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#54

ある意味恐ろしいと言えば恐ろしい事である。

『あれがこの国の教皇バッカーノ&巫女クーゼッツイですね』

「典型的な自滅野郎にしか見えないな」

「薄汚れた気持ち悪さがあル」


……カグヤたちは、魔法陣を少々改造した後にしばし潜んでいると、今いるブァーデリテ聖教国のトップに立つ者たちがその魔法陣の元へ歩み寄っていた。


「うん、全く魔法陣が改ざんされていることに気が付いていないや」

「自分たちで書いたものなのに気が付かないのですカ?」

『多分よく覚えるだけの知能がないかと思われますね』


 気配をひそめつつ、陰からその様子を見るカグヤたち。




 そうこうしているうちに、どうやら教皇と巫女は魔法陣を起動させるようである。


 魔法陣が輝きだして、今にも何かが出そうだが……


「確か改ざんしたから異世界から人が来る事はないんだよね?」

『はい、召喚できないようにしていますし、単純なものにしているのですがこれがまた面白いことになるでしょう』

「楽しみ楽しミ」


 ニヤニヤとしながら、カグヤたちは魔法陣が完全に発動するのを見つめる。




 カッ!!っと光った後……国中に何かが広がったようにカグヤは感じられた。




「どういうことだ……何も出ないではないか!!」

「おかしいわね?」


 教皇と巫女はどうやら何も起きていないかのように思えているようで、混乱しているようだ。


 だが、きちんと魔法陣は発動しているのだよ。


 範囲はこのブァーデリテ聖教国全体にしているし、すぐにでも効果が分かるだろう。




「た、大変です豚まんじゅう教皇と腐れビッチ見込野郎様!!」

「『「ぶっつ!?」』」


 その効果がどうやらしっかりと出ているようで、いきなり部屋の中に飛びこんできた教皇の部下らしい人のその言葉に、カグヤたちは思わず吹き出しかけた。



「な、何を行き成り罵倒するんだこの屑がぁ!?」

「腐っているのかしら!?いや何で口からこのような言葉が!?」


 教皇と巫女が口々に、今は言ってきた配下に対して言葉を嘆かけたが、こちらも口が相当悪いことになっている。



「な!?なぜそこまでひどい言葉を言うのですか無能な人たちは!?」

「お前こそひどいことを言っているぞごみ野郎!!」

「ひ、ひどい、こんなにも可憐なか弱きイケメン好きの私の言葉を変えるなんて!?」

「「何をいっているんだこの(自主規制)!!」」




……ひどい罵倒が始まった。だれもかれもが自身をさらけ出して、普段思っているようなことを言っているようである。


 というか、報告聞かなくていいのだろうかあのバカ共は?





 こっそり外に出て見て耳を澄ませると、あちらこちらで大変なことになっているようであった。


「うわぁぁぁ!?借金を重ねているのがばれたぁぁぁ!?」

「あんた!!今まで仕事でとか言っていたくせに、全部娼館とかに貢いだとかいっとぁね!!」

「8股もしていたのかこの尻軽が!!」

「誰が都合のいい資金源だ!!」



「……すごいことになっているな」

「皆普段から思っている事だけを言っているのでしょうかネ」

『この魔法陣って本当は尋問用なのだけれども、範囲を広げすぎたかしら?』


 その様子を見て、カグヤたちは呆れつつも、心の中で思ったことを思わずつぶやいた。




……そう、実はあの魔法陣は召喚用から、特殊な効果を周囲に及ぼすように改ざんさせてもらったのである。


 範囲はこのブァーデリテ聖教国全体であり、すでに皆混乱に陥っているようであった。


 改ざんして作り上げたのは……「真実の魔法陣」というものである。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「真実の魔法陣」

効果:心の中で普段から思っている事や、秘密にしていることをすべて暴露してしまう。ついでに汚職している証拠や、心の不満でさえもが同時に噴出する。

本来の使用方法:尋問用で無効化不可能。ただし、精神的に訓練されている人には効果が薄い。また、正直者も効果がほとんどない。心が穢れている人ほど効果は非常に高くなる。

範囲設定:ブァーデリテ聖教国全体。

効き目が切れるまで:半年

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「半年も持つのか?」

『元々異世界の人を呼び出すだけのエネルギーがあったので、それをすべて消費するまでを計算に入れるとそうなりますね』

「恐ろしい魔法だ……、さすが父も驚愕した魔女でもあル」


 アンナの説明に、サラが畏怖したようである。




……人というのは、すべてが正直もというわけでもない。何かしら隠していることもあるだろうし、関係を壊さないように嘘をついていることもあるだろう。


 だが、今回使った「真実の魔法陣」はそのすべてをさらけ出させる効果がる。


 ならば、使用したらどうなるか?



 その答えは今まさにこの国中で起きていることである。


 というか、どれだけいろいろやっていたんだよ。




 効果範囲はブァーデリテ聖教国のみなので、何かやましいことがある人は出ていけば隠せるだろう。


 しかし、出ていこうにも……この混乱では不可能である。



 関係ない人を巻き込んでいるかもしれないが、まぁ、その怒りは教皇とかに向かうように調節もしているので、これから政変というか、ブァーデリテ教にもいろいろと改革などが出てくるだろう。






 とはいえ、むやみやたらに使用してはいけない魔法陣らしいで、使用するのは今回っきりである。


 欠点もある事だし、完璧ではないからなぁ。


 ついでに自分達にも効果が及ぶので、何か余計なことを口にする前にカグヤたちはとっとと帰国するのであった。


「そういえば、魔法陣が壊されたらどうなるの?」

『あ、このタイプのは効果が切れるまで残りますので、壊れても大丈夫な奴です。魔法陣とひとくくりに言っても、結構ややこしいんですよ』

「なるほど……夜這いの邪魔をする堅物魔女だけどその知識は優れているのですカ……」

『効果は私達に及んでいますが……何を言っているんですかこの(自主規制)!!』

「そっちも私が(自主規制)で(自主規制)をしようとしているのに邪魔するじゃン!!」

『普段からそう考えている時点で(自主規制)』


「・・・・・・二人とも、言い争うのをやめてくれない?」


 魔法陣の効果をばっちり受けているようなアンナとサラの言い合いに、カグヤは内容が聞こえて顔が赤くなりながらも二人をなだめるのであった。


「後日談」

教皇と巫女は破門決定、余罪多くてさらに処分決定。ついでにブァーデリテ聖教国のあり方や、ブァーデリテ教その物に異議を唱える人たちが出てきて、大規模な政変が起きる。

そしてしばらくの間真実が聞ける場所として、互いに愛を確かめ合うカップルの目的地としても有名になるのであった。


……人は誰しもがなにかしらの秘密を抱えている。簡単に暴露してしまうのは、それだけ恐ろしい者なんだよ。世の中には、単純な人や秘密を隠し持っていない人がいるとはいえ、少ないからね。

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