#31
巻き込まれの才能・・・・忘れてませんよね?
SIDEカグヤ
『本日の授業は、課外学習でーす!!』
学内に突如として校長からのその声が響き渡り、、今日カグヤたちは校内ではなく、この首都ロウソリアンの街道や区画を自身の目で見て回り、歩いて決められた場所を見て学ぶことになった。
対象は今年度入学した1年生全員であり、各クラス合同でもあるので別々のクラスでも一緒に班として見て回ることが可能である。
貴族の子息や平民の子などと身分は違えど、皆公平に行われる授業であり、仲がいいところはその人で集まったり、これを機会に一緒になって親睦を深めようとするような人たちも多かった。
「で、最低人数が3人ほどなのだけど・・・・・最低人数ぴったりという事か」
「ちょうど動きやすく、まとめやすい人数のようだが」
「わたくしたちに他の人が全く集まりませんわね・・・」
カグヤ、リース、ミルルの三人は思わずそうつぶやいた。
シグマ家と迂闊なトラブルを犯したくない人、そのトラブルを起こしてもなお一緒にいる相手に近寄りたくない人、第5王女という身分だからか見た目が良くても権力がなさそうだからと近寄らない人と言った具合に、今回は、ものの見事にいつも一緒に活動する3人だけという事になった。
『引率はなく、一応護衛とかもされているらしいですけどね。不安なので、私は一旦人化しておきますね』
子供三人だけの状態を考慮して、アンナが本の姿から魔女の姿へと変化する。
魔女の姿となったアンナは大人びた容姿であり、そのたわわな胸元に目を奪われる人もいるのだが、そこにはすでにリースの魂魄獣であるニャン太郎が挟み込まれていた。
「いつの間に人の魂魄獣をその脂肪の塊に挟んでいるんだよ!!」
『手に持とうかと思ったんですけど、こっちのほうが楽ですもん。油断していたリースさんが悪くありませんかねぇ?』
案の定、リースとアンナが互いに衝突しあう。
仲が悪いのはすでにおなじみなのでそれは別にいいとして。
「ミルルのその魂魄獣ってなんだ?」
「わたくしを守るのにふさわしい、騎士の鎧で出来た物質型の『ナイトマン』ですわ!」
どやぁとでも言いたげな、自慢げな顔をしながらミルルが指さしたのは、彼女よりも大きな、鎧の騎士の様な見た目をした魂魄獣であった。
物質型であり、人型に近いけれどもその中身は空っぽで、いざとなったらその中に潜り込めば安全なのだとか。
・・・・・だから護衛がミルルについていないのでは?
立派な鎧の騎士が横に居たらそりゃ襲おう撃と考える人もいったん思考して辞めるよな。
『我輩!!ミルル第5王女様の護衛兼魂魄獣のナイトマンであります!!今後どうぞお見知りおきをしてほしいであります!』
中身はないけど、なぜかしゃべることが可能な魂魄獣のようである。
その防御力とかもそんじょそこいらの鎧以上の強度があり、ミルルが入学するまでは様々な体術や剣術を学ばせてもらって、徹底的に護衛に徹するのだとか。
『ふーん、私はアンナよ。カグヤ様の魂魄獣であり、この姿の時は魔女・・・魔法でサポートするの。主は違えど、一緒に守るならどうぞよろしくね』
『わかったでありますアンナ殿!!我輩も王女様たちを守るのに全力を尽くすであります!!』
アンナとナイトマンが互いにあいさつを交わし合うけど‥‥これはこれですごい光景なような気もする。
そしてアンナ、その胸元で挟まれているニャン太郎がなんか色やばくなってますよ?圧死させかけていないか?
少々不安を抱きつつも、課外学習をカグヤたちは始めるのであった。
・・・なお、案の定ニャン太郎はその数分後にぽっくりと昇天しかけていたという。脅威の胸囲とはまさにこのことなのだろうか。
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SIDE???
「本日は晴天、あちこちに未来あふれる若者たちがいるが・・・・将来的に我々の障害となろう者たちもいる」
ロウソリアンのとある一角にある建物の中、不気味なフードをかぶった集団がいた。
「我々の大いなる目的のためにも、その将来の不安分子の芽を摘み取らねばならん!!そこで、運よくどうやらその不安分子共が校外に出ている今こそその摘み取るチャンスではなかろうか!!」
リーダー格であろう人物がそう叫ぶと、周囲の他の者たちも同様の気持ちだとうなずく。
「そして今こそ!!芽を排除すべき時!!誰にも悟られぬようにこっそりと捕え、その不安分子共を隷属化させてしまうか、もしくは殺害して亡き者にしてやるのだぁ!!我々の背後にはその不安分子を心配する貴族も付いているので恐れることはない!!」
「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
雄たけびを上げ、そのあとはこっそり建物から出ていくフードをかぶった者たち。
密かに水面下ではそのような事が起きていたのであった・・・・・・・・
水面下で動く者たちと、課外学習で散らばる者たち。
果たして、何が起ころうとしているのだろうか。
次回に続く!
・・・ナイトマンって名前はミルル王女のネーミングセンスによって付けられました。「我輩は~であります」口調にしたけど、某カエルを連想してしまう。最初はもっと騎士道的な口調を考えていたのにどうしてこうなった?