#53
ちょっと内容短いか?
ブァーデリテ聖教国の異世界召喚魔法陣の破壊をせよ!
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「……って、目的だけどどこにあるんだろうか」
『神からの情報だと神殿ですね。あそこにある建物の内部だそうです。内部構造はすでに調べていますので、侵入ルートの案内をいたします』
「うーん、いまいち悪趣味」
サラに目的を説明し、とりあえず魔法陣の破壊という事を理解してもらったところで、カグヤたちはその魔法陣があるという神殿へ向かった。
ブァーデリテ聖教国は島国であり、本来であればもう少し活気があったらしい。
だが教皇が代替わりをして、巫女とやらも何やら怪しくなって現在国がやや混乱の荒れている状態らしい。
「腐っているのはどのぐらいの規模かな」
『この国の政治形態は政教分離していませんからねー。おそらくですが、教皇及び神官、そしてその巫女も腐っている可能性がありますよ』
出来るだけ目立たない様にカグヤたちは気配を消しながら神殿へと向かう。
その合間にすれ違う人たちの様子を見るが……若い人が少なく、やる気がないようにも思われる。
『情報ですと結構ひどいようで宗教という名の免罪符を振りかざしていますね。その神なんていないのに……』
「虎の威を借る狐みたいな感じか……」
「空気がよどんでいるというか、居心地悪いですネ」
サラがぽつりとつぶやいたが、確かにどこか居心地が悪いようにカグヤたちは感じた。
神殿内部に侵入をするのだが、うかつに見つかって下手な外交問題に発展してもまずい。
「というわけで変装だけどさ……アンナ、このお面は?」
『仮面舞踏会に使用されるようなものです。とは言っても、魔法でそこいらの家の壁を少々拝借して……』
「良いのですかネ?」
とりあえず、ごまかしとしてアンナが作ったお面をカグヤたちは装着した。
アンナは本の姿のままだが、ブックカバーを適当に作って装着済みである。
内部に入ると、そこそこ警備は敷かれているようだが、アンナの案内で手薄なところを突き抜けていく。
『そこの角を右に進んだ後、階段がありますが40秒ほど物陰に隠れて、降りてくる騎士たちをやり過ごしてください。駆けあがってすぐ右へ向かい、進んで3番目の扉に入って……』
本当に便利なガイド役である。ナビゲーションシステムのような気もするが、とにもかくにもこの状況でならありがたい。
指示通り向かうと、どうやら目的の場所の前まで来たようだ。
『この扉の向こうに魔法陣があるようです』
「適当に破壊すればいいんだっけ」
『はい、それだけで魔法陣は精密すぎるがゆえに二度と動かなくなるようですが……』
ふと、アンナが声を止めた。
「どうしたアンナ?」
『……そうだカグヤ様、少々思いついたことがあるので聞いてくれませんか?』
「思いついたこと?」
「一体何ヲ?」
アンナが何かを思いついたようであるので、カグヤとサラはその案を聞いてみた。
『~~~~っと、言う方法を取れば面白おかしなことになるのではないかと』
「なるほど、いいなそれ」
「よどんでいるような空気ですし、その手は面白そうですネ」
アンナの案を聞き、その場にいた皆はニヤリと笑みを浮かべた。
せっかくここまで来て、ただ単に魔法陣を壊すだけというのももったいない。
壊す方向よりも、もっと別の方に生かしてはどうだろうか。
ゼロから始めるよりも、ある程度下地が整っている方が楽だから……
「でもアンナ、その方法だと神に色々言われないか?」
『問題ないです。破壊の方を願われましたが、要は異世界召喚をできない様にすればいいので』
「効果を変えちゃえばいいからネ」
こういうことに関してはアンナの方が適任である。
本の姿からアンナは人の姿へとなり、魔法陣のある部屋に入って……
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SIDE教皇&巫女
「ぐふふふふふ、これで後は魔法陣を起動させるだけでいいのか……」
仕事をさっさと終わらせたブァーデリテ聖教国の教皇バッカーノはニマニマと笑いながら、魔法陣を起動させようと、魔法陣が描かれている部屋に入った。
「ふほほほほほ!!これで間違いなく異界の者たちを召喚できるのですわぁぁぁ!!」
その横には、巫女であるはずのクーゼッツイが同じような笑みを浮かべてべったりとくっ付いていた。
彼らは……簡単に言ってしまえばこの国の宗教で、腐敗をさせてしまった中で生まれてしまった者たちである。
長い長い年月の中で、着実に最初の教えすらも忘れて、欲望に赴くままに動くようになってしまった二人。
そんな彼らが今回、異世界召喚という方法を取ったのはくだらない理由である。
そう、己の欲望を満たすだけのあさましいようなそんな考えで魔法陣を創り上げたのだ。
「これで、異界の美女を呼び寄せられればいいのだがな」
「ふほほっほ!!女でなく男であるならば私がいただきますけどねぇ!」
「ぐふふふふ!!そう心配するな。最近わたしはあっちの性癖も目覚めたからどっちも来ても大丈夫だ!!男であろうと女であろうと美男美女であるならば楽しめるのだよ!!」
「流石にそこは引きますけど、まぁいいでしょう。さっさとこの魔法陣を起動させるのです!!」
……この部屋にいるのは、この教皇と巫女だけである。
腐敗してきた宗教とはいえ、荒唐無稽のような召喚をやろうと思いついたのはこの二人だけであり、こうして実行に移すまで彼等だけで切り盛りしていたのだ。
もし、これで成功すれば他の腐敗している者達にも与え、懐柔しやすくなるなぁ‥‥と、教皇と巫女は考えていた。
だが、彼らはよく魔法陣の状態を見ていなかった。
これで出来ると思い込んでいたのだが、いかんせん偶然故に生まれたものであり、いちいち細かいことを覚えていない二人。
その事により、彼らは気が付かなかった。
魔法陣の数か所ほどが、書き換えられていたことを。
その効果が異世界から人を呼び寄せるものから、全く別の効果へと変容していたことを……。
……アンナは大魔法使いであったので、魔法陣に関しての知識は豊富である。
ただ破壊するよりも、下地ができているところから改造する方が楽なんですよ。
でも、一体どういう効果にしたのだろうか?




