#41
主人公無双な話は結構あるけど、その家族の方がさらにチートというパターンも多そうな気がする。
SIDEカグヤ
「せぇいや!!」
「甘いぞエリザベス!!」
「ぐはっつ!!」
カグヤの父親アーデンベルトは、カグヤの兄であるエリザベスが振りかぶった木刀を軽くかわして、そのまま背後をつかんでぶん投げた。
「『植物乱舞』!!」
「種を植えて成長させてその木刀その物を見えなくしたか!!けれどもまだまだ甘い!!」
「ぐほぅっつ!?」
カグヤのもう一人の兄であるスイレンが、あらかじめ木刀に仕込ん種を発芽・急成長させて、ものすごくもじゃもじゃの茂みに囲まれた状態になった木刀で斬りつけるが、父はそのもじゃもじゃの茂みごとスイレンを直接木刀で胴を殴った。
「『電撃斬』!!」
「魔法を応用したのか!!けれども電撃ごと切りつければ問題はないのだ!!」
「うそぉっ!?」
電撃を纏ったカグヤの剣を、痺れる前に父は弾き飛ばして、そのまま勢いでカグヤもふっ飛ばした。
・・・・・夏休みを過ごしつつ、今日は朝から珍しく貴族の当主としての仕事がないらしい父のアーデンベルトが、カグヤ含む息子たちの剣術の訓練をしていた。
才能があろうがなかろうが、努力して極めよという方針のようで、カグヤたちも必死になって挑んでみてはいるものの、今のところ勝率は0%である。
『カグヤ様同様に「大剣豪の才能」があるようですが、カグヤ様のお父様の方が経験がはるかに上のようですので、実力差的にほぼ負けますね』
「いやもうここまでズタボロだと、十分そのことを理解しているってば」
アンナの冷静な解析に、カグヤはツッコミを入れた。
・・・なお、カグヤたちは別に弱くもなく、学校内ではほぼ最強クラスの剣術を扱えると言っても過言ではないだろう。
だがしかし、父アーデンベルトの方がカグヤたちよりも圧倒的に強いがために、上には上がいると体で覚えさせられるのである。
それぞれの得意分野で創意工夫して対応しては見るが、父は力技のごり押しですべてに対処してしまっていた。
すべてほぼ一撃で決められていき、長続きしない剣戟となるのだ。
というか、リースとの決闘時に得た「魔拳闘士の才能」や元から持っていた「賢者の才能」「大剣豪の才能」を併用してあの触れたらほぼ確実に感電して痺れる剣技を作ってみたのだが・・・・まさか電撃を浴びる前に切りつけきるとは思いもしなかった。
ああ神様よ、確実に言えることはこの家庭にいる者たち皆チート過ぎるのではなかろうか。
そしてエリザベス兄さん、貴方だけよく考えたら普通の攻撃しかしてないね。
え?木刀にこっそり無色透明の痺れ薬が塗ってあった?肌にちょっとでも当たればあっという間に効果を発揮するはずだったって?
兄たちは兄たちで恐ろしいなぁ・・・・・
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SIDEリース
「ふぅ、今日の分はこれで十分か」
ソード男爵家の実家にある自身の部屋にて、リースは今日の予定分の夏休みの宿題に取り込んでいた。
まじめにやるときは真面目にやり、自身の才能の訓練をするときはきちんと訓練する。
公私混同せずに分けてやるのだが、それでも夏休みの宿題の量は多いと思えるだろう。
「こなしておかないと後々大変だしな・・・」
うーんっとリースは体を伸ばし、凝り固まった体をほぐす。
魂魄獣であるニャン太郎は、のんきに適当に放っておいた毛糸玉で遊んでおり、特に邪魔にはなっていなかった。
「外に出てちょっと走ってこようかな?」
部屋着から外出用に衣服に着替えようかと、クローゼットをリースは開ける。
実家内ではリースに関して冷遇というか、むしろいないような者扱いに近いのだが・・・・それなのに学校にはいつもの姿で行かされるからひどいものだとリースは思う。
さすがに部屋着は本来の姿で合うようなものだが、外出用は・・・・男性物の服しかない。
その衣服の数々を見て、リースは溜息を吐く。
なぜ、このような衣服しか着られないのだろうか。
なぜ、自分は必要とされていないような存在だったはずなのに、家の都合で振り回されなければいけないのか。
なぜ、性別を偽らされる《・・・・・》のだろうか・・・・・
考えていても鬱になるだけなので、リースは気を取り直して外に出る衣服を選ぶ。
でも、いつの日か確実にばれる可能性はあるだろう。
リースの秘密でもあり、この男爵家の当主にとっては物凄い醜聞とも言えるような事が・・・・・・・
そろそろリースがどのような立場にあるのか推測できてきている人が多そうかな。
・・・リースのは魔拳闘士の才能」以外にも、そのリース自身の秘密に関係するような才能を所持しているのですが・・・・まぁ、男爵家というか、当主にとって醜聞なモノとはいったい何だろうね?厳格なところなら醜聞、そこまで厳しくもなく心が広いなら笑い話ですむ感じです。




