#23
今回主人公出番なし
短め
SIDEバーステッド王国:王城
・・・・カグヤがリースと共に互いの魂魄獣でため息をついていたその頃、バーステッド王国の王城にある議会室にて、国王ダースヘッドは最近新たに購入した新型胃薬を飲んでいた。
「うぐぐぐ・・・相変わらずというか、シグマ家に関しての胃痛の種は尽きぬな・・・・」
「医師の見解によると、そろそろ胃に穴が本当に開くらしいかと」
「王たるゆえに悩むのだが、そのせいで余計にキリキリキリっとくる・・・」
最近では薄毛にも悩み始めたそうで、毛生え薬にも手を出す予定らしい。
「学内での決闘騒ぎにて、あのシグマ家の三男がやらかしたそうで、現在決闘場の修理がされているようです」
「あの決闘場はかなり強固だったのだが・・・・やはりシグマ家の力は計り知れぬな」
はぁ、と溜息を吐きつつ、報告をダースヘッド国王は聞いていく。
今回のこの議題は・・・・・シグマ家の三男であるカグヤについてである。
「本人曰く、加減し損ねた感じだと言っていたようですが・・・・・どこをどうしたら下限と言えるのかってレベルですね」
「シグマ家で言う加減の尺度は、常人で感じるものとしてわかりやすく例えるならば、万の軍隊相手に億の軍隊の力を出すところだとすれば、その同等の万の軍隊にしただけだという感じだ」
「わかりにくいような気もしますが・・・・・簡単に言えば常識を間違えているという事ですか」
「そういうことだな」
家臣ともども、その場にいた全員がそのシグマ家の常識はずれさに溜息を吐く。
・・・・・カグヤは極力加減しているつもりでも、シグマ家での常識を刷り込まれているようなものなので、常識がずれている状態へ知らず知らずのうちになっていたのである。
そのせいで、今回の決闘場氷結炎上事件が起きたともいえるのであった。
「相当な才能を持ちながら、ある意味無駄に使用しているようなものだともいえよう」
「シグマ家って本当に化け物じみている家系だからな・・・・・三男でもアレだからしみじみ思える」
「大昔にはドラゴンをゴキッと素手で倒した先祖がいるという伝説があるからな・・・・」
「あれ?クラーケンを一本釣りしていかめしにして食べたとかいうものでは?」
どちらにせよ、とんでもない一族だという共通認識はあった。
「しかし、ここで重要なのがその三男がとんでもないほどの力と才能を持っているという事実だ」
「貴族は基本的に当主を決め、残りを補佐に回すだろうが・・・・・それではいるとすれば長男次男であり、三男は自由になる」
「穀潰しのようなこともさせずに騎士団へ入団させたり、中には商会を作って発展させた奴もいるだろう」
けれども、問題なのはカグヤが並外れたというか、人を外れたかのような力を持っているという事だ。
シグマ家そのものは基本的に他国につくこともなく、バーステッド王国についている今でさえ戦争参加も極力行わない自由なというか、傍観する傾向がある。
だが、カグヤは三男であり、将来的にシグマ家を離れる可能性が高い。
そうなれば、その力を狙って各国が動く可能性もあるのだ。
「できれば何かしらの功績を取ってもらい、爵位を挙げて居ついてほしいが・・・・難しいな」
そんな功績が起きるような事件は起きてもいないし、起きてほしくもない。
「だとすれば、どこかの貴族家に婿養子のような形に出来ればいいが・・・・・そこはシグマ家が介入することがある」
シグマ家側としては、自分たちの子の一生の相手は、自身で見つけてほしいという暗黙の家訓があるようで、婚約とかを国が勝手に行うのを嫌う傾向にあるのだ。
そのせいで、過去に他国から無理やりあったときは・・・・・・その国は地図から消えたと言ってもいいだろう。
「はぁ・・・・シグマ家の三男の話をしていると本気で胃が痛くなってくるな・・・・おおぅ、穴が開いたような気がする」
「陛下、そろそろ休んでください」
・・・・・ちなみに、このようなシグマ家で悩む国王の姿を見ていることもあって、王座に就きたいと思う人がこの国ではほとんどいないという。
謀反とか反乱が起きる可能性が小さい分、国王の胃にかかる負担はかなりのものである。
・・・さて、こんな苦労が多い国王の座に就きたい人はいるでしょうか?
思いっきりとんでもない爆弾の様なシグマ家を抱え、胃痛がストレートに襲いかかってくる。
ある意味、この世界ではこの国の国王が一番不憫であろう。




