#26
早めに着いてからの
神からの連絡により、カグヤたちは夕方ごろに行われるらしい悪魔召喚とやらの場所に、アンナのナビゲートのもと来たのだが・・・・・
「屋上か・・・ここならあまり人も来ないよな」
『今はまだ真昼間ですし、夕方になるまで時間がありますね・・・・ですが、すでに準備が整えられてきているようです』
学校の屋上へ続く階段を上り、屋上に出たところでカグヤたちは素早く扉の裏に戻って隠れた。
なぜならば、すでに人の姿があり、何かしているように見えたためである。
「あれは・・・だれだ?」
屋上の床に、チョークのようなもので魔法陣のような不思議な模様を手元に持った本を見ながら書いている人を見て、カグヤはつぶやく。
見たところ、10歳の少年少女ではなく・・・・・思いっきり大人の人ですが。
やや禿げ気味で、、汗をかきながら必死な形相で行っている姿は何処か狂気じみたようにも思える。
『んー、あれってこの学校の教師ですね。魔法関係の授業の担当の先生の一人、ブーテンダーさんですかね』
・・・・正直言って、あまり人の事をよく覚えていないのだが、アンナがそう断言したという事はその人であっているのだろう。
授業担当の先生の名前とかって、今一つ覚えていないんだよな。
と、カグヤが思っているとブーテンダー先生と思わしき人物は、どうやら休憩に入ったようだった。
今は初夏に入り始めた季節だからか、真昼間からの日差しに照らされての作業は汗だくにもなろう。
そして、寂しくなっている頭の反射が眩しくも感じられる。
「魔法陣を書いて悪魔召喚・・・何をする気だあの人?」
『というか、何を書いているのかわかっているんでしょうかね?なんか目がうつろですよ』
よく見ると、確かにブーテンダー先生の様子がおかしい。
手元はしっかりと魔法陣の線を書いているのだが、その顔はうつろで、なんかこう・・・・操られているかのような気がする。
「何かの状態異常か?」
『精神系の魔法かもしれませんね。解いてみればいいかもしれません』
「解くってどうやってだよ」
・・・魔法にもいろいろあり、攻撃から生活用まで数多くある。
その中には精神に干渉する魔法があるのだが、悪用することは禁止されている。
なぜなら、精神に干渉する魔法を解くには難しい解除用の魔法を使用しなければいけなくて、ある程度越えた才能がないと解けないのだが・・・・そんなものをカグヤは知らない。
『ここで私の出番ですよ。精神系の魔法解除用の魔法を表示いたします』
と、アンナが本の姿のままページを開き、ある所で止めて、そのページに文字が浮き出た。
その魔法の文を見ながら、かける相手であるブーテンダー先生へ狙いを定める。
ある程度の才能というか、十分すぎるほどの魔法に関しての才能があるので条件はクリアしているのだ。
「解除用魔法・・・『精神解放』」
そっと魔法を唱えて、何やら光玉が出たかと思うと・・・・ものすごい勢いで狙った方へ飛んでいった。
「・・・・ん?ぷっぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」
「あ、なんか思っていたのと違くないか?」
一瞬気がついたようだが、時すでに遅くブーテンダー先生へ魔法が直撃し、なんかびりびり痺れているように見える。
あれー?こういう魔法ってもっと優しそうに見えるはずなのに、なんか電撃を食らわせたかのようなことになってないか?
そのまま一分ほどバリバリと電撃を浴びたかのような状態が続き、終わった時にはブーテンダー先生は・・・・・・真っ黒に焦げていた。
違う、これなんか違うよ。
「アンナ、これ本当に精神系の魔法を解除できる魔法か?」
『はい。雷に打たれたかのように目を覚まさせる奴ですからね。精神に干渉されていれば干渉されている分ながーくあんな感じにびりびり電撃がほとばしるんですよ』
「電撃って言っているよね!?」
それ解除呪文違う!!ただの電撃を流す呪文だ!!
とにもかくにも、悪魔召喚の魔法陣を描かせることを妨害できただろう。
ただ、この様子だと誰にそんなことを命令されたとか聞こうにも、あんな真っ黒焦げになっていると生きているのかちょっと不安になるな・・・あ、ピクッて動いた。
「だ・・・・誰だぁぁぁぁ!!ふざけて電撃のような呪文を浴びせたやつはぁぁぁ!!」
怒りの形相で、ブーテンダー先生が目を覚ました。
「どこにも見当たらんな・・・・くそう!!いったいどこのどいつがこのわしに電撃なんてものを食らわせるんだ!!」
物凄く激怒しているようだけど・・・・あれ?
「あんな電撃これまで喰らったことがない!!なんか快感だったしもう一回来いやあの電撃ぉぉぉぉぉぉ!!」
「なんかヤバイ扉が開いているーーーーーー!?」
『あ、この「精神解放」って副作用ありましたね。開いちゃいけないような精神の扉をついでに開くそうですよ』
「それを先に言え!!」
・・・・・いったい誰にそうされたのかを聞きたいところだったが、あのヤバイ扉を開いたっぽい人には関わりたくない。
その為、こっそりとその足元に転がっていた魔法陣を書くための見本があるらしい本を魔法で手繰り寄せ、その場をカグヤたちはトンズラこいて逃げるのであった。
また夕方に念のためにここに戻るつもりだが、今はあのドMへと化した教師からは逃げたい・・・・・
『精神解放』
・精神系の魔法に操られている人を解放するための魔法。
・強烈な電撃を浴びさせ、雷に打たれたかのように目覚めさせる荒療治的魔法でもある。
・確実に開放はできるのだが、副作用としてその人の隠された性癖の扉まで開く。
・・・・・本当は、別の魔法があったのだが、この時はただ操られている状態を解除するだけのを表示して、一番簡単そうなのをアンナが開示したが故の、あのドM人間誕生という悲劇が起きたのである。
今後のブーテンダー先生はどうなるか・・・・・・




