サイドストーリー:彼女はこうして・・・・ その1
本日2話目?設定だったから数えないのかな?
・・・照代は現在、魔王城の湯船に浸かっていた。
この後行われるある儀式のために、こうやって身を清めることは必要なことだと魔王が話していたのである。
「ふぅ・・・・」
ゆっくりと息を漏らし、そっと目を閉じる照代。
魔王城でずいぶん過ごさせてもらったのでこの場所に愛着がないわけではない。
優しくしてくれる魔王や、その部下たちにはずいぶん助けられたものだと彼女は思った。
勇者召喚とやらで異世界に呼ばれ、様々な欲望を見てしまい逃げ、その矢先で魔王に出会って今がある。
思えばものすごいような目に遭っているのではないかと照代は改めて認識した。
・・・・一緒に転移してきたクラスメートたちはもうこの世にはいない。
器に合わない能力が与えられ、皆耐えきれずに爆発四散という悲惨な末路を送っている。
そのことで各地で様々な問題が起き、人間同士での争いの方が活発化して魔王のところに攻め入る動きが現在鈍くなっているのだった。
ただ、沈静化したら今度は魔王城の方に同じようなことを仕掛けてくる可能性があるのだが・・・・
「それはもう無理だろうねぇ。その異世界から転移させてくるための道具や書物一式、すべてこちらで確保しているからねぇ」
「どうやって確保したのですか?」
「部下たちに頼んで、こっそり忍び込んで偽物のでたらめな品々と取り換えているんだよ。もう二度と同じようなことが起きないだろうし、この儀式で使用した後はすべて焼却処分するのさ」
風呂から上がった後、儀式用の薄い布の衣服に着替えているときにその疑問を魔王に投げかけてみたが、心配ないようである。
儀式の用意が整い、魔王城の地下にはすでに魔法陣やら様々な準備が整えられていた。
「さてと、それにしても愛しい人の為に無理やり逆転移・・・・それも、ただ逆に行くのではなくその人のところへ無事に向かえるようにする転移の儀式は、はっきり言って前代未聞の事だ。下手すりゃ永久にさまようことになるかもしれないし、このまま城に過ごして、適当にお見合いでもして寿退職・幸せな暮らしとかもできるが・・・・・」
「少なくともお見合いはないですかね。もう覚悟はできていますし、このままお世話になり続けるわけにもいきません」
魔王が最後の確認として意志を確かめてきたが、照代の決意は堅牢な城壁のように固かった。
この世界このまま過ごしていても良いのかもしれない。
けれども、それで本当にいいのだろうか?
照代は考えに考え抜き、魔王にこの転移の儀式をお願いした。
魔王が提案してきたものだが、前例がない儀式であり、一回きりの大博打となる儀式である。
何しろ失敗すれば・・・・・未来永劫さまよう羽目になるかもしれないのだ。
それでも照代は・・・・あの日、一緒にこの世界に来ることがなかった月夜輝也の事を思うと迷わなかった。
告白もできずにこのまま終わりたくもなく、絶対にその今彼がいる場所へとたどり着いてみせるという誓いを立てて儀式に臨む。
「・・・ふぅ本当に心だけは誰にも負けないほど強いな小娘・・・いや、照代よ。お前と一緒に過ごした時間は、魔王城にいた一同にとって楽しいものであった。もしも、またこの世界に来ることがあったとしたら・・・ここに戻ってきておくれ」
優しい目をして、魔王は照代の名を呼んだ。
今までは小娘とばかり言っていたが、こうして名前を呼んでもらえたことからどれだけの信頼があったのかが照代にはよく感じられた。
魔法陣が輝き始め、儀式は進んでいく。
周囲にいた今まで世話になった魔王城の人たちが魔法を詠唱をして、儀式に必要らしい激しい踊りをして、儀式のために足元に書かれた魔法陣の輝きがどんどん強くなっていく。
そして、その輝きが最高潮になったところで・・・・・・照代の意識は途切れた。
そして、魔法陣の輝きが失せたときには、彼女の最後に身に着けていた薄い布だけがその場に残ったのであった・・・・・・・・
激しい踊り・・・・どこかカグヤがいる世界とのつながりを感じるかもしれない。
このサイドストーリってもう一人の主人公みたいな話だけど、分けた方が良さそうかもしれない。




