#30
予約投稿のありがたみってあるけど、書けたらその時にすぐに出したいと言う思いもある。
SIDEカグヤ
「・・・で、結局何で一緒に行動してくるんだよ」
「バレたらバレたで、この際堂々としたほうがいいと思ったのですわよ」
「すっごい堂々しているな・・・・」
数日後、ミルル王女がカグヤをじーっと見ていて、監視していた犯人と分かったのだが、別に害をなそうという事もなく、ただ本当にその力を不安視して感じしていただけなので、特に何もカグヤたちは咎めることはしなかった。
けれども、王女は監視がばれたという事を前向きに受け止めたようで、いっそのこと堂々として、カグヤたちに何かと話しかけて関わるようになってきたのである。
なお、このシグマ家の三男に第5王女が監視という事を堂々と言い切り、そして今もこうして一緒にいて監視をしているらしいという事が、ダースヘッド国王の耳に入り、悩みの種が増えてさらに胃痛が悪化したという噂があった。
昼休み、次の授業まで時間があるのでおしゃべりをすることになっても、その場にミルル王女が紛れこんできた。
王女をいちいちつけるのもいらないそうで、堂々としているからそっち側も対等に堂々としていてもいいと言うので、王女様呼びはなくして・・・
「それにしてもカグヤ、あなた本当に規格外すぎるわよ?シグマ家の者が元からいろいろとおかしいところがあるとはいえ、才能あふれすぎて人間やめているんじゃないかと疑いたいのよ」
「さすがに人間やめていないぞ。才能があるだけでやめているとか言われるのは心外と思えるな」
人外と断定されたくはない。
『・・・あ、でも神の話だとカグヤ様の肉体って少々手が加えられてますよ。なので、ちょっと的外れでもないらしいんですよね』
今のアンナの言葉も聞かなかったことにしたい。
「まあ僕もミルルと同じ意見だな。同じような『魔拳闘士の才能』を所持しているのはあの決闘の時に判明しているけれど、威力が桁外れすぎるだろ」
「単純に鍛え方の違いじゃないか?才能が同様の物でも、努力によって差が出るというしね」
『カグヤ様の言う通りですよ。同様の才能を所持していても、個人差はきちんと出ます。鍛え方や努力の仕方、効率、コツなんかも人によって違いますしね。あと、カグヤ様を鍛えた家の方々も桁外れな人だったというのもありますが・・・・・』
アンナのその言葉に、全員黙り込む。
カグヤを鍛えあげているのは・・・・シグマ家の人達だからである。
「シグマ家が恐れられるほど強いのって、もしかして代々無茶苦茶な特訓をさせられてきているからか?」
「納得いきますわねその仮説。確実ともいえる事ですわ」
「実家の事だけど、なんだろう否定できない」
3人で思わず考えて、ぶるっと震えた。
体感しているカグヤにはまだその規模はわかるとはいえ、リースとミルルはシグマ家のイメージから余計にエグイ想像をしてしまうようである。
「魔法を連発して狙われたり、剣術では本気で真剣なんかも使われたり、後他にもいろいろやらされたからなぁ・・・」
「それはなんというか・・・・・ご愁傷様だな」
「何でしょうか、カグヤが不憫に見えてきましたわね」
当時の事を思い出して遠い目をするカグヤに対して、話しを振ったはいいがなんか哀愁を漂わせるカグヤの姿に、思わずリースとミルルの二人はカグヤに励ましの言葉をかけるのであった。
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SIDEダースヘッド国王
「はぁぁぁぁぁ、胃痛が猛快楽になって来たかもしれぬな・・・」
「陛下、それやばい末期症状では?」
王城内、国王の執務室で耐え息を吐きながらそう言った国王ダースヘッドに対して、その場にいた臣下の一人が冷静にツッコミを入れた。
「シグマ家やら、他国との外交で戦争を起こしそうで回避できないか模索中の国とか、王位継承権で甘い汁を狙おうとするバカたちの粛清とか・・・・そこへさらに、我が娘の第5王女でもあるミルルがまさかのシグマ家の三男に付きまとい始めるとはな・・・」
「恋愛感情でもなく、正義感というか不安視で動き、そしてそれをその三男であるカグヤ殿に見破られたら今度は堂々と関わりまくっているそうですからね」
「胃に穴どころか、もう溶けてきているのかもしれぬ・・・・髪も最近朝起きたら抜け毛がひどくてな・・・」
悲痛な顔の国王ダースヘッドに対して、その場にいた全員が同情する。
何もかも一人で抱え込む必要はないのだが、この心優しき陛下はそれでもすべてに一生懸命に取り組んでくれているのだと尊敬の念を込め、その職務を一生懸命こなし、少しでも国王陛下の負担を減らそうと皆頑張るのであった。
「・・・それはそうと国王陛下、その第5王女様の事ですがもうそろそろ婚約者を決めてはいかがでしょうか?」
重い空気を換えるためにと考えた家臣の一人がダースヘッドに尋ねた。
王族の者は王位継承権があるが、その王族から生まれる子にもまた王位継承権がある。
つまり、王族に入ることができれば、自身がその王の親として権力を振るえるのではないかと企むような輩もいるのだ。
その為、そう言った欲望による企みを防ぐためにも、早めに王族は婚約相手を決定させられるのである。
他の王子や王女は婚約者が厳正な審査の下にて決定されていたのだが、まだ第5王女であるミルルには婚約者話はなかった。
「今のこの状況から言って、何とかそのシグマ家の三男・・・カグヤとやらにでも継がせたいとは思うが、出来れば相思相愛になってくれないと心情的に悪いし、そもそも反発もありそうだからなぁ・・・・うう、胃痛が・・・」
考えるだけで、国王の胃には穴が開いたような痛みがするのであった。
ミルル王女を婚約者にと望むような貴族はいることはいる。
王位継承権の順で言えば低いのだが、それでも王族の仲間になれると考えて申し込んでくる輩はいるのだ。
中には、他国の王子とかもいたりするのだが・・・・・ダースヘッド国王としては、自身の娘息子にはできるだけ望んだ相手と結婚してほしいと思っていた。
カグヤも貴族であるシグマ家の三男であり、身分的には特にこれと言った問題は起きないだろう。
うまいこと行けばシグマ家との関係も強化出来て、もしかしたら今よりも国により従ってくれるかもしれない。
だが、そんなうまいこと行くような気もしないし、戦略を立てて相思相愛にしようとすれば・・・・シグマ家の方から対策をたてられてしまう可能性の方が大きかった。
人為的に恋をさせるのは嫌うようで、自然に恋が起きるようにしたいようなのだ。
その為、どうした物かとダースヘッド国王は頭をかいて、胃の付近を抑えて悩むのであった。
・・・・頭をかいている間にも、ハラリハラリと抜け毛が落ちていたが。徐々に後退しつつあるその様子に、臣下一同同情せざるを得なかったという。
・・・ダースヘッド国王に良い胃薬と育毛剤をあげたくなる。毛根断絶前にどうにかすべての悩み事とかが解決すればいいんだけどね。