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#59

誰にも何かしらのこだわりはあるのですが……

SIDE???


ドッカァァァァァァァァァァァァァァァァアン!!



(……よし、無事に起爆できた!!)


 舞台の爆発を見て、外部からの観客が座る席でその者たちはその様子を見ていた。



「なんだぁ!?」

「いきなり舞台が!」

「爆発って何があったの!?」



 決闘をしていた両者の様子を見ていた観客たちは、今の爆破がその決闘者たちのモノではないことを理解し、その爆発に驚いて慌てふためいている。


(これで任務は完了だろうが……本当にできたかを確認したいな)


 慌てふためく観客たちに混じって、同じように動揺するふりをして、その者たちは本当に自分たちの計画がうまくいったのかを確認しようとしてた。


 



 煙がはれ、舞台の様子があらわになり……



(……なんだと!?)


 その様子を見て、その者たちは驚いた。


 爆発のあった場所に近い場所にいた決闘者のうち、飛び散る破片や爆発によって目的の人物が倒れているのは確認できた。


 ただもう一人、爆発に近い場所にいたはずのもう一人の決闘者は……傷一つついていない。


 自身の体を覆うように、何やら球状の膜のようなものが展開されており、守っていたようである。



 今の爆発は、彼らにとっては近くにいるだけでも二人ともまとめてぶっ倒せるとは思っていた。


 だが、片方が予定通りに出来ても……もう一人の人物にはまったく効果がなかったようである。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

SIDEカグヤ



「アンナ、リース!!無事か!!」


 慌てて司会席から舞台にまでカグヤは移動して、二人の安否を確認した。


 土煙がはれると、爆発のすさまじさが見て取れる。


 舞台が爆発のあった場所を中心に吹っ飛んでおり、その破片があちこちに散乱していた。


 幸いなことに、観客席の方は決闘場の保護システム上その破片は届かなかったようだが、最悪なのは舞台の上の、爆発に巻き込まれたアンナとリースの二人である。




 そしてその二人の姿が見えてきた。



 リースはある程度拳とかで破片を防いでいたのだろうが、細かいモノまでは対応できていなかったようで、傷つき舞台に倒れていた。


 一方、アンナは……


『……』


 全くの無傷である。


 何かこう、バリアーみたいな魔法で自身は守れていたようだが、その表情はいつもの明るい顔ではなく、どこか厳しい顔である。


 怒っているような、そんな顔で……





 リースを一瞥し、観客席の方をアンナはじっと見た。


 そして、何かをつぶやく。


『……決闘の邪魔を、その上カグヤ様に不安にさせるようなことをさせましたね』


 アンナのその声は小さく、それでもその決闘場の場所にいた者たち全員がはっきり聞き取れるほど、その上深い怒りを感じられるほどのものであった。


「あ、アンナ?」

『別にそこのリースさんが傷つこうが、まあそれはどうでもいいです』


 何気に結構ひどい一言を放っているが、言葉に何か感じとれる重みに誰も動けない。


……カグヤは動けているのだが、その迫力が普段の彼女とは違った物であるのが原因だろうか。



『どうでもいいことはどうでもいいのです。イライラさせるし、馬が合わないし、突っかかってきますし、入学当初にはカグヤ様に決闘をしてくる問題児ですし……ですが、それでも決闘というのは公平な場であり、その場で行うのは正々堂々とした真剣勝負だと私は思っています』


 そう言いながら、観客席の方にアンナは顔を向け、そして何かをにらみつけながら問うような表情になる。







『……その正々堂々とした真剣勝負の場で、何を企んでいるのかは知りませんけど、水を差されるような真似は……』


 魔法陣がいくつも現れ、アンナはすでにその犯人を特定したのか、照準を合わせているかのようだった。


 その顔は、せっかくの勝負の場に邪魔をされた事への怒りか、それとも正式にリースをボコボコにできそうだと楽しみにしていたのを邪魔された事への怒りか。






「ひぃぅいぃっつ!?」

「ば、ばれているだと!?」

「おうぅ!?」


 アンナの狙いと、その怒りにおびえたのか、静まり返っていた観客席で震え、慌てふためく者たちが出た。


……それはすなわち、自らこの舞台の爆発の元凶だと語ったようなものである。



 その者たちにアンナは魔法陣を動かし、照準を固定したようであった。


『……真剣勝負への水を差すようなまね、それははっきり言って私は大っ嫌いなんですよ。そして、その決闘の場を荒らし、我が主でもあるカグヤ様に不安をかけさせたその罪を……後悔しても遅いですがきちんと自覚してくださいね?』








『「悪夢の宴(ナイトメアパレード)」』







 ぱちんと、アンナが指を鳴らし、魔法が発動して……その元凶と思われる者たちはその場に倒れた。



 



『……今の魔法は、ほんの1日限定しか効かない魔法です。何しろこのことに関しての取り調べがあるでしょうし、いつまでも寝ていては困るでしょうからね。けれども、たった1日でもその夢は1年にも、100年にも、1000年にも感じられる様な悪夢をお届けします』



 もう聞こえていないであろう元凶たちに、アンナは微笑む。


 美しい魔女だが、怒らせるととてつもない恐怖を与えてくる。



 この日、学校内で密かに『最恐の魔女』として噂が流れるようになるのだが……そのことを聞いて、アンナが恥ずかしがったのはまた別のお話。



 あ、リースの事を忘れていた。さっさと手当のために動かないと……

悪夢の宴(ナイトメアパレード)

・アンナが創り上げた夢に干渉する魔法の中でもかなりヤバイ魔法。

・効果時間は1日しか持たないが、その1日の間に見る悪夢は100年、1000年にも感じられるという。

・なお、発狂など精神的な異常は引き起こせないようになっていますので、取り調べの際に支障はおそらく出ないでしょう。


「アンナにも決闘に対するこだわりってあったんだ」

『そりゃありますって。こういうのは正々堂々互いの力を出し切るのが良いと思っていますし、ずるとかは許せないんですよね。何せ前世の魔女時代では本当にイラっと……』

(あ、なんかまずかったか?)

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