#46
主人公短め
突如として起きた火炎龍の襲撃。
だが、その火炎龍は・・・・・・・
「この中から探し出すのは大変だよな・・・・」
『カグヤ様がやらかしたことですよね?』
現在、カグヤの魔法によって発生した大量の泡に埋もれていた。
本来は火災現場に使用される魔法なのだが・・・・・思った以上に強力なものになって火炎龍を飲み込んだのである。
火は消し止められるし、火災に対応するので空気をも奪う。
それはすなわち、飲み込まれたら窒息が決定しているのだ。
一応、別の水魔法によって泡は簡単に洗い流せるのだが、莫大な量故に洗い流すのも大変である。
なので、責任感からカグヤは洗い流すのを買って出たのであった。
「もともと自分でやったことだよな」
「というか、この量はひどいわぁ」
「完璧窒息ですわね」
徐々に明らかになっていくにつれて、どれだけの相手だったのかがあらわになって来た。
「といっても火が消えているせいか真っ白になっているな?」
『漂白剤のような効果はないはずですので・・・燃え尽きた感じですかね』
真っ赤に燃えているかのような色だったはずが、徐々にあらわになって来た鱗は白く変色していた。
と、順調に洗い流していた時であった。
「ん?」
《グ・・・・グゴアァオォォォォァァァァァ!!》
「まだ生きていた!?」
泡が急激に盛り上がり、慌てて洗い流していた者たちが離れると、中から窒息死したと思われていた火炎龍が体を起こしたのである。
その目は真っ赤に充血しており、目に染みているのか物凄い涙を流しているようであった。
《グガァァァァァァァァ!!》
その燃え尽きたような体のまま、火炎龍は翼を広げ、あっという間に飛び立って姿が見えなくなった。
それはまるで、おびえて逃げるかのような光景であった・・・・・・
『・・・カグヤ様、ドラゴンキラーのような称号はありませんけど、「ドラゴンを撃退した人」としておそらく有名になりますよこれ』
「げっ!?」
アンナの不吉な言葉に、カグヤは今さらながらやらかしたことを再確認したのであった。
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SIDE逃亡した火炎龍
聞いていない。
あんな人間がいるなんて聞いていない。
必死になって飛び続け、何とかあの泡地獄から逃げ出した火炎龍は、もう二度と人間に対してちょっかいをかけないと心に誓いながら、火炎龍たちが集まる巣へとたどり着いた。
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【ドラゴン語翻訳です】
「うぉぃぃ!?どうしたんだお前その姿は!!」
「火が消えているじゃないか!!」
巣にたどり着くと、仲間たちがその変わり果てた姿を見て驚きの声を上げた。
それもそのはず、その火炎龍の自慢だった真紅の身体が、もはや灰になったかのように燃え尽きた色合いになっていたからだ。
体内で燃え盛っていた炎もあの泡を飲んでしまったことによって消化され、まるで一気に年を取ったかのような印象を皆に与えた。
「おおぅ・・・何があったんじゃ!!」
と、火炎龍たちの長が慌てて変わり果てた姿になったその者に、駆け寄ってきた。
「す、すまねぇ長・・・・人間は矮小な存在だと思っていたのだが、全く違っていたことを痛感しちまったよ・・・」
「な!?まさかお主・・・人間に手出しを出してしまったのか!?」
その言葉から、何があったのか長は理解した。
「ああ・・・ちょっと人間が集まっているような場所で暴れたんだが・・・アレのどこが矮小な存在なんだとこの間まで思っていた自分を殺してでも止めたくなったぞ。本気で吐いてみたブレスを防がれるわ、そして体当たりで押しつぶしてやろうとしたら、何やら不思議な大量の泡によって消火されて、その上体中の炎も消され、目にもものすごく染みて・・・・・もうこんな姿になっちまったよ」
「・・・ああ、だから言ったであろう。人間に舐めてかかると酷い目に合うのだと。この話はな、誇張ではないのじゃよ。儂の・・・・当時本当にひどい目に遭った体験からきているのだ」
「というとまさか長も・・・・」
頭を抱えるかのように長が言うその言葉に、燃え尽きた火炎龍は気が付く。
目の前にいる長が昔から何度も話していた話・・・・・・それが作り話ではなく本当の話、それも長の実体験だという事に気が付いたのだ。
「そうじゃ、当時儂ら・・・まだ数が多かった同族と共にあの頃は若かったがゆえに大暴れをしてみたことがあったのじゃ。お主のようにまだ血気盛んな時代じゃったが・・・・・本当に愚かな行為だったと理解した時には遅かったのじゃ」
かなり大昔になるのだが、大暴れをしていたその当時がものすごく楽しかった長と今は亡きほかの仲間の火炎龍たち。
だが、その日々はある日突然として終焉を迎えた。
いつものようにドッカンドッカンあちこちで暴れていると、一人の人間がやって来たのだ。
背にはでかい大剣を背負い、いかにもガラの悪そうな、隻眼の人物で・・・
『ああん?お前らが最近暴れていた奴らか?最近ドッカンドッカンうるさいんだよ!!』
そう言ったかと思うと、長たちに対して攻撃をし始めてきた。
最初は誰だこいつ?頭おかしいのでは?と舐めてかかっていた。
だが、その者が大剣を一振りした瞬間・・・・・・仲間の4体以上の首が一瞬にして斬り落とされた。
仲間の首が斬り落とされたことに怒りにかられる者、恐怖におびえる者・・・・・・それでも関係なくその者はあっという間に長を含めた数体ほどまでぶった切ってしまうと、こう言い放った。
『いいか?もう二度と人里で騒ぎを起こすんじゃねぇ!!お前らを数体ほど残すのは、この悲惨さを他の仲間に伝えるためだけにやってやったんだ!!だからこんな恐ろしい人間にお前らは二度と近づいてくるなぁ!!』
そう叫んだかと思うと、その者はあっという間に去ってまるで嵐が去ったかのように静かになったという。
「後で風の噂で知ったのじゃが・・・・その者はどうやらシグマという名がつく家の物だったらしく、各地にいた暴れていたモンスターたちを全滅ギリギリまで倒しては、そのように忠告をしていたそうじゃ」
「ギリギリ・・・・?」
「そう、自分たちが・・・・人間がどれほど恐ろしい存在かを知らしめるために、まるで神からよこされたかのようなものじゃった。そこでわしらはようやく己の愚かさを理解し、こうして人から離れておるのじゃが・・・・まさかまた似たようなことが起きるとはな」
ふぅっと息を吐く長。
その顔は、どこか遠い昔にやってしまった・・・・仲間を間接的に殺してしまったかのような罪悪感にあふれるような哀愁が漂っていた。
「あれからはや数百・・・いや数千じゃったか?それ以来儂らは人間に出来るだけ近付かぬよう・・・・その警告と儂らの同族を倒した者の言いつけ通り、人間は恐ろしいモノであり、二度と近づかぬように言い含めておったのじゃが・・・・それをお主は破ってしまった。それがどういう事かわかるか?」
厳しい目つきをした長に、燃え尽きていた火炎龍ははっと気が付いた。
「まさか・・・・またその当時のように」
「そうじゃ。流石にあの者は人間だったがゆえにもう生きてはおらぬじゃろうが、お主がそんな悲惨な目に遭ったという事は、その者と同じ・・・・もしくはそれ以上の実力を持った者が居るという事を示すのじゃ。ならば、今度はその者が儂らを今度こそ滅ぼすためにやってくるかもしれん」
その重みのある言葉に、周囲で聞いていた他の火炎龍たちも顔を青ざめさせた。
たった一人がやらかした過ちによって、長の・・・・当時の悲惨な事がまた起きるかもしれないのだ。
いや、当時はまだ数体は残されたのだが、今度は・・・・全滅もあり得る。
物凄くやばい事態になっていることに気が付いたのだ。
「おいおいおいおい!!絶対やばい状況やんか!!」
「あぁぁぁぁぁ!!この巣もおしまいだぁぁぁ!」
「過ちの代償が全滅は嫌だぁぁぁぁ!!」
あちこちで恐怖のあまりに慌てふためく火炎龍たち。
「・・・一旦静まるのじゃ皆のものぉぉぉぉ!!」
長が号令を出し、皆ピタッと静まった。
「いいか!!このまま慌てふためくだけではどうにもならん!!もう抗っても意味はないのじゃよ!!」
「我らが逆に攻撃すれば・・・」
「それは無理じゃ。あの燃え尽きた者の様子を見ても、確実にこちらが滅びるのが先になるとわかるじゃろう?」
「我らの巣の場所がばれていないから・・・」
「人間が扱う魔法の中には、目的の物を追跡するようなものがあると聞く。逃げようにも逃げられぬじゃろう?」
・・・・冷静になったところで色々と詰んでいた。
「・・・だったらさ、こういうのはどうだ?」
ふと、とある2つの妙案を火炎龍の中の一体が思いつき、皆に話した。
「その方法・・・・いけるのか?」
「わからん。けれども、やらないよりはましだろう」
「一つ目がうまいこと行かなかったら行う二つ目の方法は・・・・さすがに我らの尊厳として引っかかるだろう」
「けれども死よりはましなはずだ。出来るだけ一つ目の方法で事が済めばいいのだが・・・・天しだいかな」
その案を聞いた火炎龍たちは、まずは最初の妙案を試すためにある場所へ急いでその方法の鍵となるであろう秘薬を取りに行くのであった・・・・・・
果たして彼らは生き残れるのだろうか?
その妙案は成功するのだろうか?
そもそもカグヤに全滅をさせに行くという意思はないと思うのだが・・・・・シグマ家の方がね。
次回に続く!!
なお、火炎龍の巣はどこか遠いでかい活火山にあると思ってください。




