#39
本日2話目!!
日常?
(実家に帰って来たなぁ・・・・)
そう思うカグヤの真横では、今日も爆発音がしていた。
「さあカグヤ!!今日も魔法の訓練よ!!」
『カグヤ様!すいません私も相手しています!!』
「どっちの攻撃魔法も死ぬってば!!」
シグマ家の領地にある屋敷に帰宅してから5日目。
今日は朝から魔法の訓練をカグヤは文字通りの意味で叩き込まれていたのであった。
シグマ家は鍛錬を大事にしているのだが、父のアーデンベルトが剣術を、母上のテリアスが魔法の訓練をしてくるのでカグヤは必死に死ない様に訓練を受けていた。
加減されているのはわかって言うのだが、それでも大量の魔法が雨あられのように降ってくるのは恐怖である。
ちなみに、アンナがこれに加わっているのは彼女自身も魔法使いなのでその魔法を見て母上がついでに一緒にやって頂戴とお願いで加えられて、カグヤに攻撃を仕掛けているのであった。
母上の魔法もすごいことはすごいのだが、アンナの方もすごい。
というか、あの二人がこの世界最強の魔法使いではないだろうかと最近カグヤは思っていたりもする。
昼近くなってきて、ようやく訓練が終わったころにはカグヤは大の字で寝転んでいた。
「今日も生きているという事は素晴らしいと実感できたな・・・・・」
『カグヤ様・・・あの、そのすいません』
寝転ぶカグヤに申し訳なそうな顔をしながら、アンナは膝枕をしていた。
うん、でもその胸囲のせいでいまいち見えん。
アンナはカグヤの魂魄獣であり、カグヤの命令を聞くのだが・・・・圧倒的な実力者である母上には逆らいにくいのだろう。
というか、過去に山を消し飛ばしたという伝説を持つ相手にそう強気な態度がとれるか?
確実に無理なことは、こうして体感しているのであった。
ちなみに、シグマ家に伝わる伝記なども聞くと無茶苦茶なのが多い。
木の枝で鋼鉄を切り裂く、山を持ち上げなげる、一度に大人数を担ぎ上げて一夜にしてその地から消えうせる、素手で溶岩をつかんで投げる、川を一瞬にして凍らせ渡れるようにした・・・・など、眉唾物でもあり、真実味もある数々が怖ろしい。
というか、いったい本当にこのシグマ家って何やっているんだろうか。
『ガイド役としてシグマ家を検索してみた結果、ほとんど真実なのが怖ろしいですよ。あ、「溶岩をつかんで投げた」というのは違うようですね。正しくは「溶岩に飛び込んで泳いだ」そうです』
「どっちにしても無茶苦茶なのは変わっていないんだけど!?」
大事なことだから何回も言うけど、本当にシグマ家ってどうなっているんだよ!!
その心の叫びは、歴代シグマ家の事を知っている、周辺諸国を治める者たちも同じなのは言うまでもない。
「なんか改めてさ、こう無茶苦茶なところに転生しちゃったなと思えるんだよな・・・・永遠の平和を得られる様な才能があったらそれを手に入れたいよ・・」
『・・・無いようですね。人は皆誰しもがなにかしらのハプニングに巻き込まれるようですから』
現実とは非常なものである。
というか「巻き込まれの才能」なんて言うのがあるから、その反対の才能があってもおかしくはないんだろうけどなぁ。
「もしかしたら神に定められた運命か?」
『・・・あ、その神からのメッセージが届きました。「いや、別に何もしていないのじゃ」だそうです』
言ったとたん、すぐにその神本人から否定されちゃったよ。
というか、ぽつりとつぶやいただけなのにすぐに返事来るってことは、何処かで俺達を見ているのだろうか。
「午後はどうだっけ?」
『昼食の後、夕方までは自由のようですのでその間に宿題をしたほうが良さそうですよ。ですが、夕方に今日は魔法漬けの訓練のようですのでまた同様の事をされますね』
うん、地獄とはここにあるのだろうか。
いや家族仲とかはいいし、皆優しいのはわかるよ?
けどそれとこれとは別なのとか言いたいのだろうか。
アンナの膝枕に横になりながら、カグヤは何処か達観したような気持になるのであった。
と、ここでカグヤはふと思いついたことがあった。
夕方、魔法の訓練という事で母上が現れたときにカグヤはその思いついた案を実行することにした。
「あのさ母上、アンナとどっちが魔法強いの?」
『・・・カグヤ様?』
「あららら、カグヤったら気になるの?いいわ、アンナちゃん勝負しましょう」
『えっ!?ちょっと待ってくださいよ!?』
そう、アンナと母上の魔法の勝負を仕掛けるのである。
こうすれば、魔法の訓練時間が短くなりそうだし、午前の方で一緒になって仕掛けてきたアンナに少々こちらの状態も伝わるだろう。
「でもここだと被害が大きくなりそうね・・・そうだわ、ちょっと来て頂戴」
『ちょっとまってくださ、ぐっ!?』
アンナが逃げようとしたが、母上にすぐに首根っこをつかまれて引きずられていった。
向かう先は被害が周辺に出ないところらしいが・・・・・まあいいか。
30分後、母上は傷一つなく疲れた様子もないぴんぴんした様子で帰って来たのに対し、アンナは衣服がボロボロの、所々下着が少し見えるような目のやりどころに困る状態になっていた・・。
「ふふふふふ、結構強かったわね」
『結構って・・・・・あれでも全力だったのに・・・』
ずーん、とどこか魔女としてのプライドが傷ついたのか、アンナはその場に落ち込んで座るのであった。
・・・・・爆発音とかが聞こえないほど遠くの方に行ったらしいけど、何処で勝負していたのだろうか?
そして母上よ、あなたはやはり化け物じみた強さなのですか。
後日、ダースヘッド国王の下に山が上半分ほど消し飛んだという情報が入って胃痛悪化、脱毛悪化したのは言うまでもない。
ただ唯一ましだったといえるのは、その山の中にどうも違法採掘をしていた他国の者達がいたようで、すべてを泣き叫びながら悪事をさらけ出して、その情報をもとにしてその国との交渉で有利になったことであろう。
・・・今回、一番のとばっちりを受けたのは国王である。
なお、アンナは別に弱いわけではありません。けれども、相手が悪すぎたとしか言いようがないのです。
衣服がボロボロになる程度で済んで生きているあたり、なかなか強いのかもしれません。
『でもあれは死にかけましたよ・・・・・・』
「例えば?」
『そうですね・・・カグヤ様にわかりやすく言えば鉱山のガス爆発ですかね?どこか適当な山にまで連れてこさせられて、そこで戦っていたのですが、なんか鉱山だったのか穴が開いてまして、そこに火の魔法が入ったとたんに吹き飛びましたからねぇ・・・』
「廃坑でガスでもたまっていたのかな?」
『・・・・うう、下もスース―するし、もう二度と勝負したくないですよ』
「あらダメよ?あなたの実力も良くわかったし、たまに相手をしてもらうわね」
『( ゜Д゜)』
「あ、絶望の顔で気絶した・・・・・いや本当になんかごめん」




