#34
今回主人公不在
主人公不在回って悲しい・・・・
SIDE リース&ニャン太郎
「はむっ・・・・うまいな。こういうのを食べると貴族と平民では食事にかける思いが違うとよくわかるもんだ」
『ニャーン』
屋台で買った焼き鳥をリースとニャン太郎はほおばりながら、近くにあったベンチに腰をかけていた。
リースの実家はエルソード男爵家であり、貴族の爵位では下の方になるのだが、それでも貴族家としては立派な家であった。
いろいろな事情があり、実家の中での扱いは良いとは言えない物ではあったが、食に関しては特に困らない環境だっただろう。
だが、なんというか選民主義とも言うような人がその家にいたので、わざと貴族だと強調するようなところが多くあった。
その中でも、食事に関しては見た目だけは豪華なモノであっただろう。
だが、味に関しては今食べているこの屋台の焼き鳥の方が何倍もうまいとリースは感じていた。
「むやみやたらに貴族らしくと考えていても、ただ見た目だけで取り繕うのはだめなことだよな・・・」
ぽつりとつぶやくリース。
入学以前までは実家での扱いは良くない物であったとはいえ、その似たような選民主義をリースは持っていただろう。
だが、カグヤとの決闘の後で起きた周囲の変化や、カグヤとの関わりをしていくうちに、その考えは変わっていった。
「貴族だけでもなく、こうして平民が作るモノでもいいものができる。権力とか位なんかよりもこうした能力とか、その人柄を重視したほうが良いのかもしれない・・・・」
徐々にというか、貴族ではない者たちにリースは目を向けていく。
そして、その彼らの素晴らしを感じていくのと同時に、実家の・・・選民主義の様な家のおかしさを同時に変えていきたいとも思えるようになったのだ。
『ニャー、ニャー・・・・ニャ』
と、焼き鳥を美味しそうに食べいたニャン太郎がふと警戒するかのように食べるのを止めた。
その様子を見て、リースは同じく食べるのをやめてその場から去る。
そして、歩いてわざと路地裏の人通りが少ない場所へ向かった。
「・・・・さてと、この辺りでいいかな」
路地裏の行き止まりになっているところに立ち止まって、リースはくるりと後ろに振り返った。
「そこで隠れているやつ出てこい。ニャン太郎がすでにお前の事をお見通しだったぞ」
『フ―ッツ!!』
曲がり角の人が隠れることが出来そうな場所にリースは声をかけた。
その横でニャン太郎が毛を逆立て、警戒と威嚇を両方ともしていた時であった。
「・・・・ありゃぁぁ?もうバレたのか」
そう言いながら、そこからフザケタ口調でフードを深くかぶった人が出てきた。
肩幅が広く、おそらく男だと思える低い声である。
「僕のこのニャン太郎は、あの悪意ぎっしり胸に詰めた本の女に腑抜けにされていることがあるが、僕に対しての悪意やそう言った類の物を感じ取って知らせてくれる大事な魂魄獣なんだ。それで、ニャン太郎が警戒をし始めたところから、お前の存在はすでにバレバレだったという事なのだよ」
「ほほぅ、でもね?なーんでそれが分かっていて、いかにもこうやって攫ってもバレなさそうなここに来るのかなぁ?抵抗をあきらめて、せめて騒ぎにならない様にと思ったのかい?」
フードを深くかぶっているようだが、目の前の男の顔がニマニマといやらしそうな顔をしているのがリースにはわかった。
そして、その言葉は・・・・
「半分正解、半分間違いかな?騒ぎにならないようにというのは当たっている。下手に騒ぐとあたりに被害が出るからね。そんでもって、ここにいるのは本物の僕かい?」
「んん?どういぅことだ?」
リースのその言葉に、フードの男が首をかしげた時であった。
「・・・つまり、今ここで僕が貴様を捕らえるからだ!!先手必勝急所蹴りっ!!」
「いっ!?」
突如背後から聞こえた声に、フードの男は慌てて振り返ったが時すでに遅かった。
強烈な蹴りが男としての急所に叩き込まれたからである。
ぐしゃぁぁ・・・・・と何かがつぶれるような音がした後、悲鳴を上げる間もなく男はそのままあぶくを吹いて、その場に気絶して倒れ込むのであった。
「ふぅ・・・一体いつから僕がそこにいると錯覚していた?」
倒れ込んだフードの男を見下ろして、リースは本来の姿の状態でトドメにもう一撃急所を丁寧に踏み抜くのであった。
「まったく・・・・いったん解除してこうしてやるのって大変なんだからな?人に見られないようにしたのは僕の為でもあったんだよこの腐れ外道さんや」
そうつぶやきながら、リースは男を引きずる。
まだ他に何か隠していることがありそうなので、とりあえずこの町で警備をしている衛兵たちがいるところまで向かうのであった。
なお、念のために顔面を数発ほどぼこぼこにして、暴漢を返り討ちにしたという感じに施しておいた。
股間だけ血みどろになっているのもアレだし、見た目に違和感がないようにと考えただけなのだが・・・・・
やはり、リースも何処かズレている感覚があるのだった。
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SIDEミルル&ナイトマン
『王女様・・・・もうそろそろ起きないと皆で決めていた集合場所につく時間に間に合わないでありますよ?』
「んー・・・・あと5分」
『それ寝ているときのお約束でありますよね?』
喫茶店での昼食後、ミルルはふと眠気を感じたのでこうして昼寝をしていた。
人通りがあるところのベンチに横たわり、ナイトマンの鎧の中に詰め込んでいた枕を取り出して快適な睡眠を現在楽しんでいたのである。
一応、ナイトマンがそばに立ち警戒しているので怪しい輩は声をかけようともしてこなかった。
『まったく・・・普段はつんつんしている人でありますのに、寝ている時だけは年相応になるでありますなぁ』
ミルルの魂魄獣であり、護衛も兼ねているナイトマンは思わずそうつぶやいた。
第5王女であるミルルに仕えており、普段から気にかけてはいるのだがこうしてゆったりとするミルルの姿を見て、顔があれば優しい笑みを彼はしていただろう。
ミルルは普段、王女としての教育を受けていたのでその感情の表し方はその教育の通りである事が多い。
自分からきびきびと動き、人を見抜く目はあるのだが・・・・どこか気を這っているようにもナイトマンは思えたのである。
いや、魂魄獣として・・・・そのミルルの魂に最も近い者としてその通りだと思えたのである。
ミルルの立場は第5王女。王位継承権も低く、そのせいで他国へ嫁がされる可能性が高い立場でもある。
そして、第5王女とはいえ王族とのつながりを求める者たちが一番狙いやすい立場にあるというのもまた事実。
貴族の中でも、王族は最も欲望や陰謀などに巻き込まれやすい存在。
その中で、ミルルはそう言ったモノに対して警戒を人一倍強め、気をはって普段から一生懸命生きているのだ。
そんな王女でも、最近少し変化が表れていることをナイトマンは感じる。
あのカグヤとかいうシグマ家の三男にして、その力は未知数の存在。
そんな彼に対してミルルは最初は警戒をし、よからぬことをしないか不安なので自ら見張るとまで言って、そのことを実行していた。
けれども、バレた後もなお堂々と接しているうちに、自然とミルルはカグヤの周囲ではどこか雰囲気が柔らかくなったようにナイトマンは思った。
今まで王城で過ごし、様々な欲望の渦巻く中ミルルの周りにいたのは、ナイトマンぐらいであった。
だが、こうして学校で過ごし、同年代の同じような友を得て・・・・心境に変化が現れたのであろう。
ナイトマンはそう思い、そのミルルの心の変化に喜びつつも、どこか兄の様な寂しさを感じもした。
『・・・・おや?』
ふと、考えているとナイトマンは気がついた。
先ほどからこの人通りのある道で、全く動かない者が自分たちに対してはなっている視線を。
『ふむ、20秒ほどでありますかな・・・・?』
ベンチで寝ているミルルをチラ見して、その怪しいものを捕縛して戻ってくるまでの時間をナイトマンは素早く判断した。
第5王女を護衛できるように訓練もしており、鎧の身体とはいえ身軽に動けるナイトマン。
瞬時にその場を動き、その不審者が気がついたときには、その頭を地面にたたきつていたのであった・・・・
それぞれで起きていたことは良いとして、次はカグヤだけど・・・・
何だろう、この襲撃を仕掛けてきている人たちって皆貧乏くじを引いているようにしか感じられない。
リースの方に関しては男性の方々がドン引きしつつ同情するレベルだけど・・・・書いていた作者も同情したくなりました。え?リースに「ドSの才能」なんて付けたおぼえないんだけど?
次回に続く!!
・・・なお、ナイトマンは全身鎧の物質型魂魄獣ですが、その体の中身はないためミルルの私物入れにもなっております。便利な収納箱みたいな感じです。




