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#50

少々情報確認

「…というわけで、そこにおられますカグヤ様の愛人もしくは妾、従者ともなる私の名前は『サラ』でス。皆さま今後どうぞお見知りおきヲ」



 教室内にて、騒動道と言い張ったサラに対して、カグヤは頭を悩ませた。



 今朝の火炎龍(ファイヤードラゴン)達が集まっただけでも騒ぎになるのだが、その中の娘がカグヤに生贄のような形で差し出されたのである。


 別に求めてもいないのでカグヤとしては返品、クーリングオフを願いたいところだったのだが…



『もう戻れませんのデ』


 その娘…サラは己の親の罪を背負う覚悟で、人間になれる秘薬を飲んで火炎龍(ファイヤードラゴン)の身体を捨て去ったそうである。


 そんな秘薬が存在したこと自体が驚きだが、その効果として一生元の火炎龍(ファイヤードラゴン)の姿にもなれず、このまま群れにとどまることができないそうなのだ。


 そしてさらに驚くべきことに、カグヤが通う学校に生徒となる手続きを経ていたようであり、よりによって同じクラスであった。


…いつの間にというか、余りにも手早すぎる。



 それだけカグヤが火炎龍(ファイヤードラゴン)の殲滅をしないよいうにと、あの群れ全部が総動員して用意したに違いない。






 昼休み、新たにサラを加えたいつもの面々は、その情勢をクラス間の噂で知ったのだろうが…


「一体何をどうしたらそう言う事になるんだよ?」

「愛人とか堂々と…求めるにしても早すぎですわよ?」

「なんでそんなうらやましい状況なのにカグヤお前は喜ばなげふぉぅっつごぼぅ!?」

「お前は黙れ!!」


 リースやミルルが疑問の声を上げるのはわかるが、とにかくベスタは全く別の事だったので、カグヤはベスタの頭をちょうど今日の昼食で食べているうどんに顔を沈めた。



 アツアツなので、もだえ苦しんでいるが…まぁ、大丈夫だろう。


「というか、2人の質問もその通りだよな。…サラ、何で火炎龍(ファイヤードラゴン)たちは俺に愛人とかをあてがうような結論を導き出したんだ?」


 カグヤはその疑問をサラに尋ねた。


 火炎龍(ファイヤードラゴン)達であるならば、他のアプローチ手段もあるだろう。


 例えば何か貢ぎ物や金品を出してきたりなど…いきなり愛人、しかも人間になる薬(戻れない)を使ってまでその行為に及んだ理由は何なのか?


 尋ねると、サラはちょっとだけ考えるような仕草をして、口を開いた。


「そうですね…まぁ、まずは詳しい話がありましテ」




 聞くと、火炎龍(ファイヤードラゴン)たちは過去にシグマ家の者と思わしき人物に、今の長がぼっこぼこにされたという経験があって、人間にむやみやたらに干渉しない様にしていたらしい。


 だが、あの襲撃してきた…サラの父らしい火炎龍(ファイヤードラゴン)はその事を気にせずに襲撃し、真っ白に燃え尽きて群れに戻って来た。


 火炎龍(ファイヤードラゴン)達のうち、その長は過去のシグマ家のその人物に相当脅されていたようで、恐怖の対象として映り込んでいて、このままではシグマ家の者たちが来て自分たちを今度こそメッタメタのギッタギタの、微粒子一つ残さずに殲滅されるという未来が幻視で来たらしい。



「最初は父をきれいに掻っ捌いて、ドラゴンステーキとしてお詫びの品の一つにする予定だったのでス。私達、火炎龍(ファイヤードラゴン)…いえ、それ以外のドラゴンたちの肉でも最上級のうまさがあると人間たちには知られていますからネ」

『一応事実はきちんとあるようですね。美食家が一生に一度…死ぬまでに絶対食べてみたいものとしてもドラゴンの肉が挙げられているようです。ですが、彼らは人前に出ることはめったになく、その為ワンランク下の亜龍種の肉を代わりにしていることが多いそうです』


 アンナが本の姿の状態で、その知りたい情報をページに映し出して皆に見せた。


 画像もしっかりあるようで、その画像だけでも十分おいしそうな肉である。



「それでもダメな可能性もあるし、そもそももう火が消えてしまった者はだめだろうという事になりまして、そこから考えた結果、とある火炎龍(ファイヤードラゴン)の一体が、『人間は三大欲求というモノがあるらしい。ならば、その欲求の一つを満たせるようなものがいいのでは?』という事で、愛人を、それも人と交われるようになったものを送ることにしたのでス」

「なんでよりによって性欲の方で選んだ!?」


 人間の三大欲求・・・睡眠欲、食欲、性欲と言うが、その中でよりによって性欲の方での解決手段を火炎龍(ファイヤードラゴン)たちは導き出してしまったようだ。



「過去に人間の国では性欲に・・・傾国の美女やらそう言ったことで身を滅ぼしたところが多いらしく、あわよくばそのままシグマ家もと・・・」

「それ言ってよかったのか?」

「あ」


 シグマ家を滅ぼそうかという打算を、サラはポロリとこぼしてつぶやいていた。



「えっと…その…、すみませン」

「いや別にどうこうならないからいいけど、かなりうっかり屋なのか?」


 物凄く青ざめて、土下座をしてきたサラに、カグヤはそう尋ねた。


「余計な一言が出ることがありまして…以前、仲間内で『毒舌大魔神』と呼ばれていたことがあり、その共生をしていたのですが…毒舌からポロリと余計なことをこぼすようにんっていたようでス」


((((何なんだその過去は?))))


 その毒舌大魔神時代の方に、皆の関心が向くのであった。





 とにもかくにも、愛人どうこうの話は一旦保留されることになった。


 カグヤの身分は貴族の三男であり、うかつにここで何かをやらかすと面倒ごとがさらに増える可能性があるからである。


…それ以前に、ドラゴンが人の姿になって愛人宣言をしたという方が十分問題でもあった。


 何しろ、モンスターの中でも格が違う存在であり、ただでさえ飛んでもないシグマ家にドラゴンの力が取り込まれるようなことになるので、しばらく王城の方でも議論にたびたび挙げられたそうである。


 とにもかくにも、今後さらに面倒ごとが増加する可能性は十分あるのであった。



『…カグヤ様の「巻き込まれの才能」がばっちり出ていますよね』

「平穏に暮らしたいのに、神もとんだ才能を付けてきたなぁ…」


 今後の面倒ごとの増加が見込まれたので、カグヤはしばし遠い目をしていたのであった。


 なお、サラがいつのまにか学園内で「龍姫」と呼ばれるような美女の仲間入りをしたのはまた別の話である。


 そしてその嫉妬に狂う者たちが出たのも…言うまでもない。


いつかはしてみたいステーキネタ。

牛かドラゴンかそれとも…


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