サイドストーリー:彼女はこうして・・・・ その2
まさかのサイドストーリ連続でした。
SIDE???
『なるほどのぅ・・・まさかここにあの者の同郷の者が辿り着くとは大したものじゃ』
・・・・とある空間、真っ白なその場所でつぶやく者が居た。
目の前に横たわる肢体を見て、その意志の強さに感嘆を示す。
そして、その感嘆を示しているのは神とも呼ばれる存在の金髪幼女であった。
その姿である理由としては特にない。
ただ、目の前で素っ裸で寝ているかのような少女には、ちょっとだけ神でもジェラシー(主に胸部)が湧いたのは言うまでもなかった。
ペタンなのに・・・・目の前には成長している双丘がある。
いくら神でも、自身の体に関してはどうしようもなかったのであった。
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SIDE照代
「・・・・ん?」
ふと、照代が目を覚ますとあたりは真っ白な空間であった。
思い出すのは、魔王城での儀式の空間であり、このような場所は見たことがない。
いや、一度は見たことがあるのか?
『お、やっと目を覚ましたのかのぅ』
と、誰かの声がしたので照代がその声の主を見ると・・・・自分よりもはるかに年下の様な金髪の幼女であった。
「なるほど・・・・ここは貴女の空間なのですか」
『そうじゃ、神としてあらゆる世界を見るために設けたプライベートルームと言った方が分かりやすいかのぅ』
とりあえず、状況説明を聞き、出された茶を照代は飲んだ。
目の前にいるはるかに年下そうな女の子は、驚くべきことに神とでもいうような存在らしい。
そして、さらに驚くことに・・・・
『お主の言っておった月夜輝也かのぅ、あやつならここにお主が来るほんの僅か前にすでに転生させたのじゃ』
どうやら世界同士の時間軸というのは全く同じものではなかったようで、照代が過ごした数か月間は、ここではたった数時間ほどしか経過していなかったようである。
そして、タイミングが最悪というか、照代の思い人であった輝也はすでに転生の道を選んでいたようであった。
なんでも、あの照代たちが巻き込まれた異世界転移に神が干渉し、その結果やっと取り出せたのが輝也だけだったそうだ。
なぜ自分も一緒に彼と共にできなかったのか照代は嘆く。
そして、転生してしまったという事はあの輝也はもうここにいないという残酷な事実を彼女は受けたのであった。
『ん~正確に言えば少々違うのぅ。肉体的消滅の後の再生のようなものじゃから、記憶その物は時が来れば戻るよう設定しているのじゃよ。じゃから、輝也とかいう者自身は特に変わらんのじゃよな』
「本当ですか!?」
嘆く照代を励まそうかと神が言ったその言葉に、照代は食いついた。
「輝也さんがいるのであれば、私もぜひとも一緒に転生させてください!!」
『・・・・無理じゃな。あやつは例外のようなものであり、そもそもこういうその世界の者ではない魂の行き来は神の行為でもその世界そのものに多大な負担をかけるのじゃよ』
照代は同じ世界に同様に転生させてほしいと願ったが、神は拒否した。
『というか、お主告白しておらんからあの者にとってもどういう存在か位置づいておらんじゃろ?悪い言い方をするとストーカーのようなものじゃぞ』
「うっつ!?」
的を外していないその言葉に、照代は落ち込んだ。
「では・・・私は結局なんのためにあんなくだらない・・・転移なんてものに巻き込まれたんですか!!あの時、そんなものに巻き込まれずに一緒にいれば告白できたのに!!ずっと好きだったのに!!」
その事実にあらがうかのように照代は泣き叫ぶ。
彼女にとっての恋は、まさかの異世界からの迷惑行為によって無理やり閉ざされた。
そのことが本当に悔しくて照代は泣き叫ぶ。
・・・・その様子を見て、流石の神も同情した。
『・・・それほどまでにその男を好いておったのじゃろう?じゃったらチャンスをやろうかのぅ』
その意志の強さ、どれだけ恋心があったのか神は興味も持った。
いくら好きな人が居ようとも、まさか成功するとも思えないような異世界への転移を試みようとするその力や、異世界転移をした際にもらった力を受け入れるだけの大きな器。
それだけの人物なら、チャンスをやってもいいと神は思えたのである。
「チャンスですか?」
『そうじゃ。とは言っても、今すぐに彼の者・・・・お主が愛した男の元へそのまま転移・もしくは転生をさせることはかなわぬ。ある程度、お主自身にも力がないとできぬのじゃよ』
照代は最初の異世界転移の際に力を得ており、その力は彼女にしっかりと根付き、もはや彼女の一部と化していた。
だが、それが問題だと神は言う。
『力があるのは別に良いのじゃが、完全にお主と一体化しておらぬ。その状態であの世界へ移動させたらそれこそ世界そのものが持たん可能性があるのじゃよ』
あの時、輝也同様に特に何も身についていない状態であれば問題はなかった。
いや、世界をまたぐ行為自体はそこに負担をかけることになるのだが・・・・・それは微弱たるものとして考えればよかった。
ただ、今照代には身についているチートのような力が残ったままであり、その力が世界に悪影響を及ぼす可能性があると神は言うのだ。
『せめて・・・・残り数百年ほどかのぅ。そのぐらい時間をかけぬとお主の愛した人の世界へは転生させられぬ』
「そんな!?」
その言葉に照代はショックを受けた。
『まあ待て、確かに後数百年は時間をかけねばならぬ。じゃが、別に彼がいる世界での基準じゃなくても良いのじゃ。さっき説明したじゃろう?世界ごとに時間軸は異なるのじゃ』
「つまり・・・・仮に私をどこかの世界にいったん置くとして、その世界で数百年たっても輝也さんがいた世界からしてみればたった数分程度の時間しかたっていないようなことができるという事ですか?」
『そういう事じゃ。呑み込みが早いのぅ』
照代の理解力に神は感心した。恋する乙女、流石その理解力も恋心によるものであろう。
『ま、簡単に言ってしまえばどこか時間軸としては急速に進む世界にでも行ってもらって、そこで過ごしてもらえばよい。ワインのように魂をゆっくりと熟成させて、そこから転生すれば・・・』
「問題がないってことですね!!」
キラキラと希望に満ち溢れた目で照代は喜んだ。
『ただし、一つ問題があるとすればのぅ・・・記憶が消える可能性がある』
「・・・・え?」
その神の言葉に、照代は固まった。
申し訳なさそうな顔を神はしつつも、説明を続ける。
『本来世界を渡るという者はそういうようなものじゃ。輝也とやらはまあ色々と事情があって大丈夫じゃったが、お主の場合はそうもいかん。世界をまたぐ際に負荷がお主の魂にもかかるので、下手すれば魂そのものが消滅する可能性があるのじゃよ。軽くても・・・・・記憶が無くなるじゃろうな』
そこまでのリスクが本来転生にはあるのだ。
そのことを聞き、照代がとったのは・・・・・・
「・・・・いいです。それでもやります!!」
『本当にいいのかのぅ?』
「ええ、たとえ記憶があろうがなかろうが私は心に誓ったんです!!絶対に愛する者の元へ向かうのだと!!」
力強く照代は宣言をして、腕を掲げる。
もうこの際どうなってもいい。好きだった人の元へ行けるのであればと、照代は心に、嫌魂の底から誓ったのだ。
『・・・・くくく、ふははははははは!!面白い!!面白いのじゃ!!その愛する人への思い、記憶が消えても絶対求めるじゃろうし良いじゃろう!!』
神はその照代の様子を見て、思わず笑った。
悪い意味で笑っておらず、その度胸と意志の強さに物凄く興味をひかれたのだ。
『では、この際お主の魂を・・・・そうじゃな、その魂の状態が良くなるまでのタイムリミットも測れそうなちょうどいい世界があるのじゃ。そこに転生させて、そこで学び、力をつけるのじゃ!!愛する者のためにはお主自身生まれ変わって鍛え直すが良い!!』
シッカリと神は世界を選び、照代を転生させる用意をする。
その醸し出される雰囲気はまさに神としての神威があり、本当に神だったのかと照代は改めて思った。
『転生先は普通の田舎の農村じゃが、お主ならそこから力を積み上げることができるじゃろう。魂の事じゃし、念のために我がたまにお主にその世界の情勢とかも送ってやるのじゃ・・・・・そんな送る機会があるかもわからんし、お主の記憶は消えているじゃろうけどな』
「どうもありがとうございます!!」
神の言葉に感謝しつつ、照代は輝き始めた魔法陣の中へと入れられた。
『お、そうじゃ。お主の今持っておる力、「魔力無限」に「真実の瞳」、「魔力授与」、「絶対状態異常無効」と「絶対気配遮断」はそのままにしておくのじゃけど、そこから考えるに魔女でも目指せばいいのではなかろうか?そうすれば、魔法で愛しい相手の手助けもできるじゃろう。・・・・とは言っても、記憶が消えておるじゃろうからその道に行くかはわからぬ』
「大丈夫です、記憶が無くなろうとも私は愛しの人の為に何になろうと努力いたします!!」
そう照代は言い残し、神によって転生させられるのであった。
すべては、愛のために・・・・・・・・
・・・・それから記憶を失った照代は生まれ変わった先で魔法の才能が開花し、独学で魔法を学び始め、大魔法使いとまで呼ばれるようになった。けれども、人の欲望などを嫌って人里離れた山奥へと籠り、そこでようやく神からの連絡を受けたが・・・・・それがまさか世界の崩壊だとは思いもしなかった。
照代、いや『アンナ・レビュラート』としての彼女の人生はそこから始まったのであった・・・・・・
そして、プロローグへと話はつながる。
次回から本編へ戻ります。彼女の大魔法使いになるまでの道のりは・・・・機会があればですかね。