#55
日常的な感じが多いけど、これってあくまでのんびり進める話だからなぁ。
「ぐぬぬぬ……」
『ぬぅぅぅ……』
初夏となり、夏休みの時期が近付いてきた学園の食堂にて、リースとアンナは互いに睨み合っていた。
周囲の者たちはまたかともう慣れたかのような様子であり、カグヤやミルル、ベスタにサラも同様の見守る様子。
そして、リースの魂魄獣であるニャン太郎は、逃亡しており、ミルルの魂魄獣であるナイトマンは気にせずに皆に飲み物を勧め、ベスタの魂魄獣であるスラべぇは二人の気迫に押されて縮こまっていた。
「毎度毎度思うけどさぁ……何でこの僕が本女とつっかからなきゃいけないんだと思いたくなるよ!!」
『同意ですけど、なんか不快ですね!!』
互いに口論しあう二人。
何かとよく正面衝突しあって口論になりやすく、犬猿の仲を超える例えに使えるのではないだろうかとも言われていた。
いつもいつもお互いに何かとぶつかり合うが、今日はまた一段とひどい状態なのは訳があった……という風には言えないのかもしれない。
ただ単に、たまに人には虫の居所が悪くなるような、不機嫌な日というものがある。
そして、今回偶然にも互いにやや不機嫌な状態である日が一致して、今の睨み合いへと発展しているのであった。
「大体なんだよ!!僕の魂魄獣のニャン太郎をことあるごとに捕まえ、撫でまわしまくっていろいろやっていじめるし、わからんようなつかみどころのないような感じが苦手なんだよ!!」
『こっちだって、貴族家の当主を継ぐ予定の人だと言っても、最初にカグヤ様にプライド……ああ、ゴミみたいなと言ったほうが良いのでしょうけどそれで喧嘩を売って来ている人には言われたくないですし、なんかこうどこかで人を見下していうような相手が嫌いですよ!!」
ぐぎぎぎぎぎっと、互いににらみ合うリースとアンナ。
喧嘩をするほど仲がいいと言うが、この状況はどう見ても仲がいいようには見えない。
見た目が結構良い男女なので、互いに好意を抱いているような色恋沙汰にも思えるかもしれないが全くそうとは感じられないだけの衝突しあう気迫はすごい。
「魔拳闘士の才能」のせいかリースの手足に魔法のようなものが纏われ、
大魔法使いとしてかアンナの周囲には大量の魔法陣が浮かび上がる。
「こうなっているし……」
『互いに闘志は十分ですよね』
「だったら!!」
『この際白黒はっきりつけるためにも!!」
「『いざ尋常に決闘を申し込む!!』」
リースとアンナは、互いにどこからか白い手袋を取り出し、投げ合って受け取る。
この日、因縁のライバルというか、犬猿の仲同士の決闘が起きることが決定したのであった。
「……というかさ、魂魄獣と人とで決闘って成立するのか?」
「するんだよ!!」
『決闘というものは、互いに意志さえあればやるんですよ!!』
ふと思った疑問をカグヤが尋ねると、こういう時だけはリースとアンナは声をそろえたのであった。
カグヤのサポートをするはずのアンナが、自ら騒動を引き起こすのはどうなのだろうか?
そしてリースの実力は、カグヤとの決闘の時に比べてどれだけ鍛えられているのだろうか?
魔拳闘士VS大魔法使いの決闘が始まろうとしていたが……まぁ、そんな決闘だけで済むのかなぁ?
「巻き込まれの才能」ってこういう時にこそ真価を発揮しそうである。




