まった。


 そこには、病院着を着替えているリースの姿があったことはあったのだが……






 リースの髪色は、薄い青色のはず(・・)で、短髪なのである。


 しかし、そこにいたのはリースの顔をしていたものの……



「へ……?」


 顔は同じ……というか、ちょっと女の子みたいな感じになり、その髪は腰にまで届くほど長くなり、髪色が白色に近いような銀髪となり、その目も赤く染まっていた。


 着替えていたのか上着を脱いでおり、背を向けてはいるが、胸のあたりで何かはみ出ているような……




 そのまま互いに数秒ほど固まって、時間が停止したかのように両者ともそう感じられた。


 そして、すぐさま我に返ったのはリースのほうであろうか。



 はっとしたような表情を浮かべた後、表情がものすごく真っ赤になって……



(……見た?)

(……はい)


 アイコンタクトでの簡単な応答の後、次の瞬間にカグヤの目の前にはもう爆発寸前じゃないかというほど顔を赤くして、何やら揺れているものを片腕で見えないように抑えながら、もう片方の拳を振るおうとしているリースの姿があった。


「何をまじまじと見ているんだこみょ野郎―――――――!!」

「じ、事故だからぁぐぼぅっ!?」

『……あー、流石にカグヤ様でもこれはちょっと止められませんね』



 久しぶりに怒って舌を噛んでいるリースの声が聞こえつつも、カグヤはその拳をよけようとしたが、回避叶わずそのまま顔面に、「魔拳闘士の才能」によって強化された一撃を喰らったのであった。


 リースの羞恥心をアンナは理解しているのか、あえて防ぐつもりはなかったようである。












「で、ひょんちょうに(本当に)りーひゅだひょうね(リースだよね)?」

「ああ、たしかに僕はリースだが……その、なんかすまん」

『カグヤ様、今ちょっと治療のための魔法をかけますね…………っと、これで大丈夫です』


 アンアの治療によって腫れが引き、何とか治ったカグヤは直ぐにリースに説明を求めた。


 その姿はいつもの容姿に戻っていたが、なぜ先ほどはあの女の子にしか見えない姿だったのか。


……というか、横からちょっと見えたってことは案外大きかったようである。


 って、煩悩退散しろ!!




「もしかしてリース、今までの姿は変装だったのか?」

「っ……ああ、その通りだと言いたいが、ちょっと違う。僕の持つ才能の一つ、『完全偽装の才能』を今まで使っていたのさ」

『「完全偽装の才能」!?それって人が目覚める才能の中でもめずらしい奴じゃないですか!!』


 リースの言葉に、アンナは直ぐにその才能が何かわかったようで、本の姿のままページを開いてその詳細を浮かび上がらせた。


――――――――――――――――――――――――――――――――

「完全偽装の才能」

有機物だろうと無機物だろうと、何かを全く別のものに見せることができる才能。

たとえば、その才能を使えばただの石を宝石に見せたり、自身の容姿を全く別の者に偽ることが可能な才能。ただし、一つにしか使えず、複数に展開することは不可能ではないが、それなりの努力が必要となる。


―――――――――――――――――――――――――――――――



 つまり、リースは今まで己の性別や容姿をこの才能によって偽っていたことになる。


 学校に入学して5年もたつが、その間ずっと、誰にも気が付かれないように……




 ただ、そこで疑問になるのはなぜそのような事をしたのだろうかということ。


 そして、今回の事件はどうやらリースを狙ったようなものであり、なぜそうなったのかという事。



 その二つの事について、理由と事件の心あたりをリースは語り始め……


『あ、何かまずそうな話のようですので、一応「認識阻害」「防音」が可能な魔法をかけておきますね』



 アンナがそう言って魔法をかけて、誰にも聞かれないように改めてリースは語り始めた。



 リースの実家の当主……彼、いや彼女の父親であるソード男爵の醜聞と、狙われた可能性として考えられるその予測を……




その口から語りだされるリースの人生。

彼、いや彼女が語るのは隠されたソード男爵家の醜聞と考えられる様な事。

そして、狙われた原因である予測。

果たして、何が語られるのだろうか……次回に続く!!


予想できていた人はいるだろうけど、こういう展開もたまにはいいかな。アンナと対立しがちな理由もついでに判明させる予定である。

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