#29
もうそろそろ30話か
リースの協力を得て翌日、早くもその時が来た。
じーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっつ
「・・・そこだぁ!!」
『追いかけますよ!!』
「おとなしくしろやぁ!!」
「!?」
ようやく視線の主の位置がわかる居場所に来たところで、カグヤが合図を出すとともにリースとニャン太郎、アンナがその視線の主へととびかかった。
なお、アンナの姿は本の状態から人の・・・魔女の姿になっており、きちんと腕で捕獲できるようにしている。
本の姿のままでどうやって拘束しろという話になるからね。
察知されて逃げようとした視線の主は、すぐに前方をアンナとニャン太郎が、後方をカグヤとリースによって逃亡を防がれてしまった。
「さぁ!!いったい何の目的でじっと見てきたんだ!!」
ずばぁ!!という効果音がなりそうな勢いで、カグヤはその視線の主を指さし、その姿をよく見た。
同年代ぐらいの少女のようだが、金髪のロングストレートであり、目の色は赤い。
美少女・・・と言っても良いのかも知れない部類であった。
「・・・・降伏ですわー!!」
指をさされ、観念したかのように両手を挙げて、その少女はそう叫ぶのであった。
・・・はた目から見れば、少女を追い詰めている男子2人という構図にもなりかねないけどね。
「・・・・じーっと見つめて、それでいて逃げてすみませんでしたわ。わたくしの名前はミルル・フォン・バーステッドで、このバーステッド王国の第5王女なのですわ」
「「『第5王女様!?』」」
まさかの第5王女に、カグヤたちは驚いた。
一歩間違えれば不敬罪とかで訴えられそうなものなのだが、今回の件はこのミルル王女がやらかしたようなものなので、特に訴えることもしないらしい。
「なんでそんな第5王女様が俺の事を見ていたんだ?」
「それはですね・・・・シグマ家の方々の事はかねてより聞いていて、その中でもまさにシグマ家を体現したかのようなカグヤ、貴方に興味を持ったからですわ」
・・・事の起こりはカグヤとリースの決闘騒ぎだという。
その決闘の日、彼女は風邪で寝込んでいたようで、決闘そのものを見ることはなかった。
けれども、完治した後興味を持って決闘場を見てみれば修理中であり、頑丈に作られていたはずの決闘場がボロボロ。
その惨状を作り出した人が気になって調べてみたところ、すぐに答えがわかって、カグヤがその惨状を作り出したのだと理解ができた。
そして、カグヤがシグマ家の三男ということもついでに知って・・・・・
「シグマ家はこの国に連ねる貴族の中でも特に強大な力を持つ一族で、その力ゆえに他の貴族からも恐れられていることがあります。誇張した噂が流れているだけではないのか、わたくしめは思っていたのですが、あの決闘場の惨状から真実だとその時理解したのですわ」
強大な力を持っているのは本当であり、しかもカグヤの場合はまだ10歳代という年齢にして、かなりの力を秘めているだろうということを彼女の勘がそう告げていた。
他の長男、次男に関しても調べてはいたが、物凄く目立った行動をとっていたのはカグヤだけであり、力から見ても放っては置けないような相手。
その為、自分が監視をしてみて、何かやらかさないように見ていたのだとか。
「強大な力はその持ち主自身によって、善にも悪にも染まる代物。貴方が悪い道へと行かない様にと、後ついでにお父様の胃痛の原因を減らすためにも、何か余計なことをしでかさないように陰からわたくし目は見ていたのです」
「なるほど・・・・って、それ王女様自身がやる事なのか?」
「それもそうだな。王女様の立場上、何かあってもまずいし、信頼できるような護衛とかを監視に使用すればよかったのではないか?」
自らカグヤの監視をミルル王女はやっていたというが、万が一危ない目に遭う可能性もあるのに、なぜそうしたかについての疑問があった。
「他の方々にそりゃ頼んでみましたわ。けれども・・・・」
『シグマ家の子息の監視!?さすがに王女様からの命令でもどうかご勘弁を!!』
『下手すりゃシグマ家に目を付けられてしまいますってば!!』
『どうかご慈悲を!!あっしには妊娠中の妻が居まして!!』
『王女様の頼みでも、あのシグマ家に関わりたくないんですよぉぉぉぉ!!』
と、言った具合に逆に懇願されまくり、仕方がなく王女自らカグヤの事を隠れて監視していたのだとか。
「なぁリースよ、俺の実家・・・・シグマ家ってどれだけ恐れられているんだ?」
「今さらながら、僕がカグヤに対して喧嘩を売ったのは間違いだったかなと恐怖で震えるレベルかな。あの時は頭に血が上っていたし・・・・」
『カグヤ様にわかりやすく他の方々のシグマ家の評価を言いますと・・・・人食い箱ですかね。中身は物凄いモノばかり、けれどもうかつに手出しをすればあっという間に丸かじりのあの世逝きという感じですね』
「本当にシグマ家ってなんなの!?」と、カグヤは叫びたくなったのであった。
・・・お姫様ここに初登場。第5王女という事はその上もあるけど、まだ登場予定は未定です。
護衛とかが良そうなものだけど、継承権を考えると結構末席ですからね。