サイドストーリー:異世界転移クラスメート達 その3
このサイドストーリって全くの別の話としてまとめ上げたほうがいいかと検討中。
消して、再掲載し直して、まとめ直すほうが良さげかな。
魔王に拾われ、照代が魔王城に住み込みで働かせてもらうことになって2カ月ほど経とうとしていた。
この世界の文字とかも読んだり書けたりするように努力して早く覚え、そのおかげで書類仕事も任されるようになったので、魔王の傍らで一生懸命業務をこなしていたのである。
本当ならば勇者とかをどうにかしたいという思いもあったのだが・・・・魔王を今すぐにどうこうできるわけでもないようなので、ならばしばらくは拾ってくれた恩を返そうと思ったのだ。
そんな中でも、チート能力を持った勇者たちの話は時折報告され、色々厄介な面倒ごとを起こすような人や、急激な改革を推し進めて反感を買う人などがいるという事などは聞いていた。
まあ、せめてもの救いとしては、魔王を討伐しようと考える人たちに限ってよく失敗ばかりしてなかなか攻めてきていないことだろうか。
何をやっているんだと照代はツッコミを入れたくなった。
だが、今日聞いた話はいつものとは違った。
「・・・・・・え?」
「もう一回言って見るのさ」
「ですから照代様、魔王様、そのちぃとぅ能力を持っているという勇者たちがここ最近、数人づつほど破裂もしくはあたりを巻き込む自爆の様な爆発四散をしているらしいんですよ!!」
職務の休憩として、仲良くなった魔王とお茶をしていた照代は、魔王城で部下として働いてくれている魔族の報告に目を丸くした。
「あー・・・なるほど、そう言うことになるのか」
その報告を聞き、魔王は何か納得したかのような表情を浮かべた。
「え?どういうことですか!?」
一方照代としては、どういうことなのかよくわからない。
「つまりはだねぇ照代・・・・・お前さんはそのちぃとぅ能力とやらが器に収まっているから大丈夫だったのさ。だが、そいつら・・・・・能力が収まりきっていないやつらが、ふさわしくないやつらが爆発四散しているのさ」
・・・・この世界に転移した時、照代たちには元の世界では考えられないようなチート能力がそれぞれにいつの間にか与えられていた。
けれども、そのような能力が何も代償無しで手に入れられるものだろうか?
「神とかがいたとして与えたのならまだわかる。だけど、そのお前さんたちを転移させたものは・・・・恐らくその神のような存在を考えず、器に何も細工しないで膨大な力を与えるようにできていたんだろうねぇ」
人には器があり、その器の中に納まるだけの能力が与えられるというのがこの世界での力の考え方のようなものらしい。
その器は風船のようなものであり、ある程度までなら耐えきって伸びてその能力や力が入り込む。
だが、転移されてきた者たちにはその器以上の力や能力が与えられてきた。
照代は何の因果か、能力や力がきちんと収まるだけの器を兼ね備えていたので今も普通にこうやって生活できている。
だが、その他の元クラスメート達は違った。
彼らの器は小さくもあり、そして限界を超えるだけの能力を転移の際に与えられてしまった。
それでも、いきなりなにも変化がなかったのはまだこの世界に来たばかりであり、器が安定していない状態だったがゆえに、強大な力を得ても何も問題はなかったのだろう。
だが、今は状況が違う。
すでに2カ月近くたっており、その器も安定し、本来の状態へと戻った。
すると、不安定な時に取り込めていた能力や力はどうなるのだろうか?
「・・・・その結果は、空気を入れ過ぎて破裂する風船のようなことになってしまう。もしくは、ほんの少しの刺激で一気に爆発してしまう状態になるという事ですか」
「その通りだね。異常が起きたのは数日前程かららしいが、照代は安心して良い。お前さんは器が大きいようで、きちんと収まっているのさ」
けれども、器が小さい、もしくは部相応ではない力を得てしまった者たちは違う。
彼らの末路は・・・・・いましがた、報告で聞いたとおりになったのだ。
もしかしたら、照代のように大丈夫な人がいるだろう。
しかし・・・・
「残念ながら、その希望はありません。照代様を除く勇者として召喚されたほかの者たちもですが・・・・・・各地で天災のような爆発をして、各地に被害が出たようです。そして、その勇者たちを召喚した国は現在、各地にとんでもない爆弾を散らばらせた主犯として各国から非難が飛び交い、我々のところとの開戦はせず、人間同士の争いの泥沼化を辿っています」
報告してきた魔族は、重々しそうにそう言った。
・・・照代以外、全滅。そして召喚してきたメダールブタ王国は現在勇者が城内に数人ほどいたため、その者たちも爆発四散して王族は行方不明。
王城があった跡地は、ひどくえぐれた地形へと変化しており、もはや生存の見込みも絶望的だという。
「異世界の者たちを自分たちの都合のいいように扱おうとして、そのせいで自分たちが滅びたのは・・・ざまぁとでもいえばいいさ」
そう肩をすくめながら魔王は言うが、照代としてはひどい結末だと思えた。
自分はあの国から逃げ出すだけであり、こうして魔王と一緒に仕事はしているのだが、特に彼らに何もしていなかった。
だけど、このような悲劇は・・・もしかしたら未然に防げたのではないだろうか。
そう考えると、どこか照代は重い気持ちになった。
あのクラスメート達とは特に関わりを持たなかった。
けれども、命がある人だったのは間違いない。
人間爆弾みたいな悲惨な末路を辿るのは・・・・・・さすがに哀れだとも思えたのだ。
そして、なぜか自分だけが平気で、器が大きかったと言われてもどこか納得がいかない自分がいる。
「・・・これからどうしましょうかね」
思わずぽつりと照代はつぶやいた。
クラスメート達はいなくなり、自分たちを召喚した国は制裁というには大きな代償を受けた。
魔王の手伝いをしているのは拾ってくれた恩があるからだが・・・・・ずっとこのままの生活というのも考え物である。
元々、魔王のところにメダールブタ王国は攻める予定があり、他国も協力してその魔王が治めえ知多地域を狙うようなところもあった。
今さらその国々に向かう選択もしたくない。けれどもこの先本当にどうしようか照代は悩む。
また・・・・この世界に来てからずっと姿を見ていない、いや、一緒に来てすらもいないのかもしれない輝也の事も照代はあきらめきれていなかった。
好きだという自覚はあり、告白はできなかった。
そして、この世界に彼が来ていないのであればそのことは無理であり、自身に取ってやりたいことはない。
そんな照代の気持ちを、魔王は察した。
この先にある目標などもなく、今はただ単と居るだけの照代。
偶然見つけて魔王城に置いてはいるが・・・・彼女にとっての幸せはここにはないのかも知れないと魔王は思う。
「・・・・そうだね、照代はこの先何をしたいとか、表立った欲望はないのか?」
魔王は思い切って照代に質問する。
その質問に照代はしばし考えた後・・・・・表立ってやりたいことも、この先に何か目標もないと答える。
「しいて言えば・・・・好きだった人に告白したかったですかね。でも、同じ世界に来れていないようだし、このまま一生を過ごしてもその機会はないでしょう」
寂し気にやりたかったことを言葉に出す照代。
その照代の姿を見て、魔王はしばし考えこむかのようなそぶりを見せ・・・・
「・・・・ならば、いっそこの世界から出てみるのさ」
「・・・え?」
魔王は直ぐに説明した。
どのような方法で、そしてどのようなことになるのかという可能性を。
説明を聞き、照代はその方法を承諾する。
この世界に未練があるわけでもないし、その方法で確実に輝也に会えるわけでもない。
けれども、やれる可能性があるのなら・・・・・
「・・・・お願いいたします」
可能性を信じ、魔王のその提案を照代は受諾するのであった。
健気な恋の話のようだけど、実際にそれが実るかは・・・・・