#35
なにやら事件の匂いが・・・・
SIDEリース&ミルル
「おや?」
「あら?」
・・・・首都ヴァルガスにある、不審者を捕獲した際に連れてくる場所としてある衛兵たちが駐在している詰所にて、リースとミルルは互いにそこで会った。
リースの方はぼっこぼこになって急所が赤く染まったフードの人物を引きずっており、ミルルの方はナイトマンが関節技を極めまくって体のあちこちが変な方向に向いた人物をナイトマンが引きずっていた。
「そっちの方でもそんな不審者が出たのか」
「ええ、わたくしが寝ている間にナイトマンがぼっこぼこにした様ですけどね」
『我輩の護衛対象でもあり、主でもある王女様に不審な目で見ていたでありますからな。少々首をあらぬ方向へ曲げて問い詰めて見たら、どうやら攫う事を目的にした様であります】』
お互いにどうやら似たような目的を持った相手を成敗したようである。
「僕に、第5王女様であるミルル・・・・とくれば」
「当然カグヤの方にも同じような人が来ていそうですわね」
情報を軽く交換した後、リースとミルルは互にその結論へとたどり着いた。
けれども・・・・・
「なんでだろうか。あいつに関しては全く心配がいらないような気がする」
「・・・同感ですわね。まだその実力をすべて見てはいないのですけれども、大丈夫な気がしますわね」
お互いにカグヤと一緒にいた時間があり、そのことでなんとなく共感を二人は得たのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
SIDEカグヤ
「はくしょん!!」
『カグヤ様、かぜですか?』
「いや・・・なーんか噂されていたのかな?」
リースとミルルがカグヤの事について話していたころ、カグヤはくしゃみが出た。
「よそ見している暇があるかぁぁ!!」
その隙を狙って、何やら殴りかかって来たフードをかぶった人物が来たが・・・
「遅いな。父の剣術での詰め方の方がよっぽど早かったぞ」
そうカグヤはつぶやき、その拳をかわして・・・・
「加減攻撃!!」
ばきぃぃっつ!!
「ぐぼぉぉぇぇ!?」
その攻撃した輩の脇腹にこぶしを当てたのだが・・・・・・明らかに人体から出てはいけないような音が鳴った。
そのまま殴られた相手は吹っ飛び、数度ほど地面をバウンドした後動かなくなった。
『あー・・・・肋骨の数本骨折、内臓出血、あと衝撃によって打撲切り傷・・・重症ですね』
「ありゃ?今度はうまい事気絶だけに出来たかなと思ったんだが・・・・」
加減攻撃を練習しているんだけど、どうもうまくいかない。
アンナが診察した結果、撃退済み襲撃者たちの容態は今のところ重症7割、ギリギリ軽症1割、男としての死亡1割、瀕死1割である。
うん、急所攻撃はやめておこうか。やっている側が恐怖を感じたよ。
あと、「魔拳闘士の才能」を利用して、微弱な電撃を纏わせて殴ったら殴る瞬間についうっかり調節が狂って焦がしたけど・・・・・生きているからセーフかな?
現在、カグヤたちがいるのは路地裏であり、そこには10人以上ものフードをかぶった人物たちが積み上げられていた。
どうやらカグヤを攫うことを目的にしているようで、それなりに腕が経つ者ばかりだったらしいが・・・・・シグマ家での特訓を受けていたカグヤにとっては加減練習用の実験台程度にしか思えなかった。
ついでに、少々才能もいくつか「才能学習」によって得られるかなーと思っていたのだが、収穫はゼロ。
そこは残念である。
「にしても、なんでまたこれだけの不審者たちが攫う目的で来ているんだろうか?」
『人質がいるぞとか言ってましたけど、リースさんやミルルさんの方にも多分似たような人たちが向かったのでしょう。ですが、あの二人がそう簡単に攫われるはずはないでしょしね』
とりあえず怪しい陰謀の匂いがするので、捕らえることができるのであれば、その情報を吐き出させるために捕まえておくことには損はない。
加減用実験台としても働いてくれたし、これである程度常識ある加減の仕方を学べたかな。
『・・・・・それはどうでしょうかね?ガイド役としているんですけど、常識的にはまだシグマ家レベルですよそれ。どこでガイドを間違えたのが悔やまれます』
「まだそこまであるのかよ」
とにもかくにも、これで襲ってきたやつらは全員捕獲で来たようである。
「で、課外学習で出てきた新入生たちをお前たちは人知れず攫っていあっというわけか」
「へい、その通りでございやす」
まだ軽症な人を起こして、尋問した結果ある事が分かった。
どうやらこいつらはとある集団の一員らしく、将来的に邪魔になりそうなのがいるという事で今年の学校の新入生たちを攫いに来たらしい。
課外学習のタイミングに合わせてきたので、おそらく学校内にも内通者がいる可能性があった。
「しかも十数人程すでに拉致済みってか」
貴族の子が多いようで、もしかしたら身代金目的もある可能性がある。
「とりあえず衛兵がいる詰所の方へ向かうか」
『カグヤ様、こいつらどういたしましょうか?』
「そりゃ不審人物として突き出すだろ」
『この人数を?』
ふと見れば、倒れている襲撃者たちの数は十数人程。
これだけの人数を引きずるのも疲れるし・・・・
「よし、逃げ出せば社会的な死を迎えるように施しておいて、後でここに引き取りに来てもらおうか」
『というと?』
「とりあえず全員素っ裸にした上に落書きでもしておくか。重傷者には一応それなりに気を使っておくけどね」
(((((ひっでぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?)))))
カグヤのその言葉に、意識がもうろうとして残っていた襲撃者たち全員がそう思ったのであった。
「あ、肝心の落書き用の道具がないや」
((((助かった・・・・のか?))))
『カグヤ様、文字を直接彫り込める魔法を教えましょうか?刺青のような物ですので、消えることもありません』
「へー、そんな魔法もあるのか。じゃあアンナ、それを頼む」
((((助かってねぇぇぇぇぇ!!))))
油性ペンならまだしも、消えない入れ墨でどのような落書きを施されるのか・・・・・襲撃者たちは、カグヤたちを敵に回したことを一生後悔するのであった。




