#37
ちょっと#36の続きです。
SIDEダースヘッド国王
・・・課外学習で生徒たちが攫われるという事件があってから4日ほど。
あの事件は学校の内部の方に共犯者がいて、その共犯者と組んでいた黒幕はどうやらこの国のとある貴族と宗教団体だったそうだ。
なんでもその貴族は色々とどす黒いようなことを隠していたそうだが、最近そのことが国に全部バレそうになってきたらしい。
まぁ怪しかったので調査をしていたのだが・・・・嘆かわしいほどの物だった。なぜもっと早く見つけられなかったのかと叫びたくなった。
で、やばくなってきたぞどうしようとうろたえていたところに、ある宗教団体・・・・・その宗教団体もいろいろと真っ黒な奴らだったらしいけど、そこで話を持ち掛けて来たらしい。
いわく、「才能ある子供たちを攫いまくって人質にして脅したり、もしくは奴隷のようにしてしまってその才能を自分たちのところで利用させよう」という事なのだとか。
その案と人員を派遣するかわりに、その宗教団体は貴族家の所有していた領地で布教活動を物凄く濃く行わせてもらおうとしたらしい。
「しかし・・・これで彼らは唯一の失敗を犯したのか」
「はっ、どうやらシグマ家の三男であるカグヤ・フォン・シグマも標的に入れてしまったために、シグマ家によってつぶされたそうです」
何をやらかしているんだろうかその阿保たちは。
バーステッド王国の国王であり、最近抜け毛に悩んできたダースヘッドは思わず心の中でそうつぶやいた。
事件から時間が経ち、改めてその内容を整理しているのだが、何度聞いても愚かすぎる話である。
というか、それ以前に国王が胃痛を悪化させるような報告もあった。
「シグマ家の三男に対して、襲撃をかけたであろう者達は14人ほどですが、すべて返り討ちどころか・・・その、社会的な死を下していたようです」
「わかっておる。男として考えると恐ろしいものであるからな・・・・」
その襲撃者たちを、その場にいた者たちはむしろ哀れんだ。
悪い奴らというのは馬鹿でもわかる。
けれども、この悲惨さを考えるならば・・・・・・・・馬鹿でも逃げてほしいと思えてしまった。
「そもそもまだ10歳にして大人相手にここまでできているという事実の方が怖ろしい・・・・イタタタ、胃がまた痛いな」
「胃薬です陛下。・・・・確かにとんでもない子供ですよね」
「ですが、あのシグマ家の子だと思えば普通なような・・・・」
((((確かにその通りだとも思えるな))))
シグマ家の強さの基準はダースヘッド国王たちにはまだわからない。
けれども、その家の基準で行けばその惨状も普通なのではないだろうかと思えたのであった。
「はぁ・・・・将来を考えると胃に穴が開きそうで・・・いだだだだ!」
「「「「陛下-!!」」」」
胃痛に悩むダースヘッド国王に、臣下たちは今日も同情と心配の気持ちであふれるのであった。
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SIDEカグヤ
「よっと!!」
キィン!!
「そこまで!!勝者カグヤ!!」
「くそぅ!!また負けたよ!!」
「これで3勝0敗か」
生徒たち誘拐事件から時間が経ったが、すでに解決したようで今日学校では剣術の授業が行われていた。
クラス合同で行われるようで、偶然リースのいるクラスと合わさったようで互いに勝負をしていたのである。
とはいっても真剣じゃなくて木刀なのは授業だから当たり前のようなものだが。
『ふわふわ~、良いですねニャン太郎は~』
『フニャァァァ・・・・』
アンナが本から人の姿になって、リースの魂魄獣であるニャン太郎を懐柔しているのもおなじみの光景だろう。
ただ、人の姿になっているときのアンナは大人の女性って見た目で、その谷間にリースを置くのがどうも肌触り的に気持ちがいいようで、ニャン太郎が圧迫されて死にかけているが。
リースの方に収納されている方が良さそうだが、猫故か自由を求めてよく動きまわるそうでリースが普段から放し飼いの状態にしているのもこの状況の原因だろう。
「おい本女!!ニャン太郎は僕の魂魄獣だぞ!!」
『えー、この子の可愛いですのにケチですねー』
「ケチとは何だケチとは!!」
そして、ニャン太郎に関してリースとアンナの口論が起きるのも、もはや当たり前であった。
というか、そこまで奪い合うのであればリースがニャン太郎をきちんと身体に仕舞えばよさそうな話しである。
だがそれをあえてしていないのは・・・・いちいち取り出したりするのがめんどくさいという意外な怠惰な部分があったようだ。
(けど、このまま口論をして目立ってくれれば、その陰にいる俺はあまり目立たなくて済むなぁ)
と、カグヤは思っていたが、リースとの剣の勝負で見せる剣さばきに関して既に目立っていたのは言うまでもない。
シグマ家の当主のしごきを受けて鍛えあげられて、そのうえ「大剣豪の才能」もあるのですでにかなりの強者になっているのである。
・・・・ただし、不思議なことに「天然ジゴロの才能」だけはなりを潜めているようであったが、別にカグヤは気にしない。
けれども、その才能はまた別の効果もあったことに気がつくのは後の話である・・・・・・
・・・次回からまた新展開かな。
しかしまぁ、ニャン太郎は不幸なのか幸福なのかよくわからない立ち位置にいるんだよね。
それでも嫌がって暴れない辺りそこそこ懐いているのだろうか。
いや違うか、挟まって身動きが取れないだけか。