#51
主人公、微妙に不在回
SIDEアンナ
学園は本日、休日でもあり、寮のカグヤの部屋でカグヤたちはいつもより少し睡眠をむさぼっていた。
そんな中で、カグヤが寝ているベッドのそばで、本の姿のままふとアンナは目を覚ました。
『…なんか懐かしい夢を見ましたね』
夢には、かつて過去の自分が魔女の道を歩むまでの思い出が詰まっていた。
その夢の内容で、よく考えたらいろいろ思うところがあったのでそこについて思い出してみていると…
ギィッ…
『ん?』
ふと、部屋の扉の開く音が聞こえたのでアンナはその方句を見た。
そこにいたのは、灼熱のような燃え盛る赤色が目立つ人物…最近カグヤの下に、滅ぼされないための人質のようなものとして愛人や側室として火炎龍たちから数日前に送られてきたサラであった。
「ここで既成事実を作って、本当に滅ぼされないための絶対安全なポジションを確保しなけれバ…」
そうつぶやくサラの言動と決意している表情から、アンナはサラが何をしようとしているのか見抜く。
サラはどうやら正直者過ぎて、つい考えていることが口から出るようだが…
以前、襲撃をかけてきて、シグマ家に滅ぼされる可能性があって彼女が愛人のような形で送られてきたのだが、流石にカグヤは手を付けていなかった。
カグヤ自身が火炎龍達を滅ぼすつもりもなかったし、むしろ彼女のが来て数日間、その目立つ容姿などでいつの間にか男子たちから「龍姫」というあだ名がついて、その嫉妬を向けられてカグヤは大変だったのである。
いくらシグマ家の者だとしても…流石にそこは男子たちとしては譲れないような想いがあったのであろう。
一応、従者兼生徒みたいな扱いとなっているのだが、カグヤからしてみれば普通に過ごしてほしいとは思ている。
まぁ、そう言うわけでサラは手を付けられていない清らかな体のままなのだが…そこがどうしても不安になるようで、今日はこうして朝から寝ている隙を狙って侵入してきたようである。
部屋の扉の鍵をどう解錠したのかが気になる処ではあるが、アンナは直ぐに行動に移した。
『はぁ、また何をしようとしているのですか、サラさん』
「!?」
いきなり声をかけられて、サラはびくっと震えた。
彼女が恐る恐る振り向くと…にこやかな顔で、大量の魔法陣を周囲に浮かべて、彼女にすべてロックオンした状態の人の姿になったアンナがいた。
‥‥…主の安眠と、貞操を守るのも魂魄獣の務めである。
ついでに言うなれば、サラがこのような暴挙に出たのも初めてではない。すでに数回は同じような行為に及んでいるのだ。
なお、発動させようとしている魔法は周辺の地形に影響を及ぼす物ではないので、対象のみに直撃させて部屋は壊れない優れものだった。
一応これでも、元は大魔法使いなのでその程度の魔法はお手の物であった。しいて言うなれば、サラの見た目は人間なのだが、中身は火炎龍のままでもあるようなので、いざとなれば壮絶な戦闘になりかねない危険性があったのだが…流石に分の悪さを感じて、サラはすごすごと何事もなかったかのように部屋から出ていったのであった。
こうして、人知れずアンナとサラの攻防がある傍らで、本日もカグヤの安眠は守られるのであった。
『ん?』
と思っていた矢先、ふとアンナは自身の体に何かが届いた感覚を感じた。
本の姿に戻り、その感覚の正体を見ると…久しぶりの神からのメッセージが届いたようである。
『あー…また面倒事ですかねコレ。休日というタイミングを狙って来てますねぇ』
内容をアンナは理解し、このカグヤの安眠はほんのわずかな平穏だったのだと思うのであった。
巻き込まれの才能というよりも、神の方からいろいろやっていないかコレ?




